フワッとやわらかな“食べるパワースポット” 「伊勢うどん」がもつポテンシャルとは?

食・料理

更新日:2013/10/3

 20年に一度の遷宮を迎え、全国から続々と参拝者が詰めかけている伊勢神宮。テレビや雑誌でも、遷宮を記念し伊勢の観光スポットや特産品がしばしば紹介されているが、そのなかでも、ひときわ異彩を放っているのが、伊勢市のローカルフード「伊勢うどん」である。

 一般に「美味しいうどんの条件」とされる、ツルツルシコシコとした食感…とは真逆の、フワッとした掴みどころのない麺に、甘辛系のタレを絡めて食べるのが、伊勢うどんのフォーマット。とはいえ「元祖」や「本家」的存在があるわけではなく、伊勢市内でも載せる具や風味、冷温含めた食べ方など、そのバリエーションはさまざま。つい最近(昭和40年代)まで、自分たちが食べているうどんがユニークなものとは気づかず、ただ「うどん」と呼ばれていた…などなど、とにかく全体的にフワッとして掴みどころのない点が、その大きな特徴だ。

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 「大人養成講座」シリーズなどで知られるコラムニスト・石原壮一郎氏も、摩訶不思議な伊勢うどんの魅力に魂を捧げたひとり。「伊勢うどん友の会」なる組織を立ち上げ、イベント開催などの普及活動を行うだけでなく、最近書いたコラムの大半を、テーマに関わらず、ほぼ強引に伊勢うどんと結び付けまとめてしまう熱の入れよう。その執念が実り、先日ついに伊勢市麺類飲食業組合と三重県製麺協同組合が任命する「伊勢うどん大使」に就任してしまった。そしてこの9月、満を持して発行されたのが『食べるパワースポット「伊勢うどん」全国制覇への道』(扶桑社)なのである。

 伊勢うどんの本と聞き、上述したような歴史や特徴、名店紹介といったガイドブックをイメージする人が大半だと思うのだが…読んでビックリ。もちろん、ガイドブック的内容も十分用意されてはいるものの、それと同じボリュームで、石原氏の伊勢うどんへの“愛”が書き綴られているのだ。常識で考えれば、このパートはせいぜい「まえがき」程度でおさえるべきもの。“大人力”の家元として知られる石原氏が何故、常識を破ってしまったのか? 本人に直撃したところ…。

「もちろん当初はガイドブック的内容を想定していたんです。しかし、伊勢うどんが持つ不思議なパワーを最大限に伝えるには、この1年あまり、ひとりのコラムニストが常軌を逸した情熱を注いだ過程を振り返るのが、いちばん効果的ではないかという結論に達し、このような構成をとらせていただきました」

 とのお答え。確かに、このパートによって、石原氏の“常軌を逸した”情熱と行動がリアルに追体験できるようになっており、気が付けば自分の内面にも、伊勢うどんへのただならぬ興味と情熱が湧き上がってくる(ような気がしてならない)。逆にいえば、ひとりの人間をここまで情熱的に突き動かしてしまうパワーが、伊勢うどんにあることが、このパートを読むことで明らかになる(ような気がしてならない)のだ。

「近年、日本はどんどん世知辛くなっています。他人に対して、もっとやさしく、もっと寛容になれたら、お互いに楽なはず。“うどんは強いコシあってこそ”と思い込んでいる人が、伊勢うどんを知ることで“こういうやわらかいうどんもアリかも”と考えるようになれば、そこに違う価値観を受け入れるやさしさが生まれます。フワフワとやわらなかコシを持つ 伊勢うどんは、いわば日本人の心を癒す“食べるパワースポット”なのです」

 とまで語る石原氏。ものが伊勢うどんだけに、フワッとしたロジックに包み込まれている感もあるが、これだけ思索を広げることができる食べ物が登場したのは、結構久々かも。ともあれ、まずは体験すること。最近では都内をはじめ、伊勢市以外でも伊勢うどんを提供するお店が増えているほか、通販でのお取り寄せも可能。自分の常識や固定観念を突破するだけのインパクトは、十分にあるはずだ。念のために言っておくと、ホント美味しいんですからね!!

文=石井敏ろ饂飩

■伊勢うどんイベント情報(1)
台風で延期となった伊勢うどんイベント
待望の振替公演決定!

「食べるパワースポット[伊勢うどん]全国制覇への道」出版記念!
【振替公演】伊勢うどん&三重のうまいもの祭

日時:2013年10月5日 17時30分会場 18時開演
会場:東京カルチャーカルチャー
前売り券2000円 当日券2500円(ミニ伊勢うどん付/お土産付)

その他、詳しい情報はこちらまで。

■伊勢うどんイベント情報(2)
「食べるパワースポット! 伊勢うどん満喫講座」も開催決定!

日時:2013年10月15日 18時30分開演
会場:日本橋・三重テラス

その他、詳しい情報はこちらまで。