浅田真央は「つまらない」!? アスリートの名言に学ぶ“言葉力”

マンガ・アニメ

2013/5/9

 先日、ソチ五輪が行われる来季をもって引退の意向を表明した、フィギュアスケートの浅田真央。ソチ五輪では「スケート人生最高の演技をしたい」と語り、来季が現役最後のシーズンかと報道陣から問われ、「いまはそのつもりです」と答えたことが引退報道の発端となった。

 この真央ちゃんの引退宣言に噛みついたのが、テリー伊藤。司会を務める朝の情報番組『スッキリ!!』(日本テレビ)で引退の話題に触れ、「浅田さんは言ってることが当たり前すぎてつまんないんですよ」とバッサリ。まだ22歳と若いにもかかわらず引退を決めたことに無念さがあったのだろうか、その後も「着てる衣装にしろ表情にしろ、幼いじゃないですか。国際人の22歳はもっと大人なんですよ。彼女は守られてるから、あの表情、あのファッションなんですよ」と、早すぎる引退に納得できない様子だった。

 たとえば、アルベールビル五輪で銀メダルに終わった伊藤みどりは、「金メダルじゃなくてごめんなさい」という言葉を残し、その後、いまの真央ちゃんと同じ22歳で引退を決意。世界中から惜しむ声が挙がったが、「ごめんなさい」という言葉に隠された苦悩の前には、きっと誰もが「今後も幸せな人生を送ってほしい」と心でエールを贈ったはずだ。それだけ説得力がある言葉だったと言ってもいい。ある意味、どんなときもハキハキと“優等生”的に受け答えをする真央ちゃんの折り目正しさに対して、テリーは“つまんない”と指摘したのではないだろうか。

 世界を極めようとする人間だけがもつ“言葉の力”──多くの人は、これに感動し、励みにするもの。『日本人アスリート名語録』(桑原晃弥/PHP研究所)は、これまでにスポーツ選手が口にした“究極の言葉”が詰まった1冊だが、たとえば前出の伊藤みどりなら、「私は勝利者にもなりたかったけれど、それにもまして先駆者になりたかった」という言葉がチョイスされている。女子ではじめてトリプルアクセルを成功させた彼女の、覚悟の深さが伝わってくる名言だ。

 一方、努力した者にしかつぶやけない言葉がある。「一〇段の階段があったとしますね。でも、その一段にも、また小さな階段が一〇段ある」。これは今年40歳を迎える読売ジャイアンツの小笠原道大の言葉だ。「まずはできることからやっていく」という地道な努力を積み重ねていくこと。その大切さを教えられるようだ。

 苦難に立ち向かう勇気をくれるのが、「挫折というバネを使うんだ」という、サッカーの中村俊輔の言葉だろう。これは2002年の日韓W杯の代表から外された際のコメント。不遇な境遇さえ力にするという強い意志が感じられる、潔い言葉だ。

 「得意技を出すまでは死ねるか。そう思うと肩が上がるんだ」。そう話したのは、2009年に46歳でこの世を去ったプロレスラーの三沢光晴。三沢の美学、そしてレスラー魂が詰まった、いまも心に残る珠玉のひとことだ。

 じつは、本書には真央ちゃんの言葉も収録されている。「メダルよりもトリプルアクセルを優先したい」という、2011~12年シーズン中の言葉だ。最愛の母の死も重なったつらい時期にも、大きな志をもって挑んでいたことがよくわかる名言である。

 優等生じゃなくていい。苦悩や努力を口にしてもいい、そして集大成となるような喜びの言葉を聞きたい。ソチ五輪まで高いハードルはまだまだあるが、真央ちゃんにしか語れない言葉を、聞ける日が来ることを楽しみに待ちたい。