100歳の現役サラリーマンに学ぶ「必要とされる生き方」

ビジネス

2013/7/16

 あなたは、100歳の自分を想像できるだろうか。しかも、現役サラリーマンとして働く姿を。

 福井福太郎さん、100歳。毎日、辻堂の自宅から神田まで、電車で約1時間かけて通う、現役のサラリーマンだ。49歳から友人が経営する証券会社で働きはじめ、今は宝くじの委託販売の仕事に従事。大学全入とは対照的な時代に、慶応義塾大学経済学部を卒業したエリートが、センチュリーのような高級車で送り迎えしてもらうこともなければ、座り心地抜群のソファのある社長室が用意されているわけでもない。給料は、70歳からずっと同じ。ほかの社員と同じように、宝くじの仕分けや枚数の勘定、売り上げ管理をするのだ。ランチがマクドナルドのハンバーガーという日もある。正直地味だ。けれども、「えらくなろうなんて思わない」福井さんは、これでいいのだ。

 なぜ、そこまで働き続けるのか。それは、「必要とされているから」だという。96歳の時に、一度辞めたいと申し出たが、「ずっといてほしい」と言われ今に至る。

 明治45年生まれ、関東大震災、世界恐慌、二度の世界戦争、妾の子であることの差別、軍隊生活、結婚、戦時中の幼子2人の死。こんな酷な人生があるのか? というくらい平和ボケした現代の我々には、想像し難い波乱万丈な人生だ。

 それでも福井さんは言う。「日本という国に生まれて、本当によかったと思っている」と。だからこそ、福井さんから聞こえてくる「まわりの人への感謝」「働くのは本能」といったシンプルな言葉も、力強い。

 そんな100歳の福井さんを支え続けてきたもの、そして必要とされる理由――それは、「利他の精神」にある。

 自分の利益より他人の利益を優先。それは和を尊ぶ日本人の美学とも違う。嫌われたくないと自分を捨ててまで相手に応えるのではない。要は、自分より相手のことを先に考え、相手が満足すれば自分も満足できるというのだ。立場はあくまで対等。これは、福井さんの礎ともいえる思想家・シモンド・シスモンデイの考えだ。

 (財)日本生産性本部が新社会人向けに行った調査によると、「第一志望の会社に入れた」という今年度の新入社員は、昨年度の60.9%から52%と減少。「とりあえず内定」傾向が強まった背景には、厳しい就職があり、とにかく「社会人という称号」を得るのが優先となった結果だろう。

 ただ、ここで悲観してはいけない。福井さんのいう「与えられた運命のもとで、とにかく自分が精一杯できる努力をしていく」ことを実践すれば、今は納得できなくてもいつか人生は思わぬ方向へ展開していくかもしれない。あるいは、今あなたがいる会社が、100歳になっても働き続けている会社となるかもしれない。

 「会社や仕事のためじゃなく、親友のために働いた」という福井さんの基準、「利他の精神」。それが福井さんからの生き方のヒントだ。

 人生なんて百人百様とはいえ、「人を思い、一生懸命生きた者勝ち」なんではないか。至極シンプルである。

文=中川寛子