“いくえみ男子”の人気は、毒のようなシビアなセリフにあり!?

マンガ・アニメ

2013/10/9

 10月26日に初日を迎える映画『潔く柔く』。同作は長澤まさみが主演を務めるが、文系女子の多くは男性キャラクターのキャストに注目している。というのも、映画の原作は、少女マンガの名手・いくえみ綾の同名マンガ。いくえみ作品最大の武器と言われるのは、ファンの間で「いくえみ男子」と呼ばれる男性キャラクターたちだからだ。

 いくえみ男子は、無造作ヘアにゆるっとしたラインのファッション、大きな口でニカッと笑う姿など、現実にいそうな外見が魅力のひとつ。さらに読者の心をキュンとさせるのは、時にボソっと、時に訴えるように放つ言葉の強さだと言われている。では実際にどんな言葉が女子の心を鷲掴みにするのか。いくえみ作品の名言を集めた『いくえみ男子 ときどき女子 Bitter Sweet Voices いくえみ綾 名言集』(いくえみ綾/ホーム社)をもとに、いくえみ男子の人気を紐解いてみよう。

 まずなんと言っても、男子ゆえの単純さ、無邪気さに支えられたセリフが読んでいて気持ちがいい。恋や人生を複雑に考えがちな女子にとっては、その単純な言葉に救われる瞬間がある。その代表例が、亡くなった人への想いを捨てきれない女性に放ったこのセリフ。

「死んだ初恋の人って誰? 教えて 俺似てんの? その人に 上等 代わり上等 大丈夫」

 また、ここぞという時の男らしさもいくえみ男子の特長のひとつ。普段は優柔不断だったり、優し過ぎて女子に圧倒されたりと情けない一面が多いものの、

「なんかあったら……なんかなくても オレとか電話していーから 何時(いつ)でも」
「オレの名前呼んで 下の名前 助けに行くから」

 これを言われて、ときめかない女子はいないだろう。キメキメのセリフではなく、生々しい言葉が読者の想像をよりリアルにしてくれる。

 そして、いくえみ男子の真骨頂といえば、相手の心をえぐるような、ひりつく一言。本書の中でもいくえみ自身が男性キャラクターについて「毒がないと、つまらなくなっちゃいますよね」「男の子の毒の部分が女の子に刺さって、やっと話が回り出す」と語っているように、時には読者の心にまで突き刺さるような鋭いひとことを発することが多い。例えば過去の言動のせいで罪悪感に苦しむキャラクターに対し、

「言っとくけどね~ なくなんないよ そんなもの 一生抱えていきてくんだよ 残念だな」

 と簡単に相手に同情するのではなく、現実に向き合わせるようなシビアなひとことが投げかけられる。そしてその厳しさは、時にはいくえみ男子自身にも向けられる。

「俺ねえ ふられるの待ってんだ ちゃんと あの人の口から ききたいんだ」

 甘い恋愛ストーリーだけでなく、人間の本質を描くいくえみ作品ならではのビターな魅力がここにある。

 『潔く柔く』では、岡田将生や高良健吾、中村蒼ら演技力に定評のある若手俳優がいくえみ男子を演じる。彼らがどんな表情で名セリフを放つのか。原作と違った魅力が生まれそうだ。