歪んだ三角関係にゾクゾクする! 賛否両論が飛び交う新感覚BL

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公開日:2013/10/6

 BLにおいて、三角関係モノと聞くとどんなものを思い浮かべるだろう? 普通、攻2人は敵対心を持っているけど受のことは大好き。受もそんな攻2人が好きだから、どちらか一方を選ぶことができず、三角関係に陥ってしまうというパターンが多い。しかし、9月17日に発売された『チョコストロベリーバニラ』(彩景でりこ/竹書房)は、そんな三角関係モノとは一味違うのだ。

 まず、攻のひとりである拾は、気に入ったものは何でも幼なじみのタケと“半分こ”しなければ気がすまない。だから、お菓子や宝物どころか、初めて付き合った相手にも「俺の事好きって言うんならタケちゃんごと好きになってよ」と言い放つ。同窓会で再会し、付き合うことになったミネこと峰岸克也にも「三人で気持ちよくなろうよ」と言い、拒否されたら「ごめんだけどもうここにはこない」とあっさり別れを切り出そうとするのだ。しかし、だんだんタケとミネがキスしたり、仲良くなっていくところを見るのが嫌になってくる。大切なものをタケに「見せびらかせたいだけ」だったのに、タケとエッチしてるときの方が気持ち良さそうだったりして、ようやく「好きな人は半分こしちゃダメ」だと気づく。でも、気づいたところでどちらも手離せないのだ。

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 また、もうひとりの攻であるタケこと多田健は、拾の喜ぶ顔が見たくて与えられるものを受け取ってきた。別に、自分から欲しいと思ったことはなかったけど、拾が喜ぶ事が嬉しかったし、拾の大切なものだから自分もそれを大切にできた。だから、ミネとの不思議な三角関係も受け入れていたし、本当に拾のことが好きなミネのことをかわいいと思い始めていた。しかし、それらはすべて拾のものであって、自分のものではなかったのだが、ミネに「お前らが俺を半分こにするってんなら俺だってしてもいいだろ」と言われて気づくのだ。「差し出されたものの半分は自分のものにしていいのか」ということに。それまではずっと拾に遠慮していたのに、それからはミネに歯形をつけたり顔にかけたりと、自分本位な行為をするようになる。

 そして、高校時代から愛想も悪く、人と接してなかったミネは、唯一自分に話しかけてくれた拾のことが好きだった。だから、同窓会で再会して自分の気持ちがバレても「好きでいていい」「嬉しい」と言ってもらえて、「付き合おっか」と言われて死ぬほど嬉しかった。どんな無茶な要求も受け入れるくらい、拾のことが好きでたまらなかったのだ。初めは、タケのことが嫌いで仕方なかったけど、「拾が言うなら」と言って次第にタケごと受け入れるようになる。嫌々だったただいまのチューだって、拾がいないときでさえ当たり前のようにタケにもするようになるのだ。そして、そのうち何でかタケのこともそんなに嫌いじゃなくなり、「拾の大事な奴だしな」と受け入れていく。

 誰かひとりでもズレてしまえば崩れてしまうような不安定な関係の彼らだが、誰が欠けても成り立たない。3人で絶妙なバランスを保っている。歪でありながら、あくまでも3人で幸せになる方向を模索する彼らは、今後のBL界に新たな三角関係の形を示しているのかもしれない。

文=小里樹