版権無視!? 80年代のガチャガチャの無法地帯ぶりがスゴい!

社会

更新日:2013/5/13

 今も昔も、子どもを魅了し続けるものといえば、そう「ガチャガチャ」だ。お金を入れてレバーを回すまで、何が出てくるかわからないというのは、幼年期に初めて体験するギャンブルといっていいだろう。最近では、クオリティの高い景品が入っていることが多いので、子どもだけでなく、大人にもハマる人が増えているという。

 そんなガチャガチャ、じつは日本で最初にはじめたのは「コスモス」という会社。1977年設立と同時にガチャガチャを始め、80年代一大ブームを巻き起こし、そして1988年には姿を消した。その「コスモス」の歴史とともに、「コスモス」ガチャガチャの中に入っている景品を紹介した本が発売された。それが『愛しのインチキ・ガチャガチャ大全─コスモスのすべて―』(池田浩明:著、ワッキー貝山:編/双葉社)だ。

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 本書によれば、この「コスモス」のガチャガチャは、「当たり」の入ったカプセルと、いわゆる「はずれ」の入ったカプセルが混ぜられていたという。「当たり」のものを引けば、駄菓子屋などのおばちゃんに豪華な景品と交換してもらうことができた。一方「はずれ」には、一目で「はずれ」とわかるような景品が入れられていたのだという。そのさまざまな種類の「はずれ」景品が、この本には載せられているのだが、これが“著作権無視、パクリ、粗雑”と、今のガチャガチャからは考えられないようなトンでもアイテムのオンパレードなのである。

 たとえば当時の子どもたちの間で大ブームを巻き起こしたといわれている「キン肉マン消しゴム」通称「キン消し」も、「コスモス」の手にかかれば、あっという間に「キン肉マン風消しゴム」になる。ちなみにその正式な商品名は「ジャンボ人形」とのこと。キン肉マンやアシュラマンなど、正規のキャラクターはほぼそのまんまなので、著作権はともかく子ども的にはまあ許せるレベルではあるのだが、中には某世界中で人気のネズミの頭を乗せただけの「ネズミマン」という「それもう完全にアウトだろ!」みたいなものもあり、これだけで「コスモス」のインチキっぷりがわかるというものだろう。「ネズミマン」の見た目なんてもう、あの人気ネズミの体が半裸のムキムキマッスルボディというトラウマ確定のもの。「昔って寛大な時代だったんだなー」と思わずうなずいてしまうことは間違いない。

 また、『機動戦士ガンダム』を模した景品もある。その名も「超合金ダンガム」。超合金とは銘打っているものの、型に鉛をぶち込みましたという感がありありとわかるクオリティで、あの有名なガンダムのパクリ商品「ガンガル」より酷いといっていいのかもしれない。ではその見た目を説明しよう。ガンダムは、膝などの細かい部分のパーツは本物とは違うエッセンスが加えられているので、まあ、そっくりさん的な雰囲気を漂わせているものの、ジオングやズゴックなどはそのまんまの姿形で、独自のエッセンスを加える努力すら放棄しているようだ。でもどことなく漂うそのパチもん具合のおかげで、一目見た瞬間に「あ、偽物だこれ」とわかる出来映えになっている。ここらへんは、さすが「コスモス」といったところか。また、ロゴも酷い。なんせ、ガンダムのロゴとフォントもデザインも酷似しているのだ。というより、あのガンダムのロゴの「G」の部分を「D」に変え、その「D」の曲線の部分にカタカナで「ダンガム」と入っていると説明したほうがわかりやすいのかもしれない。これがまた、「D」の曲線の部分に文字を挿入することで「D」を「G」のように見せるという、とんでもない高度なパクリ技術が使われているのも特筆すべきところだろう。

 ロッテが発売し、一大ブームを巻き起こした「ビックリマンシール」も、「コスモス」の毒牙にかかったもののひとつ。なんと今回は、商品名までそのまんま「ビックリマン」だった。しかし、メーカー名が違っていた。その名もステキ「ロッチ」。「ロッテ」ではなく「ロッチ」である。なんという姑息な改名だろうか。もうここまでいくと、「お見事!」と歓声をあげたくなってしまう。しかも、「スーパーゼウス」や「シャーマンカーン」に混じって、「サタンザデビル」や「ゴッドガイ」といった「コスモス」オリジナルキャラクターを入れてくる始末。あなたが昔集めたコレクションも、裏側のメーカー名をよく確認しておいたほうがいい。もしかしたら、それは「ロッチ」のビックリマンシールなのかもしれない。

 だが、「コスモス」の究極ともいえる景品は、なんとも弁護しようがないほどに、ぶっとんでいる。どんなものかといえば……ガチャガチャのカプセルの中に、またカプセルを入れるというもの。もはや暴挙である。「はずれ」か「当たり」か、ワクワクしてカプセルを開けてみれば、そこにはまたカプセルが……開けた者を「夢でも見ているんじゃないか」と思わせ、現実だとわからせた上でその心をどん底に突き落とす、悪魔のような景品(もはやそういっていいのかもわからないが)だ。

 いかがだったろうか。これらの景品と比べれば、今のガチャガチャがどんなにすばらしいものかわかっていただけると思う。子どもにガチャガチャをやらせ、もし「はずれ」をひいたとして泣きだしたのなら、こう言い聞かせよう。「昔はね、カプセルの中にカプセルが入っているガチャガチャもあったんだよ」と。まあ、さらに泣きだす可能性もなきにしもあらずだが。