女子の浮気が実は大人気!? 密かなブームのNTRとは?

マンガ

更新日:2013/6/21

 世間を騒がせている矢口真里の不倫騒動。しかし、そんななか、その状況を想像しほくそ笑んでいる人々がいる。しかも「他人の不幸は蜜の味」的なもので喜んでいるのではなく、不倫現場を目撃した夫、中村昌也の立場を想像し喜んでいるのである。そう、この広い世の中には、妻を、愛する人を見知らぬ男に寝取られることで興奮に近い感情を覚えてしまう人々がいるのである。

 「そんな奇特な人が本当にいるの?」と思われた方はまだまだ甘い。もはや、この“寝取られ”は「NTR」と呼ばれ、萌え界の立派なジャンルとなっているのである。しかもこのNTRは、最近になって広まったものでもないらしく、古くはかの『源氏物語』にも寝取られシーンがみられる。そう、じつはNTRは古来より連綿と続いてきた、もはや古典ともいうべきジャンルでもあるのだ。

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 最近では、NTR作品というと、成年マンガやAV、アダルトゲーム、官能小説などがほとんどだと思われがち。でもじつは、普通のマンガにも、NTR要素の入った作品はあるのだ。

 たとえば、かつて『週刊ヤングジャンプ』(集英社)で連載していた『ちさ×ポン』(中野純子/集英社)。この作品では、主人公のポンタがヒロインの千砂と出会い、恋人同士になり、そして童貞卒業などのさまざまなイベントを経て幸せになっていく姿が描かれている。のだが、なんと、ヒロインの千砂が処女なのに、レイプされてしまうのである。しかも、レイプの最中、千砂は心では拒んでいるのに、指でイカされてしまうという描写つき。なんという容赦のなさっぷりだろうか。これにはリアルタイムで読んでいた読者も唖然を通り越して大きなショックを受けたようで、当時のネットでは「救いのない成年コミックとか沢山読んだけどちさポンの方が不快になる! ふしぎ!!」「あんなひどい目にあうような、ポンタがいったいどんな悪いことをしたと言うんだ……」「鬱になった、ヤバいヤバいヤバい」といった感じで、阿鼻叫喚のあり様だったようだ。これが入口となり、NTRの道へと進んだ者も少なくなかったとか。とにかく、『週刊ヤングジャンプ』誌上でやらかしてくれたこの作品は、多くの者に絶望を与え、そして少数の者に新たな扉を開かせたのである。

 また、同じ『週刊ヤングジャンプ』で、ここ最近、やらかしてくれた作品がある。その名も『テラフォーマーズ』(橘 賢一:著、貴家 悠:原著/集英社) 。2013年版『このマンガがすごい!』(このマンガがすごい! 編集部/宝島社)オトコ編で1位を獲得した作品だ。これに、ドイツ出身のアドルフ・ラインハルトというキャラクターが登場する。察しの良い方は気づいたと思うが、このキャラがNTRキャラで、火星にアドルフが行っている隙に、彼の奥さんが指輪を外し、化粧をし、入口で待っている別の男のもとへ向かう描写があるのだ。しかも、ふたりの間には子どもがいるのだが、作中のモノローグや回想などから推察するに、これがまたアドルフとは違う男の子どもである可能性が高い。しかもしかも、愛妻家であるアドルフは薄々とそのことをわかっているようなのだ。それにも関わらず、出発前には、電話越しで妻に「愛してるよ」とささやくアドルフ。もう涙なしでは見られない姿だ。ちなみにネットでは「矢口の報道でアドルフ嫁を真っ先に連想した」「作者よ、これ以上、彼から何を奪うというのか」「吐き気をもよおす、でもなぜか興奮した」など一部では興奮してしまったという意見はあったものの、おおよその人が絶望感にうちひしがれた。それにしても、なぜか『週刊ヤングジャンプ』はやらかしてくれることが多い。NTR好きは、常々チェックしておくべきかもしれない。

 NTRといえば、この作品を外してはいけない。その作品とは『ベルセルク』(三浦建太郎/白泉社)。読んだ人の心に深い深い傷跡を残した伝説の寝取られシーンがあるのだ。それは、主人公ガッツら「鷹の団」が、団長であり、ガッツの親友であるグリフィス覚醒のための生け贄とされた「触」のシーン。仲間を次々と化け物(使徒)に殺され、最後に生き残ったガッツとヒロインのキャスカ。しかし、ガッツの健闘もむなしく、ともに化け物に捕まってしまう。そこで、復活&覚醒したグリフィスがふたりの前に降り立ち、あろうことか、キャスカを犯してしまうのだ。最後まで信じぬいた親友に、愛し合ったキャスカを目の前で奪われたガッツは、化け物に捕まっているため、身動きがとれず、まさに血のにじむような顔で見ているしかないのだ。これはもうトラウマ確定の大盤振る舞い。しかも、アニメ化の際はそのシーンまで忠実に再現されていたものだから、さらに犠牲者を増やしたとか。とにかく、この作品がトリガーとなりNTRに目覚めてしまった人も多いだろう。罪深い作品なのである。

 さて、じつは意外な作品もNTR要素をもっていたりする。それは、今や知らない人はいないほどの知名度を誇り、かつては『週刊少年ジャンプ』(集英社)の黄金期を支えた作品。その名は『ドラゴンボール』(鳥山 明/集英社)。意外すぎて、口を開けておられる方がほとんどだろう。だが、『ドラゴンボール』にはNTR要素が存在するのだ。それに関わってくる人物、それはヤムチャ。そしてブルマ、ベジータである。ケンカをしながらも交際を続けていたヤムチャとブルマの前に、突然現れたベジータ。地球にフリーザが来襲した後、作中では数年の時間が経つ。久しぶりに集結した仲間たちのなかにはブルマがおり、その手のなかには、生まれたての赤子トランクスがいた。ご存知のとおり、トランクスはベジータとブルマの息子。そう、ヤムチャは読者の知らぬところでフラれ、読者の知らぬところでベジータとブルマは子どもをもうけていたのである。別れた原因はヤムチャの浮気癖だったらしいが、この仕打ちはヤムチャの立場になってみれば、中々にキツい。別れた後にベジータとくっついたのでNTRとは少し外れるかもしれないが、そのキツい気持ちは立派なNTRだろう。かわいそうなヤムチャ。その後も人造人間に胸を貫かれたりとさんざんだし、どうか、どうか本当に幸せになってほしいものである。

 とはいえ、二次元やフィクションで楽しむにはいいが、NTRなんてものが実際に自分に起こったら、やはりとんでもない悲劇だろう。気をつけておきたいものだ。