ツンデレ半妖娘や人喰い怪人……妖怪マンガがブーム!?

アニメ・マンガ

2013/10/10

 妖怪や八百万(やおよろず)の神――彼らは日本文化の象徴の一つだ。古くから伝わる彼らの物語は、日本人の心の琴線に触れる。マンガ界でも彼らはつねにヒーローであり、とくに近年、注目の秀作が続々と誕生している。ツンデレ半妖令嬢やジャージ姿の武神、人を喰う怪人。伝統の美を継承し、そこに現代的進化を融合させたマンガを『ダ・ヴィンチ』11月号では徹底紹介している。

 妖怪・妖マンガは、つねに人気ジャンルであり続けている。数年前から何度目かの水木しげるブームが訪れ、『夏目友人帳』や『陰陽師』など大ヒット作も数えきれない。下記は近年の大注目作品だ。伝統的な妖や霊現象を現代的に表現し、斬新な輝きを放っている。『妖狐×僕SS』は、虚勢癖のある凜々蝶と彼女を慕いすぎる御狐神の恋愛がかわいい。ファッションも印象的で、コスプレも人気だ。『向ヒ兎堂日記』と『おとめ妖怪 ざくろ』は、文明開化期に重ねた世界観が趣深く、浪漫漂う。『とこよかくりよ』は死者の魂と対峙する獏人の掃除法がすごい迫力だ。

 こういった設定やキャラクターの素晴らしさに加え、4作品には決定的な魅力がある。

 それは、「自己とは何か」という本質的な問いだ。凛々蝶は、家柄を除けば自分は何もないという心の弱さに悩み、ざくろは半妖として差別される悲しみに耐えている。

 彼らは人ではない。しかし彼らの抱える自己への不安は、私たちのそれと同じだ。私たちも、他者との違和感や理解されない寂しさを抱えている。そして、だからこそ自分を変えようと決意する凜々蝶や、総角とともに闘いに向かうざくろの強さに励まされる。

 妖マンガは異質な彼岸の世界を描くものではない。私たち自身の心の物語なのだ。

■『妖狐×僕SS いぬぼくシークレットサービス』(1~9巻)藤原ここあ
スクウェア・エニックス ガンガンC JOKER 各440円
大財閥の令嬢・凜々蝶(りりちよ)は、妖怪の“先祖返り”。家柄でしか判断されない寂しさから、いつも虚勢を張っていた。しかし、先祖返りが集う「妖館」でSSの御狐神(みけつかみ)と出会う。初めて自分を理解してくれた彼に強く惹かれるが、百鬼夜行の危機が迫り!?

■『とこよかくりよ』(1巻)伊藤 静
講談社モーニングKC 730円
高田不動産の仕事を請け負う蓮は、「獏人(ばくと)」の一族。“ワケあり”物件専門の掃除屋。死後、この世に未練や執着を遺して動けなくなった魂の扉をこじ開け、対峙する。原稿を書き続ける女小説家、食べ続ける男……。禍々しくも美しい人の心の深淵に触れる!

■『向ヒ兎堂日記(むかいうさぎどうにっき) 』(1~2巻)鷹野 久
新潮社バンチC 各580円
妖怪を消そうとする条例が施行された文明開化の世。貸本屋の伊織は、化狸の千代と猫又の銀らとともに、妖怪の悩みを聞くよろず相談所をひっそり営んでいた。家出した座敷童子や提灯をなくした雨降小僧……。解決に奔走する伊織だが、彼にも秘められた過去があった。

■『おとめ妖怪 ざくろ』(1~8巻)星野リリィ
幻冬舎コミックスバーズC 各620円
妖人(妖怪)と人が共存する文明開化の世、妖人絡みの事件を解決する「妖人省」が設立された。半妖の少女ざくろと陸軍少尉の総角(あげまき)はパートナーとして働くことに。実は妖人が怖い総角だが、しだいにざくろが抱える本当の気持ちを理解するようになり……。

構成・取材・文=松井美緒
(『ダ・ヴィンチ』11月号「コミック ダ・ヴィンチ」より)