吉祥寺は本当に“住みたい街”なのか?

暮らし

更新日:2013/9/30

 職場でこんな会話が飛び交っている。

「私、どうしても住所に“吉祥寺”と入っている場所に住みたいって、不動産屋にお願いして、部屋を借りたんですよ」
「ウチの住所に吉祥寺って文字が入ってるのを見て、娘の友達が“すごい、吉祥寺なの? 遊びに行ってもいい?”と言ったのよ」

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今や、ブームを越えてブランドと化している「住みたい街ナンバー1・吉祥寺」。

 週末ともなればJR&京王線の吉祥寺駅を中心としたエリアは人で溢れかえり、普通に歩くのもままならないほどのにぎわいを見せる“吉祥寺”だけれども──果たして、吉祥寺の何に人は惹かれるのか? 本当に吉祥寺は“住みたい街”にふさわしい魅力を持っているのか?

 そんな吉祥寺のことを知るには、吉祥寺のある武蔵野市(吉祥寺市は存在しないのです)の市民目線で語られた『これでいいのか東京都武蔵野市三鷹市』(鈴木士郎/マイクロマガジン社)がオススメ。この本は、街の良いところも不満なところも書かれている。その一例をあげてみると……。

■良いところ
『人種』

ビンボーな若者層からお金持ちな富裕層まで様々な“人種”が暮らしており、スーパーも庶民的な店から高級店まで揃っている。

『インフラ』
JR中央線・総武線、京王線のみならず、JRに乗り入れしている地下鉄東西線もある上、少し先まで行けば荻窪からは地下鉄丸の内線にも乗れる。駅前からはバスも各方面に多数出ており、とにかく交通の便が良い。

『住居』
高級なイメージもある街だが、案外、安い穴場的なアパートも探せばある。もちろん、ナウでヤングでトレンディな部屋には、それ相応のオカネが必要ですが。

『自然』
井の頭公園を始めとして、とにかく緑や自然、公園が多い。自然に配慮しつつ整備された街はとても利便性が高い。

■不満なところ
『生活・社会問題』
(1)役所が遠い
最寄りの三鷹駅からバスで10分ほどのところに武蔵野市の市役所はある。歩いたら30分くらいはかかるというよろしくない立地。
(2)ゴミ出しが有料
スーパーやコンビニなどで専用のゴミ袋を購入して、ゴミを捨てなくてはならない。ゴミ袋は10枚セットで、5リッター=100円、10リッター=200円、20リッター=400円、40リッター=800円(20、40はバラ売りもある)。

──と、こんな感じで、住んでみないとわからない情報が詰まっている。ただし、これらの良い点も悪い点も、筆者に言わせると、一長一短。
街が人気であるということは、住民以外の人々が大勢やってくるわけで、生活圏に吉祥寺の街があろうものなら、土日祝日は混み混みで、ちょっとした買い物もままならないし、以前なら簡単に止められた自転車やバイクも駐輪場がどこも満車。自然豊かな井の頭公園だって、お花見の季節になれば酔っぱらいとゴミとで騒音と悪臭に悩まされる。

 逆に、市役所は遠いとはいえ、市政センターは駅に近いところにちゃんとあるし、ゴミ袋が有料だから、ゴミの減量や分別を意識するようになる。落ち葉やプラゴミは無料で回収してくれるし、街の清掃も行き届いていて、クリーンな生活環境が保たれている。

 結局のところ、良いも悪いもリモコン次第ならぬ、人間次第。住めば都とはよく言ったもの。前知識なしにイメージだけで飛び込むのも良し、この本を読んで多角的に考えるもよし。同じ武蔵野市民として筆者が間違いなく言えることは──「吉祥寺が近くにあればすべての用は事足りる」ということ。憧れがあるのなら、住んでみるべし。

 ちなみに、「吉祥寺」と住所に付くのは、吉祥寺本町、吉祥寺北町、吉祥寺東町、吉祥寺南町の4つだけ。同じエリアに「中町」というのがあるけれど、地名を決める際、中町の住民の皆さんは「別に吉祥寺付けなくていいよ」と言ったそうで。住所の表記にこだわるあなたは、ご注意あれ。

文=水陶マコト