母親を騙して新生児を売り飛ばす…! 人身売買大国・中国の実態

海外

2013/8/31

 中国では、子供の誘拐や人身売買が後を絶たない。7月、陝西省の病院で女性が出産したところ、医師は「赤ちゃんに先天的な障害がある」と母親や家族に告げ、死産として処置を任せるよう仕向けた。翌日、2人の男女が医師から2万1600元(約35万円)で新生児を買い取り、その後、3万元で転売した疑いがあるという。

 また以前にも、河南省の病院で、廊下の壁に「赤ちゃん売ります」と書かれた広告が見つかり、メディアが調査報道に乗り出した。広告主は、「男児なら3万6000元(約57万円)、女児なら2万4000元(約38万円)」と価格を提示。「赤ん坊は誘拐ではなく、すべて私生児。取引は絶対に安全」「手元に赤ん坊の在庫がないときは、最長8カ月待ってもらうこともある」などと答えているというから驚きだ。

 中国では、これまでにも似たような事件が起こっているが、それらは数ある人身売買事件の氷山の一角にすぎない。なぜこうした許されがたい問題が起こっているのか? 『中国、引き裂かれる母娘 一人っ子政策中国の国際養子縁組の真実』(シンラン:著、佐藤美奈子:訳/赤石書店)によると、一人っ子政策における影響がかなり大きいという。

 中国では、肉体労働に適していることから必然的に男児が優先される。加えて、古くから根付いている土地分配の制度でも、女性は男性より圧倒的に不利となる。男児は一家の財産の源なのだ。そのため、一部の貧しい農村では、第一子が女の子であった場合、不運にも見捨てられるか、さもなくば誕生時に窒息死させられることさえあるという。たとえ男児が産まれても、家族が育てられない2人目以降の“余分な”子どもの場合は、別の家族に養子に出されるか、売られることになるのだ。

 かけがえのない命に金額をつけて取引が行われる“人身売買”。そもそも人身売買のしくみとは、どのようなものなのか? 『世界中から人身売買がなくならないのはなぜ?』(小島優、原由利子/合同出版)では、その実態を解説している。

 まず、人身売買の目的は「搾取」である。これは、他人の売買からの搾取や、性的搾取、強制労働やあるいは奴隷的状態、さらには臓器摘出が含まれる。そして搾取の「手段」としては、威嚇や何らかの強制、詐欺、誘拐のほか、弱みにつけこんだり、親の同意を得るためにお金を渡すことが挙げられるという。子どもが働くことが当たり前になっているインドやアフリカ諸国では、親が借金のかたに子どもを売り渡し、生活のために強制労働させるのは“仕方がないこと”とされているのが現状だ。

 人身売買を行う業者は、その対象を探すためにニセの仕事情報や養子情報を流したり、海外で稼いだ経験のある人の出身地をまわり、直接勧誘する場合もあるという。インドネシアのある地域では、村長の指導のもとで定期的にそのような勧誘活動を行っていることも報告された。

 そして衝撃的なことに、日本は人身売買の受け入れ大国として知られている。経済的な理由で途上国から日本に移住して働きたいと思っている人が多いにもかかわらず、日本で正規の在留資格を得るのは狭き門。そのため、業者たちの「日本で働ける」という甘い言葉に騙されて入国し、当初の条件とはまったく違う法外な労働条件で働かされるのだ。

 本書では、人身売買は「一部の悪い人」だけの問題ではなく、日本の誰にでもつながる身近な問題だと指摘している。日本の性産業や労働市場に需要が、人身売買の温床になっていることも決して忘れてはならない。

はるか昔の話ではなく、今も世界中で行われている人身売買。この実態を私たちはどう変えていくことができるのか、考える必要があるだろう。

文=池田香織(verb)