スピンアウト・スピンオフってどういう意味? 『Fate/Apocrypha』ほか ―ブンガク!【第10回】―
更新日:2013/9/5
【前回までのおさらい】
○【第1回】ブンガク部が廃部ってどういうこと?
○【第2回】帰国子女でラノベ好きな美少女あらわる!
○【第3回】ブンガク部の救世主?顧問をさがせ
○【第4回】ラノベ好きな先生からの挑戦状
○【第5回】『東京レイヴンズ』作者・あざの耕平さんに聞いてみた
○【第6回】ラノベって女の子でも読めるの?
○【第7回】中二病でトラブルメーカーってなんなの?
○【第8回】教えて!大人でも楽しめるキャラクター小説
○【第9回】ラブコメはラノベの王道!?
~ブンガク部 部室~
「さて、桜井の幼馴染はそろそろかな?」
「……ああ、多分。もう、そろそろだと思いますよ」
「そうか、どんな奴なんだ。その石田君は?」
「どんな奴かというと、その……フレンドリーか、言い方を変えればお節介というか、そんな奴ですね~」
「なんだ、いい奴みたいじゃないか」
「まあ、ストレートにいえばそうなんですが、場合によってはウザイですよ、彼は……」
「え、ウザイ?」
「あ、呼んだ?」
「うわああああッ……!」
「お、お前、ど、どこから入ってきているんだ!?」
「え? 窓からだけど」
「見りゃあ、分かるよ! なんで窓から入ってくるの!? てか、ここ二階だぞ!」
「えーと、あの……こちらはどちらさまでしょうか!?」
「ああ、それは……」
「チワーッス! 俺、智樹の幼馴染の石田健ッス!」
「あわわ……」
「あっ、部長さんですか、今日はよろしくお願いします!」
「あ、ああ……(な、何かパワフルな奴がやって来たな)」
「で、今日は何をやるんだ、智樹?」
「今日は君が部に入るかどうかを話し合うんだよ!」
「……あはは、なんだか開始早々、ペースを彼らに持っていかれたような気がする(てか、もしかして今、僕さ……空気化してない?)」
「とりあえず、話し合うからここに座って!」
「……お、おう」
「……さて、では気を取り直して、じゃあ、話をはじめようか」
「はい、お願いします!」
「はあ~」
「そいえば、石田君はどんなお話がすきなの?」
「俺ですか、俺はゲーム作品を原作にしたラノベとか、他にはスピンオフやスピンアウト物がすきですね!」
「ああ、そういえば君はそういう原作からの番外編や外伝とかの本編と同じ媒体の派生作品が大好きだったよね」
「うん、めっちゃ好きだ!」
「そうなんだ、じゃあ君のオススメの作品を教えてくれないかな?」
「そうッすね、俺の好きなやつだとこの頃は……Fate/Apocryphaですかね」
「Fate? どっかで聞いたような……アレ?」
「ああ、あれですよ。前に田中先生がいつぞやのクイズであったFate/ Zeroとかのスピンアウト小説ですよ」
「ああ、あれか! どこかで聞いたような気がしたんだ。今、人気のFateシリーズ(※1)だよね」
「Fateシリーズ」(※1)
『Fate/Apocrypha』(東出祐一/TYPE-MOON BOOKS)
かつて、冬木と呼ばれる街では七人の魔術師と英霊たちによる聖杯戦争が執り行われていた。だが、第二次世界大戦の混乱に乗じて、とある魔術師が聖杯を強奪。数十年が経ち、その聖杯を象徴に掲げたユグドミレニア一族は魔術協会からの離反、組織の独立を宣言。怒れる魔術協会は刺客を送り込むが、彼らが召喚したサーヴァントによって返り討ちに遭う。サーヴァントに対抗するにはサーヴァント。聖杯戦争のシステムが変更され、七騎対七騎という空前絶後の規模の戦争が勃発したのだった――。 Fateシリーズはゲーム『Fate/stay night』から続く人気シリーズで、『Fate/Zero』(2011年アニメ化)や『Fata/EXTRA』などがある。『Fate/Apocrypha』はFateシリーズの“if” を描いたスピンアウト作品。
「そうですよ、中島さん! 俺、このシリーズが好きで色々読んだ事あるんですけど中でもこの作品は他と比べて王道展開で大好きです。神話とか伝説とかが好きな人にはお勧めですね」
「神話とか伝説というとどんなの?」
「主にジャンヌ・ダルクとかジークフリードやアストルフォなどの歴史的人物の伝承みたいなものですかね」
「へえ~」
「まあ、簡単に言って、有名な英雄たちが勢ぞろいして戦うバトルロワイヤルみたいな感じのお話ですよ」
「ふ~ん、じゃあ、他にもお勧めはあるかい?」
「他ですか、ならこれとかお勧めですよ、このペルソナ×探偵NAOTOですね!」
「ペルソナ? ……それって何?」
