ラノベと何が違うの? 大人向けエンタ小説レーベル創刊!!
更新日:2013/9/5
同レーベルの作品は、「キャラクターノベル」ではあるものの、中高生向けの「ライトノベル」と違い、「萌え」や「恋愛」要素よりも「ストーリー」が重視されているのが特徴だ。本のサイズもB6版と、ライトノベルの文庫版より一回り大きい。そのため、最近の一般的なライトノベルの表紙とは異なり、表紙に男性主人公や背景なども描かれている。
創刊時の3作品はいずれも、ネット小説投稿サイト「小説家になろう」で連載されている人気作品の書籍化だ。ロールプレイングゲームなどでお馴染みのファンタジー世界に、主人公が生前の記憶やスキルを持ったまま転生をするという構成が特徴になっている。同じようにネット小説から書籍化された作品には、アルファポリスの『ゲート―自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり』や、エンターブレインの『ログ・ホライズン』などが挙げられる。
今回、ダ・ヴィンチ電子ナビ編集部では、同レーベルの編集長と編集者たちにインタビューを行い、レーベル立ち上げの経緯や狙い、今後の展開などについて話をうかがった。
発端は「MF文庫J」の読者層をもう少し広げられないか?という議論
―― まず、今回の新レーベル「MFブックス」立ち上げの経緯をお聞かせ下さい。
金田一:メディアファクトリーの中高生向けライトノベルレーベルには「MF文庫J」がありますけど、そちらで数年前から「もう少し上の年齢層に読者を広げられないか?」ということが検討されていました。そこへ昨年末ごろに、フロンティアワークスの方々から「ネットで既に人気のあるタイトルの書籍化」という企画を頂き、先行他社の事例では30~40代の方が購入しているという話を伺ったんです。これはひょっとしてウチで画策している「大人向けのキャラクターノベル」のヒントになるのでは? と思い、そこからはトントン拍子でした。
辻:「小説家になろう」の読者層は若い方が中心なんですが、そこから書籍化されたものを購入するのは年齢層が高い方が中心なんですよね。それは、社会人だから忙しくて時間がないというのが大きいのかな、と考えています。ネットだとまず作品の数が膨大ですし、数千文字づつをそれなりの頻度で更新とかですから、連載を追いかけていられなかったりするのではないでしょうか? だったらもう、面白いものを読みやすい形でまとめて読みたい、というニーズがあるのかな、と思っています。
堤:「小説家になろう」で無料で読めるものだから探せばいいじゃん! というような話もありますけど、当然良質な作品を探すには手間が発生するわけで、時間をかけられないオトナからすると、お金を出してでも「面白いやつを俺に教えてくれよ!」という話になると思うんです。
―― いわゆる「キュレーション」をして欲しいってことですね。
金田一:そうなんです。わりと早めに電子書籍化をする予定なんですが、同じような入り口から「小説家になろう」に行って読めばいいじゃん! という意見もあると思うんです。でも、オトナはその積み重ねがしんどいし、どの作品を選んだらいいかもわからないんで、面白いとある程度確約されているものを読みやすい形にしてくれればいくらかお金払いますよ、というニーズに応えるのが我々の役目なのかな、と。
「異世界転生モノ」に限って考えていたわけではない
―― 内容的には三作品とも「異世界に転生」する話ですが、それはどういう意図で?
堤:今回ターゲットとしている読者層にとっては、「転生」や「異世界トリップ」によって、自分自身が何かしらに変身して活躍したり「自分」というものが成し遂げられていくストーリーというのがキーポイントになっていると考えています。
金田一:「小説家になろう」のランキングで上位にあがってくるのは、ほぼこのシチュエーションなんですよね。僕も最初はびっくりしたんですけど、「とにかく転生しろ話はそこからだ」みたいな。
辻:今回書籍化する3作品は、作者さんに書籍化のお声掛けをさせて頂いたのがウェブでの連載が始まって間もない頃で、まだランキングの上位ではなかったんですよ。社内の企画段階で「今後こういうのが来ます」という話をしていたのが、時が経つにつれどんどんランキングが上がっていって。だから、今の時代に読み手が支持しそうなものという認識の中で、「異世界転生」というキーワードが今回は選ばれているという感じです。
金田一:「小説家になろう」って、もの凄くきちっと執筆して、更新して、仕上げている作品が、やっぱりランキングの上位を占めているんです。作者さんが投稿している段階では無償なのに、ほんとに「作品を書きたい」という欲求できちんとやってる作品が上位になっていて、それがたまたま今は軒並み「異世界転生」モノというパターンを描いたという感じですね。
辻:この流行りがずっと続くのか? と言われると、そうではないと思うんですね。ライトノベルでも最初のころの傾向と、今とでは違う傾向になっているわけですし。だから、「MFブックスではずっと異世界トリップだけをやります」ということではないです。
上位の作家はネットユーザーに鍛えられ育てられている
―― 「小説家になろう」は連載形式なんで、ダイレクトに読者の反応が返ってきますよね。読者の意見を取り入れて、プロットを変えていくみたいなこともあるんですか?
