『半沢直樹』は誇張じゃない! ホントに恐ろしい銀行員の世界

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公開日:2013/7/31

 堺雅人が破天荒な銀行員を好演し、高視聴率をキープしているドラマ『半沢直樹』。赤裸々な内幕劇に「ホントに銀行ってこんななの?」と驚きながら観ている人も多いようだ。

 たとえば第1話では、出世頭だった半沢と同期の男性が、ストレスから病気を患い“出向という名の島流し”に。「一度失敗すると、やり直せないのがバンカー」とシビアな世界であることを強調していたが、じつはこれ、実際も同じであるらしい。

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 まず、社員に対する厳しい目は、入社前から向けられている。元銀行員である著者がまとめた『銀行員のキミョーな世界 なぜ行内事情を押しつけるのか?』(津田倫男/中央公論新社)によると「入行時に密かに“幹部候補生”“将来の見極め対象”“定数確保要員”の選別がなされている」という。いわば入社前から銀行員人生はほとんど決まっているのだ。しかも銀行側は、入行から3年のあいだに3割が辞めることを見込んでいるため、入行当初から「本格的な淘汰が始まっている」状態なのである。

 銀行に自分が期待されているか否かは簡単にわかる。最初の配属先が「本部や大都市の大型店」であれば、“まずまず”以上の評価が下されているということ。ここで2~3年働き、評価を維持した場合は2店目が本部や海外、あるいは最初の配属先より規模の大きい支店へと移る。逆に、1店目も2店目もさほど重要ではない支店に配属されるということは、自分が出世コースに乗っていないという意味。それゆえ最初の配属先や2店目が終わるころには、辞める若手が増加するそう。つまり銀行は「自主退職を見込んで転勤」させているわけだ。

 ドラマでも描かれていたが、この本でも「銀行では一発逆転はない」と著者は綴っているように、敗者復活することはほぼ絶望的だ。しかし“例外”もある。それは「銀行の上層部あるいは重要な取引先と縁があり、婿になる場合」だ。「昭和か!」とツッコミを入れたくなるが、銀行には縁談が多いそうで、逆玉により「その人に対する銀行の評価が変わることがある」とのこと。また、自分を低く評価した上司が失脚した場合も浮上のチャンスになる。いかにも派閥抗争の激しい銀行という業界を象徴するかのような話だ。

 入社から数年、20代そこそこで将来性を判断するという厳しい業界。しかも、端から見ていると旧態依然とした古い体質の世界だ。だからこそ「やられたらやり返す。倍返しだ!」と啖呵を切る半沢には、胸がすく気分になる。果たして半沢の復讐劇はどこまで行くのか。今後も楽しみだ。