人気!? の病院食を作る新卒の「給食のおばさん」奮戦記
更新日:2013/10/30
病院食と聞いて何をイメージしますか?
「マズイ」「質素」「味が薄い」
とかくマイナスイメージばかりが浮かぶあなた。ちょっと情報にうといんじゃないですか?
“病院食のレシピ本”は今や、Amazonの料理本ランキング上位の常連さんです。「体脂肪計タニタの社員食堂」が社員食堂のイメージを変えたように、今どきの“病院食”はクオリティも見た目も上がり、健康食としても注目されているのです。
とある調査によれば、病院食レシピ本ベスト5は次の通り。
1位 『国循の美味しい! かるしおレシピ』
2位 『せんぽ東京高輪病院500kcal台のけんこう』
3位 『聖路加国際病院の愛情健康レシピ』
4位 『亀田総合病院の「血圧が高め」の人のためのおいしい減塩レシピ』
5位 『ホテルシェフと大学病院の管理栄養士が考えた おいしくやせる480kcalのレシピ』
(2013年1月1日~10月24日 WIN+調べ)
パラッと本をめくっただけでも、「これのどこが病院食?」と思っちゃう美味しそうな料理が目に飛び込んで来ますが、レシピを見れば確かな違いがわかります。例えば、国立循環器病研究センターで出される料理のレシピをまとめた『国循の美味しい! かるしおレシピ』では、その名の通り「塩分を極力減らす」ことに特化して味付けが工夫されていますし、3位の『聖路加国際病院の愛情健康レシピ』では、500kcal代という低カロリーながら、彩りも鮮やかな複数の惣菜を食べられるメニューが紹介されたりしているのです。
では、そんな素敵な病院食──給食を作っているのはどんな人たちなのか? 知っていそうで知らない、気になるようで気にしたこともなかった病院給食の裏側、調理の戦場に飛び込んじゃったのが松山ルミさん。新卒女子!?
『新卒で“給食のおばさん”になりました 女の園は敵だらけ』(メディアファクトリー)には、調理師専門学校を卒業後、20代前半で“給食のおばさん”デビューした松山さんの汗と涙の日々が描かれています。
「B型は大嫌い」という職場のボスおばさんや、定年間近の天然キャラなおばさん、栄養士さんなど、ひとクセもふたクセもある先輩たちの中で、毎日約200人分x3食を作るのが、舞台となる梅沢病院の給食センターのミッション。
メニューは栄養士さんが考えてくれるし、おばさんたちはレシピどおりに調理すればいいだけなのだから、そんなに大変? と思うかもしれません。でも、よーく考えてみてください。200人分の食材ってどんだけ? 肉じゃがに使うジャガイモが1人前で1個だとしても、単純に200個。洗って皮むきしてカットして……何分かかる? いや、何分かけていい? 給食である以上、調理から盛り付け~配膳までのすべてを受け持つおばさんたちに与えられた時間は、例えば昼食の場合、朝9時~12時までと考えても3時間しかないのです。
もちろん給食センター用の調理マシンも備えられているけれど、少しでも手順を間違えば食事の時間に間に合わなくなってしまうし、同じメニューにも、「通常食」と患者さんの病状などに合わせて塩分量や食材などを使い分けた「特食」があって、全部一括で作れるわけではないのです。
時間と戦い、厳しいベテラン先輩軍団と戦い、そして食材と戦う“給食のおばさん”は、それでも「美味しいね」という笑顔のひとことのために涙を拭いて、今日も調理場に立つのです。
そんな彼女たちの姿に涙するのなら、今晩の食事は、「塩分控えめな病院食」がちょうどいいと思いませんか?