「震災以降、日本人すべてが“このままじゃダメなんだな”ということをうっすらわかってる」――『人類資金』対談 福井晴敏×森山未來

文芸・カルチャー

2013/9/19

 原作・福井晴敏、監督・阪本順治という『亡国のイージス』コンビの最新作『人類資金』。物語の鍵となるのは占領下時代にGHQによって運用されたとされる 。本作は、時価数10兆円といわれるその金を盗み出すというバリバリのエンターテインメントでありつつ、“それを生きた金として、人類のために役立てると何ができるのか”という強いメッセージが込められた作品でもある。『ダ・ヴィンチ』10月号では、福井晴敏と、映画で、謎の男・Mの腹心となる石優樹を演じた森山未來との対談が実現した。

【福井】 この映画の脚本を書いてる途中で3・11があって、一度はもっと震災以降ってことに振り切れた脚本になったりしたんですよ。でも、だんだん自分たちの腹の中に落ちてくるにつれ、そういうことじゃないなって。経済を維持していくことと、人間の幸せを追求していくことのそりが合わなくなっている。この間の震災で、それが非常にわかりやすくなったと思うんです。

【森山】 確かにそうですよね。

【福井】 これまで「世界はこういう状況だから、ルールを変えよう」と言うためには、まず「こういう状況」がどういう状況なのかを説明しなくてはと思っていたんだけど、震災以降、日本人すべてが「このままじゃダメなんだな」ということをうっすらわかってる。前提を説明しなくても、共有できてるというのは、映画を創るうえでは語りやすくなったんじゃないかって。

【森山】 僕は、神戸の震災を経験しているのですが、あの時は人災的なものは、ほとんどなかったと思うんです。今回の津波ではないけれど、基本的には天災だったと。でもそれをどういうふうに咀嚼したらいいのか、ずっとわからずにいた。そうしたら何年か前に、仕事で震災にまつわる番組をやることになって、それは撮影中、本当に荒療治だったのですが、でもそこでかなり自分なりに語れる言葉ができたように思えたんです。もちろん東日本大震災で1万7000人もの方が亡くなったことに対して、うかつなことは言えないけど、遺された人間は生きていくしかないので。でも今回はややこしい問題がひとつ出てきてしまったので、話がこじれているというのはありますが。

【福井】 僕も3・11の後、真正面からそれについての話を書こうと思って『小説・震災後』を書いた。あの時『人類資金』のプロットもすでにあったけど、震災があって、何も手につかない。それこそ自分の言葉にならなかった。だったら、この状況を俺の中で落ち着かせるために本でも書くかと。『小説・震災後』は、ある意味『人類資金』をチューニングし直すために書いた作品だったんです。

 本誌対談では、このあと、森山未來キャスティングの理由や <世界のルールを変える> という壮大なテーマにどんな思いが込められているのか等、彼らの挑戦の軌跡が熱く語られている。読めば映画が観たくなること間違いなしのディープな内容だ。

取材・文=瀧 晴巳
(『ダ・ヴィンチ』10月号「文庫ダ・ヴィンチスペシャル なぜ、いま『人類資金』なのか」より)