ついに最終局! コンピュータ将棋が人間を超えるまで

文芸・カルチャー

2013/4/20

 ニコニコ動画で生放送が行われ、大きな注目を集めている「第2回将棋電王戦」だが、いよいよ20日に最後の第5局が行われる。

 電王戦とは、人間とコンピュータによる将棋対決。しかも今回は、第22回世界コンピュータ将棋選手権の上位5チームと現役のプロ棋士5人が団体戦を行うという前代未聞のドリームマッチ。3勝した方が勝者となるが、これまでの成績は、コンピュータ側が2勝1敗1引き分けで王手をかけている状態だ。

 この結果を見ると、「コンピュータってやっぱり強いんだな」という印象を持つ人も多いだろう。しかし、コンピュータ将棋が今日に至るまでには、さまざまな苦労と紆余曲折があった。その事情をよく知ることができるのが、『人間に勝つコンピュータ将棋の作り方』(瀧澤武信、松原 仁ほか/技術評論社)だ。

 この本には、第5局に登場する「GPS将棋」のプログラマをはじめ、コンピュータ将棋の開発者や仕掛け人たちが数多く登場。これまでの歴史や開発の苦労などが語られているのだ。

 本書によれば、コンピュータ将棋は、1974年から開発がスタート。江戸末期に活躍したという伝説の棋士・天野宗歩と、当時活躍していた中原誠名人などの棋士が対局を行ったら? というシミュレーションを行い、棋譜をつくってほしいというNECからの依頼がきっかけとなったそうだ。だが、出来上がったプログラムの実力は“まったくの初心者レベル”。研究に携わった筆者自らが「あえて評価するならばアマチュア20級といったところだろうか」といい、「中原永世十段などが解説にみえたが、解説しようもなく困っていらした」と綴っている。

 コンピュータが強くなっていくのは、2000年を過ぎてから。03年には「アマ5段に近い実力」と認められるようになり、全国のアマチュア大会にも参戦。そこで好成績をおさめるようになり、第18回アマチュア竜王戦の全国大会からは、世界コンピュータ将棋選手権で優勝したソフトウェアが特別枠として招待されるようになった。

 山が動いたのは2010年のことだった。情報処理学会が日本将棋連盟の米長邦雄会長に「挑戦状」を叩きつけたのだ。その文面は「コンピュータ将棋を作り始めてから苦節三十五年 修行に継ぐ修行 研鑽に継ぐ研鑽を行い 漸くにして名人に伍する力あり」と“強気な文章”で、これに対する米長からの返事も「いい度胸をしているとその不遜な態度に感服仕った次第」と、“まるで格闘技のような趣”だった。こうした経緯で行われたのが、女流棋士の第一人者であり、女流四大タイトルすべてで永世称号を持つ清水市代女流王将と、コンピュータ将棋「あから2010」の対局だ。ここで、「あから2010」が86手で勝利。コンピュータが“公開の場でプロに平手(ハンディなし)で初めて勝った”瞬間だった。

 コンピュータの快進撃は続く。2012年に行われた「第1回将棋電王戦」では、永世棋聖である米長とコンピュータ将棋「ボンクラーズ」が対決。見事、ボンクラーズが勝利をおさめた。そして、今回の電王戦の第2局、初めてコンピュータが現役プロ棋士に勝ち、第3局も白星。長く険しい道を歩んできたコンピュータ将棋だったが、ついにここまでやってきたのだ。

 本書の最後は、こう締めくくられている。

 「コンピュータ対人間というと、イメージとして“冷酷な科学者が作った血も涙もない機械が人間をいじめている”と思っている人が多く、実際そのようなイメージの報道が多い。だが本当は、“はやぶさ”のように熱く楽しく一生懸命に開発している」

 「コンピュータが勝ったらぜひ“偉大な、人間の勝利”だと思っていただきたい」

 ──20日の最終局は、コンピュータ将棋にとって歴史の1ページとなることは必至。その熱戦を見守りたい。