鬱展開どころじゃない! 悲劇的すぎる『春の包帯少女』の衝撃

マンガ

更新日:2013/6/5

 「残酷で、儚くて、心が痛くて、ドキドキする」や「初巻から悲劇すぎ」「ジャケ買いしたが、こんな衝撃的な話だとは思わなかった」など、ネットを中心に話題沸騰中のマンガが5月11日に発売された。それが、『春の包帯少女』(佐藤ミト/ほるぷ出版)だ。

 いったい、どんなところが悲劇的で衝撃的かというと……。

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 男子校生のハルと女子高生のナツは、同じ高校に通う恋人同士。誰もが羨む青春を謳歌していたふたり。一緒に登下校し、教室内では友人にその仲をからかわれ、放課後は仲良くふたりでアイスを食べる……きっと明日も、明後日も、変わらない日常が続くものだと信じていた。しかし、そんな幸せな日常は、ある日突然終わりを告げる。それは、ハルの「発火能力」の発現。能力をひた隠しにし、変わってしまった日常を、変わらぬ日常のように過ごすハル。しかし、そんな努力をあざ笑うかのように、運命は、より過酷な展開をハルに突きつける。

 ハルとナツの町で頻発する放火事件。ある日、学校に来たハルは、自分の机に「お前が放火の犯人だ」と書かれてしまう。動揺し、教室を飛び出すハル。そのあとを追いかけるナツは、体育倉庫で彼を見つけるが、タイミング悪く、ハル自身でも制御できない発火能力が出てきてしまう。ナツに「逃げろ」と告げ倒れこんでしまうハル。燃える右手から火がうつり、体育倉庫はみるみるうちに燃え上がっていく。そして、とうとうナツに倒れ込むように、燃えた資材が降ってくる。

 目を覚ましたハルが見たのは、ところどころが焼け焦げ、虫の息の恋人の姿だった。

 そう、自身の力が原因となり、彼女に傷をつけるどころか、燃やしてしまうといった衝撃的かつ悲劇的な展開が巻き起こるのである。

 最悪な結果を引き起こしてしまったことを悔やみ続けるハル。そんな彼を救ったのは、彼が傷つけたはずのナツだった。雨の公園で、最愛の人を傷つけたことを悔いるハルの前に、痛々しい包帯姿のナツが現れたのだ。「ごめん…俺のせいで…!!」と叫ぶハルに、彼女はいう「大丈夫だよ それでも… 私は… 好きよハル いつまでも…」と。感涙必至。ナツの、ハルに対する絶大な愛が見られる、涙なしでは読めないようなシーンだが、そこはかとなく「怖さ」が漂うところはなぜだろうか。『春の包帯少女』が、ラブコメから悲劇、そしてサスペンスへと変わる瞬間といってもいいこのシーン。彼女はなにを思ってそんな言葉を言ったのだろうかと、考えだせばだすほど、「愛」よりも「怖さ」が際立ってしまいそうになる。これはまさに作者の手の上で、軽快に踊らされているといってもいいだろう。

 さて、そんな衝撃的かつ悲劇的な展開が怒濤のように連続するこの作品、どれだけの衝撃を読者に与えるつもりなのかと、作者に問いただしたい。そりゃあもう、しつこく問いただしたいところ。しかも、平凡な日常のシーンが、ものすごくほのぼのとしているため、なおさら衝撃度が際立っている。

 ハルとナツ、ふたりの関係はどうなってしまうのか、変わってしまった人生に、幸せな結末は待っているのだろうか。これほどまでに、その後の展開が気になるマンガは、そうはないだろう。

 悲劇的すぎると話題になっているのも頷ける『春の包帯少女』。気になった方は、ぜひ一読してみることをオススメする。きっと、その展開から目を離せなくなるはずだ。

文=オンダ ヒロ