スタジオジブリ最新作『風立ちぬ』を観る前に知っておきたい5つのポイント

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更新日:2019/4/13

宮崎駿監督5年ぶり待望のジブリ最新作『風立ちぬ』が7月20日に公開される。
72歳の宮崎駿監督がいくつもの“はじめて”に挑んだ本作品。
映画を観る前におさえておきたいポイントを紹介しよう。

ポスター

『風立ちぬ』7月20日(土)
全国ロードショー

原作・脚本・監督/宮崎 駿 音楽/久石 譲
主題歌/「ひこうき雲」(荒井由実)
声の出演/庵野秀明、瀧本美織ほか
空に憧れ、飛行機に乗ることを夢見た少年・堀越二郎の30年にわたる半生に、同時代を生きた文学者・堀辰雄の悲恋を組み合わせた雑誌連載が原作となっている青春映画。世界の航空史に名を刻んだ零戦の誕生を縦糸に、薄幸の少女・菜穂子との出会いと別れを横糸に、関東大震災や戦争の中を生きる者たちの輝ける生の瞬間を描き出す。

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Point1 宮崎監督がはじめて描く大人の恋愛

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堀辰雄の『風立ちぬ』がベース ジブリ初の大人の恋愛とキスシーンも
主人公の堀越二郎は、関東大震災の折に、里見菜穂子という少女と同じ汽車に乗り合わせる。その10年後、二人は運命的な再会を果たし、恋に落ちるが、菜穂子はそのとき不治の病を患っていた……。婚約者を肺結核で亡くした堀辰雄が、実話をもとに描いた小説『風立ちぬ』がベースとなっている本作品。ジブリではめずらしいキスシーンも。宮崎監督が描く二人の愛の時間も見どころのひとつだ。

 

Point2 時代背景(1920~30年代)

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経済的苦境の中、軍国主義へと傾いていった激動の時代
第一次世界大戦の特需景気の反動と、1923年に起きた関東大震災の影響で、1920年代は経済的苦境が続いた。26年には「元号」が大正から昭和へ。29年には世界恐慌が起き1930年代に入ると日本経済も危機的状況となる。31年には満州事変が起き十五年戦争へと突入。文化や生活も激動の時代で、大正ロマンから昭和モダンへと変容。29年には初のトーキー映画が公開され、35年には第1回芥川賞、直木賞が発表された。大正デモクラシーの流れを受けた近代化と自由主義経済のもと民主政治が定着するはずが、軍国主義へと傾いていったこの時代。人々はどんな思いで生きていたのか、想像しながら観てほしい。

 

Point3 こだわりの音響と震災のシーン 人間の声で効果音を表現

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3・11直前に描き終えた震災場面
鈴木敏夫プロデューサーによると、ジブリの映画はモノラル録音でつくった『風の谷のナウシカ』以降、本物の音にこだわるあまり音響技術がエスカレートしてきたが、『風立ちぬ』では原点に立ち返りモノラル録音に。しかも宮崎監督の希望で、戦闘機その他の効果音はほとんど人間の声で表現したというから驚きだ。映像では、ジブリがはじめて描いた大群衆のシーンも出てくる。関東大震災の絵コンテを描き終わったのは2011年3月10日。翌日起きた東日本大震災をうけて、宮崎監督はその場面をそのまま出すかどうか悩んだそうだが、鈴木プロデューサーは、「映画は時代の産物だし、映画が時代をつくることもある。だからといって、そのことにとらわれすぎるのはおかしい」と変更に反対したという。

 

Point4 主人公のモデルは実在の人物

零戦設計者・堀越二郎の半生に、堀辰雄の悲恋をドッキング
この映画のポスターに「堀越二郎と堀辰雄に敬意を込めて。」とあるように、主人公の堀越二郎は零戦を設計した実在の人物である。宮崎監督は戦争関係のものに造詣が深く、堀越二郎のことも調べていた。一方で、二郎と同時代に生き、婚約者を肺結核で亡くした堀辰雄のことも知っていた。そしてある時、「零戦を設計した人の生涯の話に、堀辰雄の恋の話をドッキングさせるとどんなものができるだろう?」と思いつき、模型雑誌『モデルグラフィックス』で2009年4月号から『風立ちぬ』の連載を開始。映画はその物語がベースとなっている。原案となった『零戦』と『風立ちぬ』を読んでから観ると想像も広がるだろう。
 

Point5 登場人物とキャスト

声・庵野秀明

1960年山口県生まれ。映画監督。代表作は「新世紀エヴァンゲリオン」シリーズ。『風の谷のナウシカ』では原画を担当。
アフレコの序盤では「難しい」を連発した庵野さん。そのため最初は、宮崎監督が真後ろから声をかけるかたちで収録がスタートした。監督からは「うまくやろうとしなくていい。いい声だからではなく、存在感で選んだのだから」とアドバイスが。そのひと言で外国語や声を張るシーンにも果敢に取り組み、調子をつかむと自分でOKを出し「監督が二人いるみたいでややこしいな」と監督に笑われたことも。作品については、「堀越二郎さんと僕自身が共通するのは“夢を形にしていく”仕事をしているところだと思います。そこはすごくわかるし、自分の実生活にも通じるところがある。ラストシーンには正直感動しました」

堀越二郎

堀越二郎

スマートでさっそうとしていて含羞、身のこなしは軽やかで人なつっこく礼儀正しい。大軍需組織の中でみなに認められ、平然と世わたりしつつ、自分の美しい飛行機を創りたいという野心をかくしている。(宮崎駿監督による企画書より)

声・瀧本美織

1991年鳥取県生まれ。女優。NHK連続テレビ小説『てっぱん』ではヒロインのあかりを演じた。初主演映画『貞子3D2 』も8月30日より公開。
宮崎監督から、「昔の人は生き方が潔いのだよ。必死に生きようともがく感じではなく、与えられた時間を精いっぱい生きている、そんなイメージで演じてほしい」とアドバイスをうけた瀧本さん。「映像をみて素直に感じたままを声に出しました。震災や戦争があった壮絶な時代の中でも、ひとりひとりが生き生きと過ごしている姿がすがすがしかった。地に足をつけて生きていこうという力強いメッセージを感じました。菜穂子は、自分の運命と立場をしっかり受けとめて生きている魅力的な女性です。二郎と菜穂子の関係も古き良き日本の夫婦のかたちで憧れました。二人の結婚式のシーンがとてもきれいで印象に残っています」

里見菜穂子

里見菜穂子

美しく明るい少女。関東大震災の折、二郎と同じ汽車に乗り合わせる。その10年後、二郎と運命的な再会をし恋に落ちる。結核を病む。少女の名前は堀辰雄の代表作『菜穂子』に由来する。(宮崎監督による企画書より)

カプローニ

カプローニ(声:野村萬斎)
イタリアの飛行機設計者で二郎の夢に現れる助言者。

本庄

本庄(声:西島秀俊)
二郎の大学時代からの友人であり、三菱内燃機株式会社の同僚。

黒川

黒川(声:西村雅彦)
二郎の上司。二郎と菜穂子を公私にわたって支える。

ビジュアルガイド

映画の余韻に浸りたい人に

『風立ちぬ ビジュアルガイド』
角川書店 1260円 7月20日発売

鈴木プロデューサーと瀧本美織さんの対談、年表付きの時代背景、作中に登場した飛行機の名前や特徴、ストーリーガイドなどで構成。場面カットも多数掲載。主題歌の『ひこうき雲』を“荒井由実”名の時代に歌った松任谷由実さんのインタビューも収録。