じわじわ人気拡大中! おぞましくも不思議でオシャレな「寄生虫」図鑑

科学

2013/9/18

 シェイクスピアの戯曲『リチャード三世』で王位を狙う狡猾な策士として描かれた、15世紀のイングランド王、リチャード3世。昨年イギリス中部の都市レスターの駐車場で遺骨が発見されて話題となったが、その遺骨を分析していた研究チームが、腸があったとみられる骨盤部分の土壌から回虫の卵が複数見つかり、回虫が寄生していたことがわかったという報告を行ったそうだ。寄生虫というと日本ではあまり聞かなくなったイメージがあるが、アメリカの疾病対策センター(CDC)によると今も世界で最大12億人、全人口の約5人に1人が患っている感染症なんだそうだ。またマラリア、フィラリア、住血吸虫が「世界三大寄生虫病」といわれているという。

 そんな寄生虫を専門とした世界で唯一の研究博物館である「目黒寄生虫館」が初めて監修を担当した『寄生蟲図鑑 ふしぎな世界の住人たち』(スタジオ四畳半:著、公益財団法人目黒寄生虫館:監修/飛鳥新社)が8月に発売されたのだが、とある大型書店やアマゾンで品切れになるなど、じわじわと人気が広がっている。

 まず気になるのは装丁だ。グレーの厚紙で作られたケースの表面には穴が開いていて、本の一部が見えるようになっている。その本には古い図鑑を思わせるような明朝体で『寄生蟲図鑑』というタイトルが記されており、その下に同館のシンボルマークであるフタゴムシのイラストが配されているという、とても凝った作りになっている。そしてケースから本を出すと、カバーにはノミや回虫など様々なイラストがあり、その寄生虫の部分は厚みのあるシールが貼られたような凹凸加工が施されていて、寄生虫が持つ「気持ち悪い」「グロい」といったマイナスイメージを一切抱かせない、とても洒落たデザインになっている。また中で紹介される寄生虫も点描画で描かれるなど、こちらも昔の図鑑っぽい仕上がりになっていて、気持ち悪さはなく、ビジュアル本としても楽しめる。

 もちろん内容も充実。本書では「扁形動物」「線形動物」「節足動物」「刺胞動物」「原生生物」「植物・菌類」に分けて体長や分布、何に寄生するのかを分類し、生態などに関するわかりやすい解説があり、各寄生虫に「ひとことキャッチフレーズ」がある。例えば以前「ダイエットになる」と話題になったサナダムシは「脅威の体長十メートル、寄生虫界最大級の虫」というキャッチフレーズがあり、人に潜入すると約1ヵ月で成虫になること、不要な器官は退化して残っているのはほぼ生殖器だけで、数千ある体節ひとつひとつに精巣と卵巣があって生殖を行い、毎日100万個も卵を産む(!)こと、そしてダイエットには不向きな理由などが軽妙な文章で書かれている。そしてサナダムシの本物を見たいという人はぜひ目黒寄生虫館へ赴いて欲しいとある。

 ちなみにリチャード3世に寄生していた回虫は、古代ギリシャ時代から知られている寄生虫だったそうで、日本では第二次大戦後には国民のなんと70%に寄生していた国民病だったそうだ。しかし野菜の栽培に必要な肥料に人糞ではなく化学肥料が使われるようになり、水洗トイレが発達したことでほぼ駆逐された。しかし近年は海外から輸入された新鮮な野菜や、豚の糞尿を使用した有機野菜などから感染する例もあるそうで、回虫のひとことキャッチフレーズには「今後ともヨロシク……」とある。寄生虫が油断も隙もない存在であることは、今も昔も変わりないようだ。

 これら以外にも、とにかく珍妙で「なぜこんな進化をしたのか?」と首をひねりたくなる不思議で怪しい、そして美しささえ感じる寄生虫が数多く紹介されている本書。ただ虫によっては「ゾワッ」とすることがあるので、ダメな人は見ない方がいいです……。

文=成田全(ナリタタモツ)