童貞を貫くのと、童貞を捨てるのどっちが難しい?

マンガ

更新日:2013/6/18

 「童貞を捨てるのは大変だ」という話はよく聞く。たしかに、いざ捨てようと思っても風俗や出会い系以外で相手を見つけて童貞を捨てるのはなかなか難しいのかもしれない。でも、逆にずっと童貞を守り抜かなければならないとなったらどうだろう。

 5月11日に2巻が発売された『俺が童貞を捨てたら死ぬ件について』(若林裕介、もりた毬太/ほるぷ出版)の主人公・一条和也は、15年後に再会した親友で童貞の山田正己に首を絞められて殺されてしまう。和也はその記憶を抱えたまま15年前の世界にいて、もう一度高校生として過ごすのだが、自分が殺された理由は正己より先に童貞を捨てたからだと思い込み、今度こそ殺されないように童貞を守り抜くと誓うのだ。そこで、童貞を捨てるために努力する『抱かれたい道場』(中川ホメオパシー/秋田書店)や『30歳の保健体育 恋のステップアップ編』(三宅大志/一迅社)と童貞を貫く『俺が童貞を捨てたら死ぬ件について』から、どっちが本当に大変なのか分析してみよう。

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 まず、『抱かれたい道場』の主人公は、25歳で童貞のノボル。彼は、5歳のころからずっと思いを寄せている川村美月とヤれるなら「来世で便器になったってかまわない!」と言い切るほど必死。そんな彼は、“抱かれたい男”になるために抱かれたい道場の師範である舵原先生のもとへ弟子入りする。そこで、「子宮に優しい殺し文句」を体得したり、どんなに離れた場所からでも息を吹きかけるだけで相手を感じさせることができる「遠隔愛撫(リモートペッテング)」をマスターしようとしたりする。さらに、女の子はサプライズプレゼントに弱いということで、自分にリボンをかけてプレゼントするという方法を教えてもらったりもするのだ。エロ本以外の知識がないので何が正しいのかも見抜けないし、なんにでもすがりたい気分なので言われるがままに従ってしまう。

 また、『30歳の保健体育 恋のステップアップ編』の主人公・山田のように、運良く彼女ができたとしてもまだまだ道のりは遠い。「きたる日のためにコンドームを買ったしローションも買った!! 大人の玩具の最新情報も毎日チェック!!」といったことだけは完璧なのに、いざ彼女を目の前にすると手すら繋げない。嫌われたらどうしようと不安になってなかなか手が出せないし、水着姿を見たり、キスする姿を妄想するだけでフリーズしてしまう。せっかく勇気を出して観覧車に乗っても対面に座ってしまい、みすみすキスのチャンスを逃してしまうのだ。出会って付き合ったらすぐエッチできるというわけでもないので、童貞を捨てるのも簡単じゃない。

 一方、童貞を貫かなければ32歳で殺されてしまう『俺が童貞を捨てたら死ぬ件について』の和也は、かつての自分が関係を持った相手に迫られてもすべてかわさなければならないのだ。自分のことをかわいがってくれた先輩の彼女で、憧れの存在でもあり自分の童貞を奪った人でもあるレイコ。自分に気があることを知っていて、なかば強引に家へ上がり込んで抱いたクラスメイトの葉月。正己が片思いしている相手、廊下でぶつかった後輩。以前の自分が関係を持った相手に次々と遭遇し、迫られたりする。なんだよモテモテで羨ましいなと思うかもしれないが、もしも好きな相手が自分のことを好きでいてくれたとしても付き合えないのだ。好きな相手を悲しませてしまう心苦しさは、とても大きいはず。それに、相手が誘って来たり、少しでもいい雰囲気になると途端に首元へ殺された時の恐怖と感覚が蘇ってくるのだからモテモテな状況もまったく楽しめない。何度も襲い掛かってくる死の恐怖に耐えなければならないのはかなり辛いし、たとえ自分が32歳まで童貞を貫いたとしても、殺されない保証はないのだ。それでも、誘惑に負けずに童貞を貫ける人が果たして何人いるだろう?

 たしかに、童貞を捨てるのはひとりでできることではないし、告白して付き合ったり、そういう雰囲気に持っていってキスをしたりと、クリアしなければならないことはたくさんある。その段階をひとつひとつ踏むのは大変なことだろう。でも、もしかしたらずっと童貞を守り抜く方がよっぽど難しいのかもしれない。

文=小里樹