聖痕、邪眼、セフィロトの樹……中二病の大好物を徹底解明!

マンガ

更新日:2013/4/23

  「もしも教室にテロリストが入ってきたら…」「自分には生まれつき特殊な能力が備わっているのでは…」「じつは両親にはある秘密があり自分に気づかれないようにしているのでは…」などなど。日々たくましい妄想を脳内で繰り広げている中二病患者たち。そんな彼らの妄想を手助けしてくれる本が出版された。それが『中二病超(スーパー)図鑑 ~ファンタジー・軍事・オカルト・化学・神話~』(レッカ社/カンゼン)だ。

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  この本では、中二病患者が好きそうな設定を、図解も交えて真面目に解説してくれている。これだけではわかりにくいと思うので、例をだしてみよう。

  たとえば「悪魔」の項では「(前略)キリスト教における悪魔は、神に背いた堕天使や悪霊を指している。その多くは古代宗教の神々で、キリスト教はこれらを否定しながらも悪魔として取り入れた(後略)」といった感じのちゃんとした解説とともに、悪魔の代表格である「サタン」に関する説明や、その次に有名といわれるソロモン王に使役された悪魔たち「ソロモン72柱」の一覧・解説が用意されており、それだけでなく、悪魔の階級やその悪魔たちに対抗する聖人を網羅した図表もあり、なんともありがたく感じるほどの充実っぷりだ。ちなみに、悪魔の最上級に位置する「ルシファー」に対抗する聖人としては、あの「洗礼者ヨハネ」が挙げられている。豆知識本としても活用できそうですらある。

  今回は、この本から、中二病の患者の胸をくすぐるような設定をいくつか挙げていこうと思う。

  まずは、中二病といえば「邪眼」。右目か左目か、もうどちらでもいいが、邪眼の継承者(という設定)ともなると、その眼がうずいたりするらしく、手で押さえたり、眼帯で隠したりするようになるみたいだ。この邪眼、本書によると古来より人類は、眼には特別な力が宿っていると考えていたらしく、イーヴィル・アイ(邪眼)も、そうした思想から誕生した民間伝承のひとつらしい。紀元前2000年頃に記され『Fate/stay night』などで知られるようになった『ギルガメシュ叙事詩』にも、イーヴィル・アイの記述があるんだとか。そう、結構、歴史が古い設定なのだ。ちなみに、イーヴィル・アイ伝承としては「メドゥーサ」や「バジリスク」が有名だが、じつはキリスト教の天使にもイーヴィル・アイの持ち主。その名前は「サリエル」といい、見たものを動けなくしたり死をもたらすことができるという。天使と邪眼の組み合わせなんてもう、中二病からすれば歓喜してしまう設定だろう。

 「セフィロトの樹」なんてものも載っている。これは『新世紀エヴァンゲリオン』で広まったと思われるもので、10個の球体と、それらを繋ぐ22のパス(通り道)からなるその図は、アニメとともに多くの若者を魅了した。これを見ただけで自分の黒歴史を思い出す人も少なくないのでは。本によれば、セフィロトの樹とは「生命の樹」ともいわれ、古代ユダヤ教における神秘主義思想「カバラ」で使用される図ということらしく、その図は宇宙を支配する法則、神の世界や人間の世界の構造を象徴するもので、カバラにおける奥義ともいえるものらしい。「カバラ」やら「奥義」やら、中二病が涙しそうな設定である。図自体は、中二病じゃなくても、思わず「おおっ」と言ってしまいそうになるほどとても神秘的なものなので、一度ご覧になってみてはいかがだろうか。ただ、感動のあまり待ち受けや壁紙などにしちゃうと、見る人が見れば「同志よ!!」と抱きつかれてしまうので注意しておこう。

  映画『セブン』やマンガ『鋼の錬金術師』(荒川 弘/スクウェア・エニックス)、最近では『七つの大罪 The Seven Deadly Sins』でも知られる「7つの大罪」も解説されている。あまりにも有名な設定だが、一応説明しておくと、7つの大罪とはキリスト教において人々に罪を犯させるとみなされた行動や感情、欲望などのことで「7つの罪源」とも呼ばれるんだとか。その内容は「傲慢」「嫉妬」「憤怒」「怠惰」「強欲」「暴食」「色欲」で、これらを英語名にすると、なんだかかっこよく見えてくるのだから、罪深い設定である。でもろくにその内容も知らずに英語名の響きだけで「俺の罪はグラトニー」とか言っちゃうことのないように、中二病の方は注意していただきたい。ちなみにグラトニーは「暴食」にあたるので、英語圏の人の前でそんなこと言えば「このBoyは、とても食いしん坊らしい! HAHAHAHAHA!」と笑われること必至である。確実に黒歴史になることは間違いない。

  ほかにも「聖痕」や「シオン賢者の議定書」「三種の神器」「聖剣・魔剣」「百八星」などの設定が満載のこの1冊。中二病患者は必読ともいうべき本だが、そうでなくともぜひ手にとって読んでみてほしい。中身はいたってまじめな解説が書かれているので、いろんな知識が増えることは確実だ。しかし、読む際は、読後に中二病をこじらせないように注意しておこう。