「なでしこ」に続け! 人気急上昇中の女子野球の世界とは?

スポーツ

2013/5/9

 突然だが「マドンナジャパン」をご存知だろうか? いやいや、サッカーの「なでしこジャパン」の間違いではない。マドンナジャパンは、女子野球の日本代表チームの愛称のことだ。

 実は現在、日本の女子野球界は全世界最強を誇っている。2012年8月には世界の代表が集まって争われるワールドカップで3連覇を果たした。男子野球の「侍ジャパン」が、3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で3連覇を成し遂げることができなかったことを思い起こせば、それがいかに大変であるか想像できるだろう。

 とはいえ、女子野球の世界って実際どんな感じなの? と思う人も多いだろう。簡単に説明すると、試合は9イニングではなく7イニング制。バットは金属バットの使用が認められている。それだけ聞くと、ともすれば中学生レベルの野球を連想してしまうかもしれないが、そんなことはない。その技量はかなりのものがあり、トップクラスの選手が見せる華麗なプレーに驚かされることもあるはずだ。もちろん、男子のプロのような“超人”的な迫力はさすがにないが、男子の学生野球や、女子ソフトボールとはまたちょっと違った雰囲気や魅力を感じるものがある。

 現在の女子野球は、高校、大学、社会人などによるアマチュアからスタートした。1990年代後半から、硬式野球として本格化してきたた女子のアマチュア野球は、その後ジワジワと競技人口を増やしていく。

 その流れに歩調を合わせるかのように、2004年にカナダで初めて開催されたのが女子野球ワールドカップである。大会はその後、2006年に台湾、2008年に日本(愛媛・松山)、2010年にベネズエラ、そして2012年に再びカナダと2年おきに行われている。主な参加国は上記開催国のほかに、アメリカ、オランダ、オーストラリアなど。日本は第1回大会から参加し、2年連続準優勝(優勝はアメリカ)のあと、地元日本開催で念願の初優勝を果たした。このときは、ある程度報道等により話題になっている。

 日本代表はその後、ベネズエラでの第4回大会で連覇を果たし、2012年のカナダ大会で、3連覇のプレッシャーがかかる中、見事にその偉業を達成したというわけだ。

 そして、その間、2010年に誕生したのが日本初の女子プロ野球である。創設当初は、そのあまりにも突然だった登場に、アマの主力選手たちの多くが先行きの見通しに懐疑的となり、プロのトライアウトを受験しなかったという。そのため、当時の実力は、アマの方が上だったと言われている。

 たが、授業や仕事に追われがちなアマに対して、練習量が豊富なプロの方も数年のうちに急速に力をつけ、プロ・アマ混成チームで臨んだのが先の2012年カナダ大会だった。

 そのあたりについて詳しく書かれているのが、『マドンナジャパン 光のつかみ方――世界最強野球女子』(長谷川晶一/亜紀書房)だ。女子野球の世界を長年にわたって地道に取材し続けてきた長谷川は、過去にも『ワールド・ベースボール・ガール―やりたいことを見つけた、少女たちのベースボール』(主婦の友社)、『真っ直ぐ、前を――第二回女子野球ワールドカップ 日本代表の十日間』(河出書房新社)を刊行しており、3連覇のかかったカナダの大会でもマドンナジャパンに密着。大会におけるエースと言っていい磯崎由加里投手をはじめとする主力選手や、元西武などで投手として活躍した新谷博監督の証言など、本書にはその場に居合わせているが故に得られた生々しいエピソードが綴られている。

 その中には、何年も前に取材した際の選手のコメントやエピソードなども数多く入っており、瞬間的な取材だけでは絶対に得ることのできない女子野球選手たちの奥底の心境や伏線までも克明に知ることができるだろう。ときには、男子顔負けのアスリートたる屈強な一面を見せることあれば、女子ならではの心情が垣間見られることもある女子野球選手達の言動は実に新鮮に映る。これを読むだけで、マドンナジャパンについては、多くを網羅することができるはずだ。

 女子野球選手といえば、これまでも萩本欽一が設立したアマチュアチーム・茨城ゴールデンゴールズの片岡安祐美(現監督兼選手)や、「ナックル姫」こと吉田えりなど、男子に混じってプレーする選手の名前ばかりが話題になっていた(片岡安祐美はその後女子日本代表チームに参入し、最終選考で外れたもののそれまで副キャプテンを務めたことがある)。

 しかし、女子プロの方も年々規模が拡大しており、創設当初は2チームからスタートした体制は、今では4チームに拡大された。川端慎吾(ヤクルト)の妹・川端友紀をはじめ、実績と華やかさを兼ね備えたスター選手も出現しつつある。

 きっかけひとつで、近い将来、「なでしこジャパン」のようにブレークする可能性もあるだけに、先取りしてチェックしておくのも面白い。
 今のうちに情報収集しておけば、初期のファンとして胸を張ることができるかもしれない。

文=キビタキビオ