夫の浮気相手は男!? 不倫BLという不思議な世界

BL

2013/6/13

 “不倫”ときくと、やはりあまりいいイメージは持たれないが、悪いとは思っても止められないのが恋愛。BLの世界でも既婚者で奥さんがいるのに、他の男の人と関係を持ってしまう人も少なくないのだ。なかには、5月25日に発売された『心に愛は満ちてるか?』のように奥さんから疑われて何でも屋に「男と浮気している夫を調べてほしい」なんて依頼が入ってしまったりする場合もある。しかし、基本的にはドロドロしていないのもBLにおける不倫ものの特徴。そこで、BLの不倫ものといえばどんなものがあるのか紹介してみよう。

 たとえば、『いやらしの彼~レオパード白書(6)~』(扇ゆずは/新書館)のホストである鉄狼とメグのように、どちらかが一方的に好きで結婚するものもある。鉄狼はずっとメグのことが好きだったが、海外で働くメグは仕事上パーティーに連れていくパートナーが必要だったので彼と結婚。さらに、こんなふうに鉄狼の気持ちを利用した挙句、自分はローマにいる間に恋人を作り、3年ぶりに日本に帰国する際も恋人が鉄狼に会いたくないから「空港にも迎えに来るな」と突っぱねるのだ。こんな鉄狼の姿を身近で見ていたら、ずっと彼に片思いしていて偶然再会した燐世でなくても、奪い去ってしまいたくなる。BLで夫の方が奥さんを大好きな場合、より身近にいて愛してくれる男性にさらわれてしまうことが多い。もともとゲイというわけではなくても、寂しさを消してくれる存在には弱いのかもしれない。

 また、『off you go』(一穂ミチ:著、青石ももこ:イラスト/幻冬舎)のように自分の妹の旦那と結ばれてしまうカップルも。もともと病弱だった妹の十和子と同室だった密が病院で仲良くなり、妹のお見舞いに行くうちに兄で密と同い年でもある良時も次第に仲良くなった。そして、大人になっても良時や十和子とつながっていたくて十和子にプロポーズした密と、同じように密とつながり、かつ「嫁にも行けないほど弱く産んでしまった」という母の罪悪感を消すために密と結婚した十和子。しかし、十和子は密が本当は誰を好きなのかも知っていたので、母が死んだらもう幸せな妻である必要もないと別れを切り出す。単なる利害関係だけでなく、本当にお互いがお互いのことを大好きだけど、夫婦や恋愛の好きとは少し違った2人。こんなふうに、好きな人とつながっているために結婚したり、姉や妹が自分の気持ちに気づいていて協力してくれるパターンも多いのだ。

 そして、『饒舌な視線』(和泉 桂:著、相葉キョウコ:イラスト/幻冬舎)にはさらに複雑な夫婦が登場する。なんと、妻である晴美と夫の瑛が同じ相手と不倫しているのだ。その相手は社長の小笠原で、秘書で恋人だった晴美が誰のものにもならない彼との関係を清算しようとすると瑛との結婚を持ち掛けられる。一方、瑛の方は中学生の時に塾の講師だった小笠原と出会い、高校時代に関係を持ったあと社会人になって再会。普通なら、好きな人を共有しておいて仲良くひとつ屋根の下でなんて暮らせないはず。しかし、瑛は本当に人を好きになったこともないし他人がどう思おうと気にしないタイプだったので、流されるまま相手の言うことを聞いてしまうし、それがわかっているから晴美も瑛に嫉妬することはなかった。瑛のように、罪悪感も抱かず不倫できるのはやはり本当に好きな人に出会えていないからなのかも。

 こうやって見てみると、やはりBLには仮面夫婦が多いようだ。いくらBLがフィクションとはいえ、女性読者ならどうしても奥さんの方に感情移入してしまうもの。そうなると、純粋にBLカップルの話を楽しめなくなってしまう。だからこそ、BLに登場する奥さんたちは読者に嫌われるほど身勝手で嫌なヤツか、お互いの利害関係が一致していて割り切った関係の人たちでなければならないのだろう。これらの本を読んで、BLでしか味わえない不倫ものの魅力を堪能してみては?

文=小里樹