電子書籍アワード2013:優秀アプリ賞『火山人間』制作者インタビュー

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更新日:2013/5/8

 電子書籍アワード2013の優秀アプリ賞に輝いた『火山人間』はフランスのActialuna社が制作した電子書籍アプリだ。同社で日本語版の制作に携わった石井亮輔氏に、この作品の魅力について、日本とフランスの電子書籍の市場についてお話をうかがった。

 

こだわったのは1タッチだけで深い物語を味わえること

石井亮輔(Actialuna)

石井亮輔(Actialuna)

いしい・りょうすけ●商社でファッションブランドの輸入業務に携わった後、フランスの電子書籍制作会社Actialuna社に参加。アプリ版電子書籍『火山人間』等に携わる。現在、同社で事業開発を担当。大の本好き

――電子書籍アワード2013優秀アプリ賞受賞おめでとうございます。

ありがとうございます。このアプリは、フランスの出版社フラマリオン社とのデジタル発電子書籍プロジェクトの第一弾作品で、受賞できて光栄です。

――このアプリでこだわったところはどこですか?

電子書籍はいろんなところをタッチしないと読めなかったりするものが多かったのですが、私たちは、一つのタッチだけで誰もが物語を進めることができ、かつ多くの人に満足してもらえるような演出にこだわりました。

――途中、エロティックなシーンもありましたが、物語の必然性はあったのですか(笑)

それは作者の好みというか(笑)、ある種のこだわりです。

作者のマシアス・マルジュは作家であると同時に、ときにクレイジーな楽曲を作るバンドのヴォーカルでもあるんです。そういったアーティスト性が出たのでしょうか。

物語全体の雰囲気も男性と女性では受け取り方が違うようで、ラストにしても、男性は「続きがありそうなバッドエンド」と思う方がいる一方で、女性は「ハッピーエンド」ととらえる方が多いようです。作品としての味わい深さが出せたのかなあと思います。

 

本好きたちが創る、新しい本のカタチ

――このアプリをつくったActialuna社はどんな会社ですか?

今年で創業3年目の電子書籍制作のベンチャーで、従業員7名の会社です。創業メンバーは出版社の出身で、社長は大の日本好き、マンガ好きです。

――石井さん自身はどんな経緯でActialuna社に参加されたんですか?

私はもともと伊藤忠商事でファッションブランドの輸入を6年半やっていて仕事柄フランスによく行っていました。

ここで仕事をしたいなと考えていたところ、2年前に知人の紹介で創業1年目のActialuna社のメンバーに会い、意気投合したのがきっかけです。

――商社から電子書籍ベンチャーに移るとは大胆ですね?

そうですね。当時のActialuna社はビジネスのにおいがさっぱりしない会社でした(笑)。

ただ、私はもともと本の虫なので、本に携われる仕事ができたらうれしいと思っていました。これから大きな変化を迎える市場に関わりたい、最前線の可能性を感じたいという思いが強かったですね。

――同社で石井さんがやっている仕事は何ですか?

創業メンバーはもともとアーティスト的な人たちで、彼らが創る商品やプロジェクトは独創的なのですが、それがビジネス的に妥当か精査し、うまくいくためには何が必要かを考え、作っていく、事業開発が主な仕事です。

 

フランスの出版市場は日本とよく似ている

――フランスでは電子書籍は普及しているのですか?

フランスの出版市場は日本と似ています。本の再販制度もあり、アメリカと違って生活圏に書店がたくさんあります。

また、物へのこだわり、紙へのノスタルジーもあります。オランド大統領自ら「書店文化を守る」ということを公言するぐらい、国を挙げて紙の出版を守るムードがあります。

そんなところなので、まだまだ電子書籍は普及しておらず、街中でようやくkoboをみかけるようになったぐらいです。ビジネス規模としては寒い状況ですね(笑)

一方で、フランスの出版界には日本のような頭打ち感はないです。おそらく、出生率も増えており、(実際はどうかは別として)市場が拡大する可能性もあるのが大きいのではないでしょうか。

その中で、日本のマンガはフランスでも大人気で、フランス語に翻訳される外国語の本のトップは日本語の本です。

――火山人間の売れ行きはどうですか?

火山人間は世界4カ国語(フランス語、スペイン語、英語、日本語)で出していますが、フランスに次いでダウンロードが多いのが日本です。私が日本人ということもあり、日本のレビューサイト等で取り上げてもらえたのもありますが、コンテンツとして日本で面白さが理解されるというのが大きいと思います。

反対に最大のマーケットのアメリカでは全くダウンロードされません(笑)。作品内容がアメリカの人には合わないらしく、現地のPRエージェントいわく「(PRは)ようやらんわ。アメリカでは無理や(笑)」とのことです。kindleが普及しており、単品アプリで本を読むのが少ないことも一因ではないでしょうか

――最後に今後の抱負をお聞かせください

フランスでもまだまだ黎明期の電子書籍市場ですが、これからは日本のマンガなど人気のコンテンツも扱って拡大させていきたいですね

火山人間 iPhoneアプリ

『火山人間』

Flammarion & Actialuna

火山の火口に転落し死んだ弟が、小さな幽霊となって少女の前に舞い戻り、ふたりは再会を果たす。ふたりは果たして幸せな生活を送れるのか…。おどろおどろしくも美しいイラストと幻想的な音楽で紡ぐファンタジー。「NUIT DU LIVRE – Paris 2012」電子書籍部門大賞受賞。iPhone、iPadアプリ。(レビューはこちら