エリート街道を捨てお笑い芸人に! 東大卒・元マッキンゼー社員が語る「人生の決断力」

芸能

更新日:2013/7/29

 いい大学を卒業し、いい会社に就職すること。それこそが幸せな人生を手にする最も確実な方法―。そう教えこまれて必死に勉強して有名企業に入ったのに、毎日が憂鬱で仕方ない…。そんなエリート街道で彷徨う社会人に、あなたもなってはいないだろうか。

 いま、ひとりの女性が選んだ人生の決断が「勇気ある」と話題を呼んでいる。彼女の名前は石井てる美。東大を卒業し、世界有数のコンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社した人物だ。傍から見れば順調すぎるエリート街道を進んでいた彼女は、ある日会社を辞めてお笑い芸人になった。その一大決心に至った心境を綴ったのが『私がマッキンゼーを辞めた理由 ―自分の人生を切り拓く決断力―』(石井てる美/角川書店)だ。

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 優秀だった彼女がなぜマッキンゼーを辞めたのか? その背景には、激務に追われて仕事の楽しさや自分を見失っていったことが関係した。

「成長を続けて昇進できなければこれ以上自分はここに居られない」という厳しいルールが存在する世界。そんな環境でも入社直後からひたすら仕事に打ち込んできた彼女だったが、ある時、優秀なマネージャーと2人体制でのプロジェクトを任されてから歯車が狂い始めたという。当時の仕事を、「次第に“メール一本打つのに何分かけてるの?”といった調子で日々の一つ一つの行動に対してものすごく細かくコントロールしてくるようになりました。分刻みであまりに細かな指示をされるので頭がおかしくなりそうでした」と振り返る彼女。

 そんな状態では心身のバランスを崩してしまうのも当然だ。日中は食べものがのどを通らず、日曜の午後になると過呼吸を起こすようになってしまったという。「こんなに辛いならいっそ死んでしまった方がラクだな」…そんなことばかり考えるほど憔悴しきった彼女だったが、自分を縛り付けているものは、マッキンゼーに勤めているという「見栄」や「体裁」だということに気付いたのだ。

「生きるために仕事をしているのであって、仕事のために生きているわけじゃない。そもそも私の人生なのに、なにもやりたいこともやらずに死にたくなってるんだろう。バカじゃないの」。

 そこで彼女が出した決断こそが、マッキンゼーを辞め、生まれ変わったらやりたいと憧れていた「お笑い芸人」になること。でも、マッキンゼーが大変だったなら他の会社に就職すれば良さそうなものを、なぜまたお笑い芸人に…? そんな周囲の疑問に、彼女はこう答えている。

「人生というチャンスは本当に一度きりです。(中略)一旦死んだものと思って、そして夢見ていた二度目の人生を手に入れたとでも思って、ずっとやりたかったことを本当にやればいいじゃないか、と思うに至ったのです」。

 現在は、ワタナベエンターテインメント所属のお笑い芸人として芸歴3年目に突入。「決断することは“捨てる”こと」だと身を持って感じた彼女は、自分の選択を心から誇りに思い、これまでの人生では得られなかったワクワク感を日々感じながら生きている。働き方、生き方に悩む人こそ、彼女の決断から勇気やヒントをもらえるはずだ。

文=池田香織(verb)