人類史上最大のベストセラーは発行部数60億部のあの本! ベストセラーの「歴史」を読み解く

社会

更新日:2013/7/23

 あなたは街の書店やネットで「ベストセラー!」と喧伝されている本が気になって、買ってしまうタイプだろうか? ちなみに日販調べによる年間ベストセラー(総合)は、2010年が『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(岩崎夏海/ダイヤモンド社)、2011年は『謎解きはディナーのあとで(1・2)』(東川篤哉/小学館)、2012年は『聞く力 心をひらく35のヒント』(阿川佐和子/文藝春秋)で、今年上半期の総合ランキング1位は『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(村上春樹/文藝春秋)ということだが、これらのベストセラー本、「話題だったから買ったけど、まだ読んでない」という人は案外多いのではないだろうか?

 人間の心理とは不思議なもので、みんなが持っているものが欲しくなり、誰かが並んでいるとその列に並びたくなってしまうものらしい。多数派の行動を積極的に模倣して、少数派の行動を回避することを「同調伝達」というのだが、そのメカニズムはまだよくわかっていないという。しかしこうした、他者に学ぶ「社会学習」は、自ら適切な行動を模索する「個体学習」に比べ、環境の変化があまり起こらない場合は有利となる(時間とコストをかけて独自の方法を編み出すよりも、人の真似をする方が楽!)そうで、人類がこれほど繁栄したのはこの能力に負うところが大きいと考えられているそうだ。

 ちなみに「ベストセラー」という言葉が使われ始めたのは、『ベストセラーの世界史』(フレデリック・ルヴィロワ:著 大原宣久・三枝大修:訳/太田出版)によると、今から100年ちょっと前、1889年のアメリカだったそうだ。この新しい言葉はまずイギリスへと伝わり、1914~18年に起こった第一次世界大戦後には世界中に広まる。もちろんグーテンベルクが活版印刷の技術を考案して以降、版を重ねるベストセラーは存在していたのだが、昔は作品の売れる「量」よりも、その作品の「価値」が重視されていたという。そして量と質は切り離しえないもので、多くを売り上げる本=作品の質を保証されているものであり、読むに値しないしょうもない本、つまらない本は読者から見放されて売れない、というロジックであったそうだ。

 ところが「ベストセラー」という言葉が生まれた時代である19世紀になると、出版業が発達し、識字率が向上して文化の大衆化(それまでは字の読める人や本が買える人は、上流階級や限られた一部の人だけだった)が起こり、多くの人が本を求めるようになってこのロジックが崩れ去ってしまった。さらに出版社は「◯◯部も売れています!」などと、とてつもない数字を見せつけて(誇張があったそうだが)大衆の欲望を刺激し、それが自動的に販売促進効果になっていたそうだ。19世紀の後半には、1840年以前にはなかった10万部の売上げが平凡となり、100万部の時代へと突入していくことになる。

 本書では、古くはセルバンテスの『ドン・キホーテ』から、現代の『ダ・ヴィンチ・コード』(ダン・ブラウン:著、越前敏弥:訳/角川書店)、「ハリー・ポッター」シリーズ(J・K・ローリング:著、松岡佑子:訳/静山社)まで、16世紀から現代の数多あるベストセラー本を研究し、なぜその本が売れたのかを読み解いている。そしてベストセラー誕生の秘密を「書物」「作者」「読者」の3つの観点から分析、なぜその本がベストセラーになったのかを思想・文化史と絡めて論じている。ちなみに人類史上第1位のベストセラーは『聖書』(グーテンベルクが初めて印刷した本でもある)で、その販売部数はなんと40~60億部の間! 第2位の『毛主席語録』の10億部に大差をつけ、ぶっちぎりの売上を誇っているそうだ。

文=成田全(ナリタタモツ)