辻:よくありますね。作品がまるごと消えて、書き直して……みたいなことが起こったりもします。でも、ランキング上位の方は、結構プロットをきっちり書かれている方が多い印象です。
金田一:『ライオットグラスパー』は敵のスキルを奪うというのが特徴なんですが、ゲームのパラメーターみたいに設定がきちんと決められているんですね。でも、ウェブ連載の途中で「何かの場合に特例が起きるっていうことを考えずに書いていました」といって、遡ってそこだけ書き直しをされてます。
―― ゲームのデバックみたいですね。
堤:しかもそれが、「作品を面白くする」という意味で機能していますよね。もちろん、作者さんも読者の意見を全て取り入れるわけではないんですけど。個人的にはボーカロイド周辺の流れと似ているなと思うんですが、読者の方々は「わしが育てた」といった感覚をお持ちなんじゃないかな、と。
―― このPV数は、凄いですよね。
堤:更新頻度が凄いってのもありますね。作品によっては、毎日1話づつ更新してますので。
辻:創刊タイトルの中には改稿作業をしながらでも、毎日更新しちゃうという。もの凄く精力的で、自分の持っている情熱を文章に叩きつけている方々なんで、そこが読者の支持を得られてるんじゃないかな、とは思いますね。
―― 鍛えられてますよね。常に読者を意識しなきゃいけないわけですし。
堤:そうですね、毎日のように。そこが、長編1本書いてドンと出すのと違うところです。常に読者の目に晒されるということを意識して書かなければならない。
辻:上位の方であればあるほど読者も多いわけで、反応してくる方も多いわけで。そういった意味で、アマチュアとはいえ、かなり鍛えられてますよね。悲しいケースとして作家さんの心が折れちゃって、良い作品なのに無くなっちゃうこともあるんですよ。
ネット小説以外のタイトルも検討中
―― 今後の刊行予定について教えて下さい。
金田一:例えば『盾の勇者の成り上がり』ですと、もう向こう10冊分くらい第1稿があるっていう状況なんですよ。もちろん作者さんの改稿作業と編集作業次第ではありますが、隔月くらいのペースでは出せると思います。
辻:毎月25日に3冊という刊行ペースは、年末くらいまでは、増えることはあっても減ることはないと思います。
堤:増えちゃうかも(笑)。
辻:いま公表しているタイトルは9月刊までですが、まだ言えない、未発表の期待作品があります。きっとネットユーザーの方々には、お察しのタイトルもあるかもしれませんが。
金田一:「小説家になろう」発だけではなく、ウチからも何か企画して作っていきたいとも思っているんですよね。まあ、そのあたりは乞うご期待ということで。
―― 楽しみにしています。本日はどうもありがとうございました。
取材・文=鷹野凌
『盾の勇者の成り上がり 1』
アネコユサギ(著) 弥南せいら(画)/メディアファクトリー/1,260円
誰も信じるな――すべてが敵だ。異世界を舞台に勇者の復活劇が始まった!
盾の勇者として異世界に召喚された岩谷尚文。冒険三日目にして仲間に裏切られ、勇者としての名声と金銭を一度に失ってしまった。
「……なぜ、俺だけがこんな目に遭うんだ!?」
不信、疑念、猜疑心。世界のすべてが敵だ! 他者を信じられなくなった尚文だが、そんな彼の前に、一人の少女が現れて……!? 苦悩の果てに、彼が手にしたものは一体何なのか!? これは一人の男が、絶望の底から這い上がって行く軌跡を描いた成り上がりファンタジー!「小説家になろう」で6,000万PVを超える超人気作が満を持して登場!
◆ 著者からヒトコト(書籍化にあたって苦労した点)
「ネット投稿サイトから書籍化のお話を頂いたのですが、毎日更新を維持しながら書籍化作業をした事ですね。毎日の更新自体に苦は無かったのですが、初めての経験で慣れない作業もあって苦労しました」
『ライオットグラスパー ~異世界でスキル盗ってます~ 1』
飛鳥けい(著) どっこい(画)/メディアファクトリー/1,260円
敵のスキルを奪い取れ――「盗る」ことで異世界を強く生き抜く、剣と魔法の成長物語!
「やっべえよっ! 隠しスキルきたこれっ」
現世で事故死してしまった主人公のアガツマセイジ。死後の転生先を剣と魔法の異世界に決めた彼は、ライオットグラスパー(盗賊の神技)というチート技を習得し、新天地で降り立った。他者の有能なスキルを盗み取る――ライオットグラスパーの力を使って、セイジは己を強化して行く。さらには獣耳の少女との新たな出会いが彼に転機を与えて……!?
◆ 著者からヒトコト(書籍化にあたって苦労した点)
「改稿作業で原稿を読み返すと、その度に修正したい部分がいくつも見つかったことです。読みやすく、面白くなるよう今後も努力を続けていく所存ですが、何度も自分の文章表現と向き合うのは……なかなかにシンドイ時間でした。修正した数分後にやっぱり元に戻すという行為もしばしば。Ctrl+Zの便利さが実感できました」
『詰みかけ転生領主の改革 1』
氷純(著) DOMO(画)/メディアファクトリー/1,260円
まさかの”二歳児”が巻き返す。異世界が舞台の領地改革大河ファンタジー開幕!
享年29歳の男――人生をドロップアウトするには早すぎる死だったが、気が付けば、領地を持つ上流貴族の息子、ソラ・クラインセルトとして転生していた。
――しかし、主人公の両親が統治する場所は、賄賂に横領、重税、領主軍を使っての領民拉致&奴隷化etc……。眼前に広がるのは、豚領主(父親)によって破滅寸前まで追い込まれた”詰みかけ領地”! ソラ・クラインセルトはこの状況を巻き返せるのか!? まさかの二歳児が挑む、領地改革ファンタジー登場!
◆ 著者からヒトコト(書籍化にあたって苦労した点)
「いつ固まるとも知れない壊れかけのパソコンでの執筆作業。こまめに保存していなかったら詰んでましたね。」
MFブックスのプロモーションビデオもチェック!
9月25日発売予定の新刊はこちら!
□『ネトオク男の楽しい異世界貿易紀行 1』
□『ドラグーン 〜竜騎士への道〜 1』
□『フェアリーテイル・クロニクル 〜空気読まない異世界ライフ〜 1』
★その他の最新情報は「MFブックス」公式サイトか、「MFブックス編集部」公式ツイッター(@MFBooks_Edit)をチェック!