ブラック企業大賞は他人事じゃない! ブラック企業から身を守るための傾向と対策

ビジネス

更新日:2013/7/3

 サービス残業なんか当たり前、パワハラ・セクハラ日常茶飯事。うつ病は蔓延し、トイレ休憩くらいしか休憩時間をとることができない、死んだ魚の目をした従業員が、まるでゾンビのように力なく、あくせくと動き回っている。このような光景が日常的なのが、そう「ブラック企業」。最近、やっとクローズアップされてきた感があるものの、どれくらいの数があるのか、その実態はまだ謎に包まれている。しかも、このまま不況が続けば、企業は自分たちを存続させることを最優先とし、しわ寄せを従業員に求めるようになる。つまり、ノーマルな企業がブラック化していくことも、十分に考えられるのだ。

 まさに世は「大ブラック企業時代」。対岸の火事としてブラック企業に苦しんでいる人をみている、そこのあなた。もうそれは他人事ではない。もしかすれば、明日にでも、あなたの会社はブラック企業と化しているかもしれないのだ。

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 しかし、備えあれば憂いなし。あなたの会社がブラック企業となり、いざというときがきても、正面から立ち向かえるように「知識」という武器を持っておくのだ。そこで今回は、6月11日に発売された『ヤバい会社の餌食にならないための労働法』(今野晴貴/幻冬舎)から、最高の武器となりえるような知識をお教えしよう。

 嫌な上司から毎日イヤミをいわれる。ブラック企業では日常的な光景だ。そんなもの、軽く受け流せばいいだけ、と思っている方は心が強い人なのだろう。しかしなかには、それらを受け流せず、心に小さなキズを無数に作っている人だっているのだ。そういった、イヤミ、恫喝、権限や権力を笠に着た一方的な嫌がらせなどのパワーハラスメント。そのような行為に、ただ黙ってうつむいていてはいけない。そういうときは、「メモ」がきく、と本書では書かれている。いつ、どこで、だれが、どのような発言をしたのか。どういった経緯でパワハラを受けたのか、メモをしておけばいいらしい。というのも、じつは、もし後々裁判を起こそうとしたとき、こういったメモは「証拠」としての法的権力をもつらしいのである。また、ICレコーダーやテープレコーダーなどで、録音しておくのも効果的とのこと。今では携帯電話でも録音ができるものが多いので、そういった手軽に利用でき、絶大な効果をあげるものは、どんどん利用していこう。ちなみに、これらは、パワハラだけでなく、セクハラの証拠としても有効だ。

 「メモ」の活用法は他にもある。それは「サービス残業」にもすごく効果的だということ。ブラック企業では当然のように行われているサービス残業。悪質なところでは、タイムカードを改ざんすることもあるのだとか。しかし、そんなときでも、出社時間と退社時間を、毎日メモにとっておくこと、ただそれだけをしておけばいい。辞めた後などに残業代が支払われていないという訴訟を起こしても、そのメモを証拠にすれば勝てる可能性が高いということらしいのだ。なんだったら、過去2年間にわたっての残業代も請求できるのだ。仕事をしたら、した分だけきっちりもらう。いたって当たり前のことだ。あなたが、寝る間もおしんで仕事をした分の、正当な見返りは得られるのが当たり前。泣き寝入りしては会社の思うつぼだ。毎日メモをとっておいて、人を見下した憎たらしい顔に、堂々と突きつけてやろう。

 「有給休暇なんて都市伝説」と思う人が後を絶たないほど、日本の会社は休暇をとりにくい。ブラック企業ならなおさらで、上司に有給を申請しても、鼻で笑われるのが関の山だし、最悪、ものすごい剣幕で怒鳴られるかもしれないので、面と向かって言えたもんじゃない、と思い込んではいないだろうか。じつは、そんなことはないのだ。というのも、有給を申請するのに面と向かって話をする必要はまったくなく、たとえば電話で「今日休みます」といってもOKだと本書では書かれている。書類なんて提出する必要もなし。なぜなら、有給休暇の申請に法的なルールはいっさいないのだから。ただし、注意しておきたいのは、会社側には「時期変更権」という、有給の申請を断る権利があるということ。でも安心してほしい。これは、有給をなしにするということではなく、「お願いだから、有給をとる時期を変えてください」といえるだけの権利で、会社側には、代わりに別の日を有給休暇にすることが義務付けられているのだ。なににしても、大切なのは「申請するぞ」という気持ち。さあ、今まで使われずにホコリをかぶっているだけだった有給休暇をどんどん使ってやろう。

 ブラック企業に勤めていたら、精神がすり減り、肉体的にも限界が近づき、退職するということも視野にいれなければならないときがくるだろう。そんなときに、支払われていない残業代や数々のパワハラ・セクハラ行為に泣き寝入りするだけでいいのだろうか。いや違う。もうそんな時代は終わったのだ。むずかしいことかもしれないが、会社とケンカするぞという意識をもってほしい。そのときに上記の知識が効いてくるのだ。これらの知識は、あなたにとって、きっと強く、頼りになる武器になってくれるだろう。

文=オンダ ヒロ