なんとかなる? 磨きすぎた女子力の先にある現実とは

暮らし

更新日:2013/9/25

 今どき、女子が幸せに生きるために大切なものとは、いったい何か。結婚、出産、育児・仕事と、人生の命題が同時期に存在する女子層にとっての幸福は、「結婚」なのか、「真の自由」か、果たしてそれとも…?

 そんなしんどくも興味深い話題を真っ向から扱った本『女子会2.0』(「ジレンマ+」編集部/NHK出版)は、NHK Eテレ『新世代が解く! ニッポンのジレンマ』の連動サイト『いま、ここから考える ジレンマ+』で企画された座談会、「ジレンマ女子会」を書籍化したもの。各方面からひっぱりだこの若き論客、古市憲寿氏をオブザーバーに、社会学者の千田有紀さん、水無田気流さん、女性誌ライターの西森路代さんら気鋭の女性論客が集まり“女子会”スタイルで、ゆるゆると言いたい放題。本の帯には「磨きすぎた『女子力』はもはや妖刀である」との恐ろしげなフレーズが。では、女子力アップの先に待っているものは何であるのか、さっそく見てみよう。 

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■ 第1章「結婚で幸せになれますか?」
 結婚・出産後も仕事を続けるワーキングマザーが増加し、ライフコースの選択肢が増えたと言われる一方で、現在学生である女子の間では、むしろ専業主婦志向が高まっているという。しかし哀しいかな今の日本の雇用環境では、正規雇用の男性と結婚して専業主婦になるというオプション自体が、初めから阻まれている。そして当の女子たちも、そのことを察している。

 そうした背景から昨今の結婚観として、自分と同水準の“水平婚”または“同類婚”志向が派生した。しかし、女性のほうが年収が多い「専業主夫カップル」に関する研究発表から、自分の資産を結婚で減らしたくないという、男性サイドの新たなニーズも発覚。白一点の古市氏も座談会中、「自分も上昇婚で階層上昇を図りたい」と、今どき男子の意外な心理をかいまみせる。

 専業主婦をターゲットとする雑誌『VERY』(光文社)を通した、ジェンダー論に詳しい石崎裕子氏の論考によれば、専業主婦にも階層による序列が存在し、しかも専業主婦を選択すれば、夫や子どもを通してしか自己承認の手段を見出せない状況に陥るリスクがあるという。結婚が困難になり、結婚してもその幸せは必ずしも盤石ではない。それでは、世の女子たちはどうすれば幸せになれるのだろうか。

■第2章「“女子力”アップの果てに」
 現在、世間で「女子力」とされているものの正体について、水無田氏は「たとえば女子会で、女子向けにひたすら“素敵な私”をアピールすることで、自家中毒を起こしているような切なさがある」とバッサリ切っている。

 “女子力を高めさえすれば、なんとかなるかも?”と、自己啓発的なマインドで外見やセンス、性格磨きに励むのだが、実はそのアグレッシブな女子力は引きさかれている。男子が結婚相手に求めるものとして、「共稼ぎ」や「財力」を期待していることは国立社会保障・人口問題研究所の「求めるライフコース」(2010年)における男女の回答差からも見てとれる。選ばれる階層に上昇したいのであれば、中途ハンパに女子力を高めるよりも、勉強したほうが近道なのでは、と千田氏。女子力向上の果てにいきついた状況として、理想の結婚について男女間で意識のズレが生じている、お寒い現実が示唆されたのである。

■第3章「真に“自由”になるために」
 それでは未来はどうなるのか。話は「自分磨きばかりしていると、磨きすぎて相手がいなくなる。名刀ではない妖刀にはなるべからず」というコワイ展開に。文末にある少子化ジャーナリスト白河桃子氏の論考では、“産めず”“稼げず”の「モヤモヤ女子に捧ぐ~不確定な人生を生き抜くための“武器”4か条~」として、次の4つが挙げられている。

(1)男性に頼らない自活女子をめざし、
(2)専業主婦の母を見習わず、
(3)「就」「婚」「妊」の3つについて、タイムリミットを設定し逆算して活動し、
(4)貧困女子の防止策をもつこと。

 自活すると決めた元気な女性たちが増えれば、婚姻状況や社会も、少しずつ動いて変わっていくだろうというわけだ。

 白河氏の言うように、こうすれば幸せになるという唯一無二の正解や絶対法則はない。人生の豊かさを決めるのは自分自身であり、幸福感とはあくまで個人の主観によるものが大きい。こんなご時勢を生き抜く女子にとって、前述の4か条を携えつつ、人とは比較しない幸福感をもつこともまた、解き放たれるひとつの策ではないだろうか。

文=タニハタマユミ