星好き男子が語るウンチクがロマンチックすぎる!

BL

更新日:2014/4/14

 男性のほうが女性よりもロマンチストだとはよく言われるが、そのなかでも特に星好き男子のロマンチストっぷりは格別。『宇宙兄弟』(小山宙哉/講談社)に登場する天文学者の金子は、星空の夜、同じ天文学者であるシャロンに「僕が新しい星を見つけたときはまずその星に君の名前を付けることを約束しよう」と言ってプロポーズする。そして、きちんとその約束を果たすのだ。また、7月27日に発売された『壁の中の嘘と秘密』(高遠琉加:著、小椋ムク:イラスト/海王社)や『夜空のすみっこで、』(ハヤカワ ノジコ/大洋図書)、『星を泳ぐサカナ』(朝丘 戻:著、葛西リカコ:イラスト/フロンティアワークス)といったBL作品にも星好き男子たちが登場する。彼らのロマンチストぶりが発揮されているシチュエーションやセリフをどんなものだろうか。

 まず、高校の天文同好会で一緒だった先輩の須藤と後輩の星野が11年後に再会する『夜空のすみっこで、』。高校時代は、自分から「あれは?」と星を指さして聞いておきながら、必死に本をめくって探す星野に「必要ないだろ名前なんか」と言って笑っていた須藤。「名前なんて知らなくたって誰もが心をうばわれて魅入ってしまう。そういうもんだろ」と言いながら、「でもオレはこれだけじゃ足りない」。「オレはこの星とこの空をもっと近くで見たい」と言って、パイロットになる夢を語っていた。夢がパイロットだけでもなかなかのロマンチストだが、なりたい理由が「星を近くで見たいから」とは、ロマンチックの二乗だ。

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 そして、相手を星に見立てるというのも星好き男子にとってはあるあるのよう。星野が小学校の教師、須藤が保護者として再会してからも、星野のことを忘れられなかった彼は、一等星でもないたった1つ明るく輝く星を星野に見立てて手を伸ばし、ギュッと握りしめる。「あほらし」と言いながらもその握りしめた手をほどくことはできず、そっとキスしてふっと息を吹きかけるのだ。同じように、『星を泳ぐサカナ』でも、主人公の高校生である優太郎が、同じレンタルショップでバイトしている大学生の本田を星にたとえている。どの店員や客とも親しくしているようで、一定の距離を保っていた本田。そんな彼を見て、傍にいるのに「遠く感じた途端、星だ、と思った」のだ。どんなに女の人をとっかえひっかえしても、「好かれても好かれても、寂しそうな」本田は、「手の届かない夜空の隅でひとり孤独に瞬く、僕にとっての星」だと。優太郎は、日課としてベッドから星空を眺めるのだが、「隣り合う星とも遠く離れて交われない孤独な光に魅入っていると、本田さんを想い出した」。それに、本田に「好きな子とかいるの?」と聞かれると、「星みたいな人が、好きです」と答えるのだ。好きな人を聞かれて「星みたいな人」と答える人はなかなかいないし、遠回しな告白としては、ロマンチックすぎてかなりの読解力を求められる。

 そして星好き男子の恋愛は、星の力を借りて動いてゆくようだ。全寮制の名門男子校で自他ともに認めるチャラ男だった『壁の中の嘘と秘密』の香司は、クラスメイトで学年一の優等生だった昴を好きになり、彼の趣味だった天体観測に目覚める。なかなか自分には笑顔を向けてくれない昴の笑った顔を見ると「空に一番星を見つけたみたいに、ちょっと嬉しく」なるけど、「まだ満天の星じゃない」からともっと笑ってもらうためにがんばる。でも、ただロマンチストなだけじゃなく、星の力を借りて強引さものぞかせる香司。屋根の上でキスしようとしたときも「誰も見てないぜ? あ、織姫と彦星がうらやましそうに見てるかもな」と軽口をたたく。チャラさとロマンチストは紙一重でもあるので、その軽さも魅力的なのだろう。そのうえ、屋根裏部屋でペルセウス座流星群を見ながら初めてセックスした彼ら。こんなシチュエーションでセックスすること自体がもうすでにロマンチックだが、さらに「――この方が、星が見えるだろ」と言って昴をカウチに横たえる。そして、自分は潤んだ昴の瞳に映る星を見るのだ。

 少し疲れたな、癒されたいなと感じたら、ただ星を見上げるだけでなく、隣に星好き男子がいれば、より一層効果的かもしれない。

文=小里樹