「週刊誌連載は命を縮める」!? 水木しげるの処世術とは 

マンガ

更新日:2013/5/7

 あらゆる世代から人気を得るマンガ家・水木しげる。その魅力はマンガだけではなく、人間性に惹かれるファンも多い。人間・水木しげるは、どのようにして形成されたのか。ガキ大将の時代、苦汁をなめた戦争時代、貧困に喘いだ復員後の生活、そしてマンガ家としての原点となった紙芝居作家の仕事。『ダ・ヴィンチ』6月号では、卒寿を過ぎた水木が、自身の戦争体験をはじめその半生を振り返っている。

「小学生のころから、絵物語みたいなものを描いて、友達に見せていたから、そういう能力はあったわけです。絵が好きだったし、ストーリーも自然にできたんです」

 紙芝居は連続ものが基本で、観客である子供たちには、常に物語の続きを期待させるテクニックが必要になる。つまらなければ子供に見向きもされず、紙芝居演者は駄菓子が売れずに困る。結果、紙芝居の貸し元には金が入らず、作家の支払いも滞る。そうならないよう、奇抜で面白いストーリー、子供の心を繋ぎ止める展開など、水木は熟考を重ねた。こうした紙芝居作家の経験は、後の創作活動で大いに役立つことになる。

 テレビの普及で紙芝居が壊滅し、すぐに貸本マンガ家になれたのも、紙芝居の経験があってこそだった。そして、貸本作家で磨いた実力は、昭和40年、講談社の『週刊少年マガジン』での週刊誌デビューと、児童漫画賞の受賞へと繋がっていく。さらに『墓場の鬼太郎』(後に『ゲゲゲの鬼太郎』と改題)や『河童の三平』『悪魔くん』といった作品でたちまち人気作家となり、現在まで多忙な日々を送ることになるのだ。

「週刊誌は大変ですよ。やっぱり週刊誌をやっていると、命が縮まるんじゃないですか。手塚さんにしても石ノ森さんにしても、週刊誌を一生懸命やっていたから早死にしたんじゃないですかね。石ノ森さんは、どこかであうと必ずこうやって(2本指を立てる仕草)、見せるんです。何のことかというと、2日間徹夜したというのが自慢なわけですよ。
眠りを軽蔑したり虐めたりするのはいかんです。私は子供のころから眠るのが好きだったから。だからよかったんです」

 今でも半日ほど寝ることがあり、起きてこない日は家族が心配するほどだそうだが、以前から公言する睡眠第一主義の他に、自身の人生で大切だと思われるものを聞いてみた。

「寝ることは一番ですよ。あとは……お菓子かなあ? お菓子は大事です。お菓子に好き嫌いはないですよ。餅菓子とかはいいですね。それにお金があれば最高ね(笑)」

 

 人生に大切なのはお菓子――美味しいものを食べることに生き甲斐を感じての発言らしい。

 最後に6月から刊行スタートとなる『水木しげる漫画大全集』について話をうかがってみたのだが、なぜか笑ってごまかされてしまった。後で水木プロスタッフから聞いた話では“デビューした出版社で全集を出して貰えるのが一番嬉しいといっていましたよ”とのことだった。笑い飛ばしたのは、きっと照れ隠しなのだろう。

 現在も連載や新作のマンガを次々と準備しているそうなので、今後は『水木しげる漫画大全集』とともに、新旧の水木ワールドが楽しめることになりそうだ。

取材・文=村上健司
(『ダ・ヴィンチ』6月号「水木しげる特集」より)