妖マンガの決定版!妖魔と青年・律の出会いの物語

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更新日:2013/10/16

今市子さんの商業誌デビューは1993年。その2年後、95年に『百鬼夜行抄』の連載は始まった。当時から変わらぬ、いやつねに進化を続ける完璧な幻想的世界観。その創作の舞台裏とは?

わからないから恐ろしい
妖魔の心の有様

いま・いちこ●富山県出身。1993年デビュー。現在『Nemuki+』で『百鬼夜行抄』を連載中。2006年、同作で文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞。他に、『文鳥様と私』『砂の上の楽園』などのコミックスがある。

 まずは、『百鬼夜行抄』連載100話達成とデビュー20周年おめでとうございます! その感想は?

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「目の前の締め切りをどうにかこなしてきただけなので、いつのまにかそんなになると知って軽くショックを受けてます。1巻の最初にある『精進おとしの客』は、読み切りだったんです。それが担当さんに評判がよくて、【意外とそういうほうが向いてるのかも】となんとなく連載を始めたら、現在に至りました。子どもの頃は『ゲゲゲの鬼太郎』や『どろろ』が好きでしたが、もともとは自分で妖を描こうとはあまり考えていなかったんですよね」

「精進おとし〜」は、律の祖父・蝸牛の初七日の夜のエピソード。意外と向いているどころか、今さんほど妖魔の姿と心を独創的かつ自然に描ける作家はそういまい。そのアイデアの源は?

「昔はネタ帳を作っていましたが、もう使いつくしてしまいました。ありがちですが、お風呂やバス、電車の中で考えます。妖魔が生まれた理由や目的をあまり詳しく描くと、どんどん怖くなくなってしまうので、ざっくりぼんやりとわからない部分を残すようにしたいと思っています。姿がはっきりしないものが一番怖いですよね」

妖魔が棲む世界もまた完璧だ。飯嶋家の日本家屋、庭の木々、律が訪れる山村。郷愁と憧れがないまぜになった“和”の風景だ。

いつも味方、でも人三化七
飯嶋家の物語

「4回くらいしか着物を着たことがないんですけど、和物には憧れます。私は富山出身で田舎では木が多く、しっとりした木陰や苔の美しさ、湿度は感覚として忘れないようにしてたいと思っています」

『百鬼夜行抄』は律とその家族の人生の物語でもある。一人一人の歴史と互いの関係性が、とても大切に語られている。

「律と私は家族構成が似ています。外でどんなに怖いことや嫌なことがあっても、家族だけはいつも味方。家に帰ればリセットできる。それが家族のいいところだと思います。でも実は人三化七で、ちょっと油断できない同志でもある。とくに若い頃の蝸牛を描くのは好きです。周りでたくさん人が死んで、自身も多分いっぱいひどいことをしている。まだ守るものがあまりないので、思い切った行動にも出られる。まだいろいろ秘密がありそうですよね」

 ファンとして気になるのは、律と司。ずばり恋愛の可能性は?

「律と司は、恋というより姉弟の関係なんですよ。二人一緒になって力を発揮するような」

 おお、そうなんですね! 邪な質問にご回答ありがとうございます。最後に最新22巻と今後の見所をうかがった。

「長らく行方不明だった伯父の開がやっと帰ってきます。護法神の契約が解け、今のところ飯嶋家の居候状態の青嵐も、どうにか定位置を決めたいと思います。今後ともよろしくお願いします」
 

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