お通夜には「御霊前」と「御仏前」、どちらが正解? 老舗から「日本のしきたり」を学ぶ

生活

2013/7/12

 お正月や端午の節句、衣替え、お彼岸、お盆、大晦日などの季節の歳時、また入学式や成人式、結婚式、葬式などの人生の節目となる冠婚葬祭、さらには礼状の作法や年賀状、厄年、縁起物など、日本には独自の「しきたり」が数多くある。しかしその意味や成り立ちなどを尋ねられた際、きちんと説明できる日本人はどれくらいいるだろうか?

 ではここで問題。急な不幸があり、お通夜に参列することになったあなた。香典を入れる不祝儀袋を買おうとコンビニへ行くと、売り場には「御霊前」と「御仏前」という2種類の表書きの袋が。さて、どっちを買うべき?

 この場合「御霊前」を買うのが正解。お香や書画用品などを取り扱う、創業350年という老舗「鳩居堂」が監修した『鳩居堂の日本のしきたり豆知識』(マガジンハウス)によると、どちらを使うかの目安になるのは「四十九日」だそうだ。亡くなった人の魂が亡くなった日から七週間、あの世とこの世をさまよっているといわれる「中陰」の間は「御霊前」で、霊が成仏する四十九日の当日からは、その後の法事も含めて、仏様の前に供えるという意味の「御仏前」を使うのが正しいそうだ。

 また香典には古い紙幣を使うべきだと言われているが、現代は新しいお札が手に入りやすいのでそれほど気にする必要はなく、もしどうしても気になる場合は、紙幣に折り目をひとつつけておくといいそうだ。また黒白、銀一色が基本とされる不祝儀袋だが、黄色と白の水引もあるという。これは京都や大阪、東北地方の一部で使われている「黄白」と呼ばれるものだ。さらには白一色の水引の不祝儀袋もあり、これは「神道」の通夜や葬式で使われるという。さらに袱紗(ふくさ)や贈答品、お金の包み方などは慶弔で違うなど、細かな決まりがあることも大人としては知っておきたいところだ。

 こうした「しきたり」は知らないと恥をかいてしまうものだが、核家族化が進み、年長者などと会話をすることが減ってしまった現代はなかなか知る機会が少ないものだ。本書では見開きごとに1テーマ、冠婚葬祭や季節の歳時など、日本人として知っておきたい「しきたり」の成り立ちや解釈、生活に生かす知恵、それらを鳩居堂の商品であるお香や書画用品、和の小物などの美しい写真とともに学ぶことができる。

 例えば、一般的によく知られている「七五三」だが、現在のような形で行われるようになったのは江戸時代からで、5代将軍綱吉の長男・徳松のお祝いを11月15日に行ったことから定着したそうだ(千歳飴は元禄の頃に浅草で売り出されたのが始まりといわれる)。さらにその七五三の後にも、男女とも数えで13歳になると「十三参り」というのがあるのを知っているだろうか? これは「知恵もうで」「知恵もらい」とも言われていて、3月13日に虚空蔵菩薩にお参りして厄災を払い、知恵と福徳を授けてもらうというもので、関西などではポピュラーな行事だそうだ。中でも有名なのが、京都の嵐山にある「法輪寺」の十三参りだそうで、参詣の帰り道、石段の参道を降りて渡月橋を渡り終えるまでは絶対に振り返ってはいけない(振り返るとせっかく頂いた知恵を失ってしまう)という決まりがあるそうだ。多くの中学生が、これまでドキドキしながら歩いたことだろう。

「しきたり」というと、ちょっと堅苦しいもの、面倒なことという意識があるかもしれないが、その成り立ちなどを知ると、日本ならではの細やかな気遣いや、もてなしの心に触れることができるものだ。こうした歳事やしきたりを日々の生活に取り入れると、とても豊かな気持ちで過ごせるようになるだろう。

文=成田全(ナリタタモツ)