「ああ、中島先輩、ペルソナって言うのは昔から多くのファンを持つ、人気RPG(ロールプレイングゲーム)のペルソナシリーズ(※2)のことですよ、これはそのペルソナ4の登場人物、白鐘直斗を主人公にした物語なんです」
「ペルソナシリーズ」(※2)
『ペルソナ×探偵NAOTO』(間宮夏生/アスキー・メディアワークス)
稲羽市で起きた連続殺人事件から一年後。探偵王子こと白鐘直斗は旧知の刑事、蒼井瞳子から失踪事件の依頼をうけ八意市へと向かう。ここで直斗を待っていたのは自身に目覚めた新たなペルソナ「アマツミカボシ」と機械仕掛けの青年・黒神創世だった。直斗は創世と共に捜査に乗り出し、そして事件はマヨナカサイトという不穏なウェブサイトを巡る殺人事件へと発展していく。ペルソナシリーズはゲームブランド・ATLUSの人気RPGシリーズ。『ペルソナ×探偵NAOTO』はペルソナシリーズ4作目『ペルソナ4』(2011年アニメ化)から一年後が舞台の、サブキャラ白鐘直斗を主人公としたスピンオフ作品。
「なんだ、智樹。お前よく知ってんな!」
「そりゃあ、君と昔このシリーズをよく遊んだからね」
「ああ、そうだった、そうだった! まあ、このペルソナ×探偵NAOTOは主人公たちがペルソナという能力に目覚めて難事件に挑むお話なんですが、推理要素が強くて奥が深く探偵物としてもお勧めです!」
「へえ~、すごいんだな、ペルソナって」
「お、先輩も興味あります!? 何なら今度ペルソナをいくつか、貸しますけど」
「え、本当。ありがとう!」
「え~と、1~4まであるんですけど……」
「あー、はいはい、次にいきましょう、次に! ……で、他にお勧めは?」
「ふう、せっかちだなあ、智樹は……じゃあ、最後にこれでL change the Worldです!」
「おお、DEATH NOTE(※3)じゃん!」
「DEATH NOTE」(※3)
『L change the World』(M/集英社)
“そのノートに名前を書かれたものは死ぬ”という、人間の死を握る、死神のノート。そのノートを使い新世界の神になろうとした夜神月=キラと対峙し、大きな代償のもと事件を終結に導いた謎の天才探偵・L。命の選択をした彼に、新たな事件が立ちはだかる。事件の鍵を握る少女を守るため、残された23日間でLは最後の事件に挑む。Lが変わるのか、それとも世界が変わるのか? 『DEATH NOTE』は原作・大場つぐみと作画・小畑健による週刊少年ジャンプの漫画作品。『L change the World』は2006年に公開された実写映画の第3弾であり、Lを主人公としたスピンオフ作品で、ノベライズ版にはいくつかの追加要素が加えられている。
「あ、これなら僕も知っているよ」
「あ、中島さんも知ってます!」
「まあ、映画でちょっとね。DEATH NOTEのLを主人公にしたスピンオフ作品だよね」
「なら、もう一度、改めてこれを読んでみると面白いですよ。このノベルス版では映画にはない設定やシーンがいくつかあって映画を見た人でもお勧めですよ」
「へえ~、なら改めて読んでみようかな」
「先輩もDEATH NOTE好きなんですか?」
「有名だからね、特に僕はLファンだし、このL change the Worldはお気に入りだよ、でも小説があったなんて知らなかったよ」
「あざーすッ! 勧めてよかったです!」
「ふう、じゃあ、この辺で話をまとめようか」
「で、どうっすか! 俺、ブンガク部に入れます?」
「ふ~ん、どうしようかな~」
「先輩?」
「うん、そうだね。……桜井、君が決めなよ」
「え!?」
「僕は別に石田君がブンガク部にいても構わないよ。でも彼のことをよく知っているのは君だろう、なら最後は君が決めて上げなよ」
「え、でもいいんですか、僕が決めても?」
「いいよ、だって彼は君が見つけてきたんだからさ」
「は、はい! じゃあ、石田君……」
「お、おう!」
「……君を新たなブンガク部、部員に任命します!」
「……よ、よっしゃー!」
「入部おめでとう、石田君。これからよろしくね!」
「おう、こちらこそよろしくな、智樹! このブンガク部、一緒に盛り上げようぜ!!」
「もう、だからって子供みたいにはしゃぐなよ! 見てるこっちが恥ずかしいつーのッ!」
「あはは……なんだかブンガク部がにぎやかなになって来たかな!」
……つづく
次回予告
「こんにちは、中島優斗です!」
「同じく、桜井智樹です! そして……」
「新たなる新入部員、石田健ッス!」
「いや~、ようやく部員が増えてきたよ、よかった」
「ウッス! 二人ともよろしく! では……」
「次回のブンガクブもお楽しみに!」
「君たち、本当に仲いいな、あはは……」