春キャベツ、新ジャガイモは旬じゃない!? 野菜の旬を正しく知ろう

食・料理

公開日:2013/10/28

 ロールキャベツはただタネをキャベツで巻けばいいというものではない。キャベツはあらかじめ下茹でしてやわらかくしたり、芯の硬いところを薄く削いだりして巻きやすくしてから巻かないといけない。ところがまれにそうやって下ごしらえをしたにも関わらず異常に巻きにくいキャベツがある。最初はゆで方が足りなかったのかなと思っていたのだが、あるとき巻きにくいキャベツは“春キャベツ”だと気づいた。しかしなぜ“春キャベツ”で作るロールキャベツが失敗するのか、疑問は残ったままだった。だが、八百屋歴34年、築地御厨店主・内田悟さんの著書『間違いだらけの野菜選び』(角川書店)でその疑問は解決した。それはキャベツの旬が春ではなかったからだった。

 本当はキャベツの旬は冬。“春キャベツ”は季節はずれで、「巻きに締まりがなく、葉がぱたぱたして」いて、「葉脈に規則性がなく、大きく乱れて」いるというのだ。そして早く育てるために肥料を多く与えられているせいで雨が多くても成長を続け水分が多いキャベツになる。それが柔らかさにも繋がっているのだが、葉が大きく乱れて波打ってしまう。それがロールキャベツには向いていなかったのだ。

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 おそらくキャベツが旬を迎える冬に作れば失敗も少ないのだろう。著者の内田さんはとにかく旬にこだわる。旬の野菜の持つ生命力のある力強さを味わってほしいと説く。では具体的には何の野菜がいつ旬を迎えるのだろうか。

 1年中気軽に買うことができるピーマンは原産地が中南米の熱帯地方なので旬は夏。ナスとキュウリも夏。この3種類に共通しているのは枝にぶら下がる野菜だということだ。

 反対に冬の野菜は土に潜るものが多いという。大根、ジャガイモなどがそれにあたる(新ジャガイモは春先)。

 意外だったのはトマトが夏ではなく春先がいちばんおいしいということ。原産地はアンデスの山岳地帯のため、もともと高温多湿を嫌うということで実は夏は苦手。春先のトマトは夏のものより「濃厚でジューシーで格段に美味しい」のだそうだ。

 本書では肥料や農薬を使わないに越したことはないとしながらも、それらが使われたものでも旬のものなら食べるようにすすめている。それは「旬の野菜は、自分にとって不必要な成分は自力で掃き出す生命力がある」からだという。旬の野菜の生命力はそれほど強く、そしてその生命力の強い旬の野菜を食べることは健康を守ることにも繋がっていくのだ。

 しかし、スーパーには季節に関係なく野菜は並び続ける。となれば、自分たちで野菜の旬を正しく知っておく必要がある。本書では、立春や夏至、大寒などの二十四節気に合わせた旬の野菜を掲載し、さらに旬の野菜の時期を「走り」「盛り」「名残」と3つに分けて、それぞれの時期におすすめ料理方法を紹介している。南北に長い日本では産地によって旬の時期が少しずつずれてくる。そこをうまく利用すると、1年を通して旬の野菜を上手に食べていけるということだ。

 日々の献立を考えるときに、肉にするのか魚にするのか、ご飯にするのか麺にするのかということは考えても、野菜は少し後回しになりがち。これからは旬の野菜を中心に考えるのも悪くないかもしれない。

文=村上トモキ