ついに全集が刊行に! マンガも人柄も人生も、すべてが面白い水木しげるの魅力

マンガ・アニメ

2013/5/17

 水木しげるは面白い。どこがどう面白いのか、とても一言では語れない魅力がある。

 まず、水木しげるが手がけたマンガが面白い。

 緻密なペン画で表現される背景に反して、キャラクターは単純な線で描かれ、一コマ見れば水木しげると分かる独特の画風。加えて、一度その世界に踏みこむと、些細なことなどまったく気にならなくなるストーリー展開は、水木マンガの醍醐味ともいえる。『ゲゲゲの鬼太郎』『河童の三平』『悪魔くん』といった代表作以外にも、手がけた作品は傑作揃い。風刺、SF、時代物にギャグマンガとジャンルは多岐にわたり、とくに風刺物を読んでファンになる人は少なくない。

 それから、水木しげるの来歴が面白い。

 幼少時から興味があること以外はいつもマイペース。学校にはいつも遅刻、進学しようも落第続きで、就職すればすぐにクビ。戦争中は激戦地で左腕を失い、九死に一生を得て本土に帰還。画家を夢見ていた青年は、いつの間にやら紙芝居作家となり、貸本作家を経て少年マンガの世界にデビュー。一躍人気作家となり、それから何十年にもわたって活躍。近年は数々の賞を獲得し、文化功労者にも選ばれた。その落第王のサクセスストーリーに、心躍らない者はいない。

 結局のところ、水木しげる本人が面白い。

 式典の会場では、お世辞抜きで言いたいことだけズバズバ言う。インタビューの最中でも、つまらないと感じればフラリと席を外して散歩。大胆不敵な奇人なのかと思いきや、意外とシャイで、恥ずかしがり屋。しかも、「能ある鷹は爪を隠す」の諺通り、抜群の先見性を持つ優れた経営者でもあり、数々の奇行は計算された演出の可能性もあるのだ。

 そんな水木作品の決定版ともいえる『水木しげる漫画大全集』の刊行が、御年91歳を迎えた今年、スタートする。監修はなんと小説家の京極夏彦。マンガ界の大巨人の人生を総決算する全集ともいえる大事業だ。

 『ダ・ヴィンチ』6月号では全集の刊行を記念し、水木しげるの作品とその人柄の魅力を総力特集。水木しげるのロングインタビューはもちろん、京極夏彦インタビュー、ゲゲゲの女房こと布枝夫人と娘・悦子さんが語る水木しげるの素顔のほか、多くの著名人が登場。『ゲゲゲの女房』にて水木しげる本人を演じた向井理をはじめ、中川翔子、森山未來、佐野史郎、持田香織、坂本慎太郎(元ゆらゆら帝国)、アニメ声優を務めた高山みなみや池澤春菜らなどが、自身のとっておき水木作品をセレクトしつつ熱烈ラブコールを送っている。

 水木ワールドの“面白さ”を全方向から楽しめる特集となっている。

取材・文=村上健司