「禁煙」を提唱したナチス 意外な「アレ」も発明していた!?

社会

2013/5/29

 5月31日は「世界禁煙デー」だ。「タバコを吸わないことが一般的な社会習慣となるような様々な対策を講ずるべきである」という世界保健機関(WHO)の決議によって1988年から始まった世界禁煙デーは毎年スローガンを掲げていて、今年は「タバコの宣伝、販売促進活動、スポンサー活動を禁止」(原文は「Ban tobacco advertising, promotion and sponsorship」)だそうだ。しかし日本の厚生労働省が「たばこによる健康影響を正しく理解しよう」とスローガンを意訳したことで、禁煙団体から「広告規制を所管する財務省やタバコ会社への配慮では」と批判が出た。ちなみにその厚生労働省では、5月31日から6月6日までを「禁煙週間」と定めているそうなので、禁煙を考えている人はいいきっかけになるかもしれない。

 喫煙者は文字通り“煙たい存在”となっているが、タバコの副流煙が肺ガンの原因となることを突き止めたのは、第二次世界大戦前のドイツ医学界だそうだ。それを受けて「タバコは野蛮な習慣」として公共の場で喫煙することを禁じたのは、あのナチス・ドイツなのだ。

 『ナチスの発明』(武田知弘/彩図社)によると、ナチスは国民の健康に非常に気を配った政権で、ガン対策まで行っていたという。ナチスが政権を握った当時、ドイツはガン研究で世界の最先端にあった。それはドイツが化学工業国だったことに起因する。化学工場が増えるにつれてガン患者が増えていたことから研究が始まり、1928年にはタバコの副流煙が肺がん発生の要因になると指摘していたという。1933年に政権を握ったナチスは、ガン発生に関係する危険な食品や薬品を禁止する法律を作り、低脂肪食を推進して、生活習慣の改善運動などをしていたそうだ。そして、タバコや葉巻、パイプを蹴って締め出す絵が描かれたパンフレットやポスターなどを作り、国民に対して繰り返しタバコの害を宣伝したという。

 このほか本書ではナチスが作り出した「世界初」が数多く掲載されている。いくつかあげてみると、一般向けの定時テレビ放送、女性アナウンサー、ミサイル、オリンピックの聖火リレー、PAシステム、8時間労働、労働者の長期休暇、アスベスト対策、合成着色料の禁止などなど、現在では一般的なことや制度がたくさんある。もちろん掲載されていることがすべてナチスの発明というわけではなく、単に「実用化」したことも含まれているので少々眉唾なところはあるが、ナチスが高い技術力を持っていたことに疑いの余地はない。

 第一次世界大戦で敗北したドイツは、ヴェルサイユ条約によって海外の領土や植民地はすべて没収、現在の価値で60兆円という賠償金を課せられ、二度と戦争ができないよう軍備が徹底的に縮小された。その結果インフレが起こって、ドイツ国内は荒廃していった。そんな中「ヴェルサイユ条約の破棄」と「再軍備」を打ち出し、国民の圧倒的な支持を得て政権を握ったのがナチスで、600万人もいた失業者を政権奪取からわずか3、4年でほぼゼロにし、ドイツ経済を復興させたのだ。しかし1939年、ポーランドへの侵攻が端緒となり、世界中を巻き込む第二次世界大戦を引き起こす。その後の惨事は、皆さんよくご存知の通りだ。

 自国民を大切にする一方、同調しない他民族や諸外国へ牙を剥き続けたナチスだが、その矛盾というのは世界のあらゆる国民や民族が潜在的に持っているものではないか、と著者は記している。政権が経済を立て直し、国民を大事にするからといって盲信してはいけないというのは、まだまだ不況にあえぐ日本への強烈なメッセージになるのではないだろうか。

文=成田全(ナリタタモツ)