特集番外編2 2008年5月号

特集番外編2

公開日:2008/4/10

「マンガ大賞2008」特集番外編2 ぜんぶ選外な私

ダ・ヴィンチ編集部 関口靖彦

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マンガ大賞を見事受賞した『岳』、本当にすばらしい作品ですので是非読んでみていただきたいです。しかしその一方、票が集まらずノミネートに至らなかった作品にも、隠れた秀作が多いことは本誌「1票だけ!だからこそ面白い偏愛マンガ」コーナーでもご紹介したとおり。

実は私も、選考委員のひとり。しかし投票した5作のうち、1作もノミネートに入らなかったのです。「こんなに面白いのに!」と地団太ふみました。そして冷静になってから考えるに、他の人の推薦作にも、ノミネートには及ばなかった傑作が数多く埋もれているにちがいない、と気づいたのです。それで先に触れたコーナーを特集内に設けた次第。

とはいえ本誌に自分の投票作を入れるのは公私混同と思い自粛しました。代わりにここでご紹介し、わずかばかりの日の目を見せてあげたいと思います。「カギカッコ」内は、投票時に私が付したコメントです。

1『盆堀さん』いましろたかし エンターブレインBEAMコミックス

盆堀さん他、平凡な中年たちの何でもない日常を描き、彼らのちょっとしたボヤキの中に真実のようなものを垣間見せる短編マンガ集。

「今年もっとも繰り返し読んだマンガです。人生。」

2『臨死!! 江古田ちゃん』瀧波ユカリ 講談社アフタヌーンKC

江古田で独り暮らしの江古田ちゃん(自室では全裸)を描く4コマ。江古田ちゃんはハケン、ヌードモデル、パブのダンサーなど細かい仕事をこなしつつ、好きな男には彼女がいて、でも2番手としてキープされている。

「強さと脆さをあわせ持つ江古田ちゃんのモノローグに、心ゆさぶられる。笑いながら泣いてしまう。人はひとり。」

3『仮面ライダーをつくった男たち』村枝賢一 講談社KCDX

プロデューサーや殺陣師など、仮面ライダーを世に出した裏方さんたちを熱く描く、仮面ライダー版“プロジェクトX”。

「ものを作る、夢を追う。大切なことを、照れずに正面から言う。まさに特撮魂。まさに男泣き。」

4『不成仏霊童女』花輪和一 ぶんか社

舞台は平安期らしき日本。成仏しそこなった童女の霊が世間を見て回り、さまざまな不思議に出遭う。

「世が世なら、経典になっている本。創作ではなく悟り。読むと被救済の涙が流れます。」

5『ヒストリエ』岩明均 講談社アフタヌーンKC

舞台は紀元前4世紀のギリシャ・ペルシア、アレクサンドロス大王の書記官エウメネスの、波乱の人生を幼少期から描く歴史スペクタクル。

「自分が生き残るというのは、誰かが死ぬということ。ふだん見ないようにしている真実を、目の前にゴロンところがして見せるマンガ。」

以上5作品です。ちなみに『仮面ライダー〜』と『不成仏霊〜』は私の1票しか入らなかった作品。でもほんとに面白いですから、読んでみてください。


「マンガ大賞2008」特集番外編2

編集S.K

今年新設された「マンガ大賞2008」。大賞は山とそれをとりまく愛すべき人々を描いた『岳』(小学館)に決定しました。大賞を受賞された石塚真一先生は、まさに“三歩”! にこにこ笑いながら私たちの質問に答えてくださるそのお姿に、私とライターさんは虜になったのでした。ライターさんとふたりで「三歩だったね!」「はい、三歩でした!」と意味のない会話を延々と続けながら編集部に戻ったのもよき思い出です。そんな石塚先生のインタビューは本誌掲載中です。ぜひご覧ください。

3月28日に行われた授賞式は、選考委員であり、実行委員でもあるニッポン放送の吉田アナウンサー司会進行のもと、ニッポン放送イマジンスタジオで行われました。オープニング映像、ノミネート作品紹介映像、石塚先生に贈られた楯、もちろん司会進行にもプロの仕事が垣間見られましたが、なんとそれらすべてボランティア! 大賞の集計等もすべて手弁当と本当にマンガを愛する人々による手作りの賞なんだなぁと改めて実感しました。そんな熱い情熱に支えられたマンガ大賞、これからも注目していきたいです。