博多弁の人魚が暴走? 『波打際のむろみさん』は15分アニメと相性抜群

マンガ

更新日:2013/5/16

 現在、『週刊少年マガジン』(講談社)で連載中のコメディマンガ『波打ち際のむろみさん』(名島啓二/講談社)が、4月からアニメ放送されている(東京MXやMBSほか)。

 ヒロインの「むろみ」さんは、波止場で釣りをしていた高校生・向島拓朗のしかけに見事に引っかかって食いついてきた人魚だ。可愛らしい出で立ちで、明るく元気な娘風だが、言葉はなぜか博多弁。伝説の生き物だけに恐竜が地球上を支配していた時代から生きているらしいが、喜怒哀楽は子どものように激しく、最初に出会ったときから拓朗に激しく迫っては拒絶されたり、ツッコミを入れられたりしている。

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 そんなむろみさんの周りには、個性豊かな仲間が萌えキャラとしてにぎやかに登場。友達の人魚たちや、様々な海の生き物たちをはじめ、旧約聖書に登場する海の怪物・リヴァイアサン、ヒマラヤにいると言われている未確認生物のイエティ、ギリシア神話に登場する半人半鳥のハルピュイア、果ては竜宮城の乙姫などなど…。伝説の生物までもが、言い伝えの姿とはまったくかけ離れたゆるーい姿で現れ、拍子を抜かす。

 ストーリーは、そんな愛すべきキャラクターたちと、むろみ、拓朗を絡めたテンポの良いボケとツッコミの連打によって生まれるドタバタギャグに終始。破天荒な設定ながら、そこは“海もの”。大自然の摂理にはきちんと則っていて、鳥や猫、アザラシなどは、どんなにゆるキャラであってもむろみさんを見れば本能的に「魚=捕食対象」として襲いかかる。どんなに抵抗しようとも毎回ズタボロにされ、「食物連鎖の呪縛からは逃れられんとよ」などと嘆く始末。

 また、実在するしないにかかわらず、珍しい生き物が登場するたびに詳細な名前やその生態についてのユーモラスに解説が入り、大変ためになる(?)といった一面もある。

 とはいえ、むろみさんのすっ飛んだ行動ぶりはコメディマンガならでは。人魚だけに下半身は魚だが、それを小器用に折り曲げる形で地上でも普通に立って話しているし、スケボーを使ってコンビニに行っちゃったりもする。

 でも、種としてはあくまで「魚」。定期的に産卵しては拓朗に受精をせがんでは、毎回逃走されるなど拒否られたり…。もう、なんだかわからん! と言いたいところだが、そうした「ギャップボケ」に対して、読者の思惑にシンクロさせるように登場人物からすかさず突っ込みが入るテンポの良さが、このマンガの大きな魅力のひとつだ。

 ところで、この『波打ち際のむろみさん』のアニメ版は、放送時間が15分となっている。ここ2~3年の間に『しばいぬ子さん』(うず/竹書房)、『ちとせげっちゅ!!』(真島悦也/竹書房)、『あいうら』(茶麻/角川書店)のような1話5分のショートアニメが人気となりつつある傾向だが、この作品が15分であるのもその流れと無関係ではないだろう。

 ショートアニメは、30分ものと比較すると極端に短いように思われるが、その原作は4コママンガである場合が多く、5分あれば2~3本分を1話にまとめることができる。しかも、シンプルながら1本ごとに“起承転結”が成立しているため、5分と思えないほどボリュームを感じることがあるほどだ。

 逆に、4コママンガを原作とする30分もののアニメは、『らき☆すた』や『けいおん!』のような“まったりした雰囲気”を売りとする作品によって大きなブームになったものの、その後、類似する作品が登場しすぎて飽和状態に。そのうえ、作品によっては間延び感が否めず、30分が長く感じられるようなものも出てきていた。

 『波打ち際のむろみさん』の場合、原作は4コママンガではないが、週刊連載マンガとしては通常よりはるかに少ない1本6ページのショートマンガとなっている。とはいえ、基本構成は5分アニメとほとんど同じで、原作2~3本分を1話にまとめており、4コマよりは1本あたりの話が長いために15分になった形だ。その意味では、ショートマンガとの相性の良さを生かした15分アニメは、5分アニメに追随して今後増えていくのかもしれない。

 連載ページの少ないマンガ作品の良作を見つけたら要チェック! その後、アニメ化→ブレークとなるかもしれない。

文=キビタキビオ