「冷やし中華、始めました」はいつ終わる? 厳選された「ずんずん調査」が1冊に!

社会

公開日:2013/9/3

 ランチ時に食べていた冷やし中華を見て、ふと「冷やし中華っていつから始まって、いつ終わるんだろう?」と思ったことはないだろうか?

 店先にある「冷やし中華、始めました」の紙は、いつから貼られていたのか? スーツの上着がそろそろ暑いなと思った頃だったような気がするが、それがいつだったかは思い出せない……と、まず「始めました」の時期から思い出すことから始まり、9月はまだ暑いからあったような気がするけど、10月は果たしてあっただろうか、という「終わりました」の時期へと思考が移っていくが、最終的に「なんかそんなことを毎年考えているような気がするなぁ」と思っていたらそろそろ昼休み終了。慌てて冷やし中華をたいらげて会計し、午後の仕事へと向かう……なんてことになって、また来年まで忘れることになってしまうのだ。

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 しかし、そうした「これまで誰も調べなかったこと」に立ち向かった男がいた! それがコラムニストの堀井憲一郎氏だ。その堀井氏が調べに調べまくっていたのが『週刊文春』に1995年4月から2011年6月まで、17年間連載した人気コラム「ホリイのずんずん調査」だ。その偉業(?)が、このたび『ホリイのずんずん調査 かつて誰も調べなかった100の謎』(堀井憲一郎/文藝春秋)としてついに1冊になった! 全792回あるという「ホリイのずんずん調査」から著者が厳選した100のネタ(同じネタで数回分というものもあるので、実際は116回分を掲載)は、著者自身が「新しい発見をした」と思ったことばかりだそうだ。

 本書では「食べてみるの章」「外に出て調べるの章」「一生懸命調べるの章」「人に聞いてみるの章」「スポーツを計るの章」「テレビを数えるの章」「ルーツを探るの章」「歴史をひもとくの章」の全8章で構成され、そのネタを並べてみると「東海道五十三次を実際に歩いてみたところ」「12月29日に投函しても年賀状が元日に着くエリア着かないエリア」「エロメールによく使われる女性の名前ランキング」「いきなり銀座の高級寿司店に行って寿司を食べるといくらかかるか」「吉野家の“つゆだく”が許せなくて154店食べ歩いた話」「サッカーFKの壁で“股間を守る国、守らない国”」「携帯電話がいつ普及したのかを恋愛ドラマから見てみる」「日本の“祝祭日”がいろいろと変わっていくさま」など、どれも秀逸で(かといってどうでもいいような)これまで誰も調べなかったこと(ただ単に面倒だったからかもしれないが)を大まじめに検証、その謎が次々明らかにされていく!

 そして最初の「冷やし中華がいつ始まっていつ終わるか」だが、今ならネットで「冷やし中華 時期」と打ち込んで検索すれば、ある程度のことはわかる(ちなみにGoogleで検索してみたら、741,000件も出てきた)。しかし堀井氏は、地道に237件の中華料理店に電話をかけ、その時期をほぼ特定している。そしてその時期に始まる・終わる理由と、時期だけではない様々な理由から冷やし中華の運命が決まることを突き止めている(タレ次第、気分次第というところもあった!)。これはネット検索ではわからないことだ。

 ちなみに堀井氏は「ショートスパン」「ロングスパン」「とって出し」という3つのパターンをミックスして毎週の連載をこなしていたという。しかし時間をかけて調べたり、堀井氏が「これは!」と思ったネタが意外とウケが悪く、思いつきで半日でやっつけ調査したネタの反応が良かったということもあるそうだ。しかし膨大な時間と手間を費やして導き出された調査結果はとにかく面白く、分厚い500ページ超に凝縮された厳選ネタは、一読の価値アリだ!

文=成田全(ナリタタモツ)