特集番外編1 2010年5月号

特集番外編1

更新日:2013/8/9

まだ未読の人はコレを機会にぜひ! 浅野いにお大特集

編集M.I.

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今月の『ダ・ヴィンチ』の第一特集は、マンガ家の浅野いにおさん。いま、『ソラニン』という作品が映画化され、話題になっているかたです。

ごく普通、等身大の、青年期・少年期の男女を主人公に、その日々を掬い上げる作品を書いている浅野いにおさん。これまでのコミックスには、『素晴らしい世界』『ひかりのまち』『虹ヶ原ホログラフ』『ソラニン』『おやすみプンプン』『世界の終わりと夜明け前』などがあります。

 

今回の特集「永遠の浅野いにお」には、これまでのキャラ総出演の特別描き下ろしイラストを寄せてくださいました! 題して、「「ASANO INIO’s Wonder Chronicle」。意外にも、これまでのキャラクターを振り返るような作品は初めてとのこと。必見です!

特集のほかの企画は、精神科医・名越康文さんによる全作品分析、街角突撃取材「リアル種田と芽衣子(※『ソラニン』の主役カップルです)を探せ!」、浅野いにおロングインタビュー、浅野さんお気に入りの本&CD紹介、つながりのある著名人からの質問&メッセージなどです。(質問&メッセージ企画でご協力くださった、宮﨑あおいさん、高良健吾さん、サンボマスターの近藤洋一さん、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文さん、杉崎美香さん、柴崎友香さん、大東俊介さん、豊島ミホさん、銀杏BOYZの峯田和伸さん、ありがとうございました!)ぜひお楽しみください。

 

取材にお伺いして感じたのは、浅野さんはほんとうに、「真面目」にマンガを描き続けてきたということ。以前、他の雑誌で、「僕はマンガの話しかできない」と題したロングインタビューがあったのですが、17歳でギャクマンガ家としてデビューし、21歳のときにストーリーマンガ家へ、そして現在まで、コアなファンの心をつかみながら、まっすぐに作品を紡いでこられました。そんな浅野さんは、第一線をつっぱしりながらも進化し続けてきています。いまの連載作品の、『おやすみプンプン』(連載再開!)ではシュールとリアリズムの融合でマンガの新たな地平を開き、『うみべの女の子』では果てしなく真面目に繊細な世界を描く。そこにあるのは「本気」です。「リアルな作風」と言われていますが、浅野さんは、リアルな世界を描くことの、さらなる向こう側を見つめようと、ずっと真面目に考え続けていらっしゃる気がします。ロングインタビューでは、創作の裏側にある思いをじっくり語っていただきましたので、ぜひお楽しみください。

 

特集にはいつも「リード」という、「こんな特集です」という導入文をつけているのですが、今回初めに作ったのがとても長く(400字オーバー……。だいたい普段は200字くらいです)、泣く泣く削って記事にしたので、そのもともとのものを最後に掲げさせていただきます。

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『ソラニン』映画化記念特集

終わらない世界で、僕はここにいる

特集「永遠の浅野いにお

17歳でデビュー、初単行本作『素晴らしい世界』以来、マンガ読みから絶大な支持を受ける浅野いにお。現代を生きる青年たちの漠然とした不安と喪失、希望を描き反響をよんだ『ソラニン』がこのたび実写映画化された。

研ぎ澄まされたリリカルな言葉と圧倒的な風景描写、リズミカルな画法を武器に、「僕/私」と「世界」との関係性を描いてきた浅野いにおは、「世界の終わり」をモチーフに出しながらも、「世界は終わらない」こと、辛くても、「それでも、生きる」ことを描く。『おやすみプンプン』『うみべの女の子』と進化・深化しつつも、変わらずに「僕」を見つめる浅野いにお。その永遠性が、私たちをひきつけるのかもしれない。

マンガの新たな地平を開き、「リアル」な世界を描きながらそのさらなる向こう側を見つめようと本気でもがきつづける、いま最も気になるマンガ家・浅野いにおとは何者なのか? そのいまとこれからを探る。

特集の始まりは、浅野いにおのこれまでのキャラ総出演の特別描き下ろし「ASANO INIO’s Wonder Chronicle」から――。

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大変お忙しいなか、取材&描き下ろしとご協力くださった浅野いにおさん、そのほかお世話になったみなさま、本当にありがとうございました!

 

 


 

 

リアル“ソラニン世代”の生の声にも注目

編集H

 

 

浅野いにお作品のなかでも人気の高い『ソラニン』は、10代から20代にかけての若者の揺れる気持ちがリアルに描かれた作品です。そこで、作中で種田と芽衣子が直面するような事態に遭遇したとき、あなたならどうする?ということで、リアル“ソラニン世代”の人たちに街頭突撃取材を行いました。

 

突撃取材のメンバーのうち、編集Iはリアルソラニン世代ですが、私編集Hと、ライターAさん、カメラマンSさんは全員アラサー女性。そんな私たちは、街頭取材に協力してくれる若者たちが、突然声をかける怪しい大人たちに対して、丁寧に一生懸命に答えてくれたことにまず感心。「みんな素直でええ子やね〜。もう最近、私たち立ち止まりもしないよね(苦笑)」と我が身を反省しました。

 

『ソラニン』はどこまでリアルか?を探るべくおこなった街頭&読者アンケート、ふだんなかなか聞くことのできない今の20代のリアルな気持ちに迫れたのは非常に楽しかったです。調査結果もなかなか興味深いものに……。ぜひ本誌で確認してみてください!

 

浅野さんがすごいのは、あの時期独特の空気感を、その空気ごとしっかりつかまえてひとつの作品に仕上げていることです。

インタビューのときに浅野さんも、あの時期でなければきっと書けなかったと思うし、書いてよかった。大切な作品だ、とおっしゃっていましたが、過ぎてみると、色んなことにぶつかって、いちいち揺れて、いつも一生懸命だけど青臭く、だけどふわふわとしていたあの頃は、すごくいい時代だったよなあと私も思います。

 

いま、ソラニン世代真っ只中の方も、その時期を過ぎてしまった方も、浅野いにお作品を読めばみんなきっと色んな形でそこに“自分”を発見できると思います。特集を通してそんな浅野作品の魅力をぜひ皆さんに感じていただければと思います。