安藤美姫、ヨシナガ氏…変わる結婚の形と“事実婚”のリアル

恋愛・結婚

更新日:2013/7/26

 父親にあたる人物と籍を入れずに出産していたことを告白し、渦中の人物となった安藤美姫。「未婚のまま子どもを産むなんて!」という批判的な意見がある一方、「母親は強い」など、その決意を応援する声もある。

 また、『北斗の拳』(集英社)の作者・原哲夫さんの妻である紀子さんと、ブロガーのヨシナガ氏が「結婚しました。人妻なので事実婚です」と発表し、ネット上では「これは笑えない…」など大きな物議を醸している。

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 結婚の形が多様化した今、“事実婚”を選ぶカップルも増えつつある。とはいえ、法律婚と事実婚にはどんな違いがあるのか、きちんと知らない人がほとんどではないだろうか?

 『オトナ婚 私だけの自由な結婚のカタチ』(しばざきとしえ/エンターブレイン)の著者・しばざきとしえ氏も事実婚をしたひとり。バツイチ子持ちでイラストレーターとして働く中、同業者であるパートナーに出会い、籍を入れずに連れ添うスタイルを選択した。事実婚を「オトナ婚」と名付け、自由な価値観で生活する彼女たち。その様子がマンガ形式でコミカルに描かれた1冊をさっそく見てみよう。

 しばさき氏が事実婚を選んだ大きな理由が、「夫婦同姓の強制に反対」というもの。「姓ぐらい自由に名乗らせろ!」と主張する彼女には、過去に一度結婚経験があるが、そのときも「○○さんの奥さん」という呼ばれ方に違和感を抱いていたそうだ。

 姓が変わることに抵抗を感じる女性は少なくない。一人っ子や、先祖代々受け継がれてきた姓に愛着がある人ならなおさらだ。では、夫婦別姓を尊重して事実婚をしたら、何か不都合が生じるのだろうか?

 結論から言うと、事実婚は準婚(=結婚に準ずる)の権利と義務が認められており、法律婚となんら変わりない日常生活を送ることができる。例えば「夫婦の同居・協力義務」や「貞操義務」、「日常家事の連帯責務」などがあるほか、一方が専業主婦の場合はパートナーの厚生年金の第3号被保険者にもなれる。そのほかにも、マンションを共同名義で購入したり、生命保険の受取人になることだって可能なのだ。

 ただし、これらの権利を法律婚と同じ扱いにしてもらうためには、「事実婚をどう証明するかが大事」としばざき氏は言う。これは住民票の続柄に「妻(未届)」と記載することで事実婚の証明になるので、覚えておこう。

 じゃあ、住民票の記載さえしておけば不便はないじゃん! そもそも結婚なんて意味あるの? …そんな疑問が聞こえてきそうだが、どうしても事実婚だと認められていない権利も。

 それは「相続権がない」ことや「税金の配偶者控除が受けられない」こと。さらに、2人の間に子どもができたら、その子は「婚外子」になるという点も忘れてはならない。もしパートナーに以前結婚した相手との子どもがいた場合、婚外子の相続分は結婚で生まれた子の1/2となってしまうのだ(この秋にも最高裁から違憲の判断が示される可能性は高いが)。

 こうした法律上の差はあれど、「大切な人とどう生きていくかは、本人たちの自由」としばざき氏は語る。また、彼女のようなケースをはじめ、自分にあった結婚スタイルに辿り着いた女性たちが本音を語った『オトナ婚です、わたしたち―十人十色のつがい方』(大塚玲子/太郎次郎社エディタス)では、「おめでた事実婚」「女×女婚」「浮気容認婚」など、様々なカップルの形を紹介している。

 著者の大塚氏はこの本で、「わたしが必要としているのは“自分が快適に生きること”であって、それはかならずしも、彼と“結婚”しなくても、いっしょに暮らさなくても、実現できていると気付いたのだ」と締めくくっている。

 カップルの形はひとつではない。お互いの価値観を尊重できる「自立した人間=オトナ」同士だからこそ選べるひとつの形が「事実婚」なのだろう。

文=池田香織(verb)