性別の入れ替えに、妖精的な存在…、今も変わらず魅力的な漫画のセオリーとは?

マンガ

更新日:2013/5/13

 昨今、マンガ業界は、BLや萌え系など様々な分野が注目を浴び、ますます盛り上がりをみせている。

 だが、名作『ドラゴンボール』(鳥山明/集英社)の劇場版が17年ぶりに復活し、ネット上で話題になっていることもあり、往年の漫画もまだまだ人気が高い。孫悟空たちが今度はどんな強敵に挑むのかが気になるところ。彼らは修行をするたびに着実に強くなっていくのだから、今度もきっと負けはしない。そういえば、同じく高い人気を誇る『ONE PIECE』(尾田栄一郎/集英社)のルフィや、『NARUTO―ナルト―』(岸本斉史/集英社)のナルトも強敵が現れるたびに、どんどん強くなっていく。大ヒットとなる漫画には、昔から変わらない何かお決まりのパターンがある様子。

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 コラムニスト・ブルボン小林氏によると、ほかにも読者にドキドキ感を与えるいくつかの決まったパターンがあるようだ。
 同氏の著書『マンガホニャララ ロワイヤル』(文藝春秋)では、旧作から新作まで取り上げて、ツイッターが漫画に与えている影響や、主人公たちが最近東京の具体的な場所(立川や赤羽など)に住み始めた現象など、するどく熱い漫画評を語られる。このなかで、人気漫画によく見られるパターンを挙げ、その傾向を探っている。

 そのひとつが“性別の入れ替え”。例えば、手塚治虫の『リボンの騎士』のように性別を偽る漫画があれば、『らんま1/2』(高橋留美子/小学館)のように完全に性別が入れ替わる主人公も。

 最近の漫画でいうと、13世紀のモンゴルと西夏国(タングート)という珍しい舞台設定で繰り広げられる活劇を描く『シュトヘル』(伊藤悠/小学館)もそう。主人公の少年と彼を守る女戦士シュトヘルは、現代に転生すると主人公は女子高生に、女戦士は男子高校生になってしまう。

 確かに、彼らの性別が入れ替わったときの変わらぬ美貌ぶり(彼らはたいてい美男・美女だ)や、性別が変わったときのギャップ、彼らを取り巻く恋愛模様は、読者に現実では起こりえないドキドキの展開を期待させるものだ。

 また、『うる星やつら』(高橋留美子/小学館)のラムちゃんに代表される浮遊する恋人や、『神風怪盗ジャンヌ』(種村有菜/集英社)などに見られる妖精的存在のマスコットも、漫画の定番となっているという。いつも側に漂って24時間自分だけを見ていてくれる存在ほど、望んでやまないものはないだろう。

 さて、そんな過去から現在に渡る漫画の国民的キャラクターたちを勝手に占って人物評価しているのが、『ゲッターズ飯田のいろんなマンガを勝手に占ってみました。』(ゲッターズ飯田/蒼竜社)。

 例えば、冒頭で触れた『ドラゴンボール』の孫悟空は、「オレンジ色の道着」・「目と眉がくっついている」・「怒ると強くなる」という要素から「飲み足りないと超サイヤ人になる」と診断されている。気分が顔に出やすいので、周囲に助けられる運気のいい人とのこと。また、『ONE PIECE』のルフィは、「一重の大きな目」などの特徴から「宝探しの目的をとっくに忘れている」との診断結果に。目的を見失いがちだけど、仲間に助けられるという。つまり、仲間に恵まれた主人公たちという点で一致。こうした主人公の特徴も、読者に支持されやすい大きな魅力のひとつと言えそう。

 人に慕われやすい魅力的なキャラクターが、ファンを獲得しやすいのは間違いようだ。さらに、現実では絶対ありえない願望を叶えてくれるストーリーが、今も昔も変わらず読者の心をがっしりつかむ魅力のひとつなのかも。

文=佐藤来未(Office Ti+)