妖怪はこう探せ! 現代の何気ない風景に潜む“怪”

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/23

 日本人の妖怪愛は限りなく深い。歴史を見れば、古代から連綿として、絵に物語にと妖怪を愛し続けてきた。

 日本中から愛される妖怪マンガ『ゲゲゲの鬼太郎』を生み出した水木しげるを特集した『ダ・ヴィンチ』6月号では、そんな妖怪ダイスキDNAを呼び覚ましてくれる文庫本を紹介。また、現代でも妖怪を足で探し続けるフィールドワーカー・宮本幸枝さんが寄稿している。

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――最強の妖狐といわれる「九尾の狐」が、追い詰められ絶命するときに変化した“巨大な毒の石”が、那須湯本にある殺生石だといわれています。現在の殺生石はかなり細かく粉砕されており、どれが九尾の狐だった(といわれる)石なのかまったくわからないという状況ですが、その周辺だけぽっかりとまさに毒気に当てられたように荒れていて、まるで魔界に足を踏み入れたような気分になれます。

 殺生石は、その謂れやスケールも立派な、古くから知られた有名妖怪観光地ですが、その他さまざまな妖怪スポットは必ずしも殺生石のように「それなりに見ごたえがある」ものだけではありません。

 妖怪スポットを訪れるときに心がけたいのは「期待しすぎない」ことです。心霊スポットとは違い、妖怪関係の場所で実際にお化けに遭うことはまずありません。

 また、交通の便がよくなかったり、ひっそりと目立たないようなところにあることが多いため、のんびりとした気構えが必要です。住宅街の中をぐるぐると迷い、住民らしき人を見つけて聞いても「さあ?」という返答のことがままあります。そして、いざたどり着いたところには、ちんまりとした石の脇に手書きの看板という、写真撮影時間も含めて十数秒で見学を終えられるようなモノしかないということも大いにありえます。

 しかしそこでがっかりしてはいけません。実は、妖怪探訪の醍醐味はそういうところにあると私は思っています。妖怪スポット巡りの楽しさは、日常の中に溶けこみながらも、どこか違和感と、ほんのりと郷愁のある「妖怪的非日常」を見つけること。言われなければ気づかないような何気ない風景の中にも、今でも妖怪たちはひっそりと息づいているのです。――

 自分でも妖怪を探してみたい! と思った方にライター門賀美央子さんがおすすめするのは下記5冊。

■『妖怪文化入門』 小松和彦 角川ソフィア文庫 740円
■『文庫版 妖怪の理 妖怪の檻』 京極夏彦 角川文庫 860円
■『妖怪の民俗学』 宮田 登 ちくま学芸文庫 1050円
■『妖怪文藝 巻之参 魑魅魍魎列島』 東 雅夫/編 小学館文庫 670円
■『鳥山石燕 画図百鬼夜行全画集』 鳥山石燕 角川ソフィア文庫 700円

 同誌ではほかにも東西比較のご当地妖怪ガイドなども紹介している。

(『ダ・ヴィンチ』6月号「文庫ダ・ヴィンチ」より)