今年で生誕50周年!大人気絵本シリーズ『ぐりとぐら』の知られざる秘密

文芸・カルチャー

更新日:2017/11/23

 幼い頃、一度は読んだことがある絵本と言えば『ぐりとぐら』を思い出す人も多いのではないでしょうか。小さなノネズミの双子の兄弟が活躍するこの絵本は、なんと今年で誕生50周年を迎えます。その歴史を『ぼくらのなまえはぐりとぐら―絵本「ぐりとぐら」のすべて。』(福音館書店)などからひもといていきましょう。

 作者の中川李枝子さんと絵を描いた山脇百合子さんは姉妹。1963年に、雑誌『母の友』(福音館書店)に掲載されたのが始まりです。その時のタイトルは『たまご』。保育士をしていた中川さんは、子どもたちが『ちびくろサンボ』の物語に夢中だったことから、ちびくろサンボのホットケーキの向こうを張って、もっと上等で美味しそうなものを、と考えたのが『ぐりとぐら』に登場するカステラだったのです。ホットケーキよりもふんだんに卵を使うカステラを作るために、大きな卵が登場します。その大きな卵を際立たせるために、主人公は小さなノネズミになったのだそう。また、双子という設定は、中川さんが子どものときから、双子に憧れていたから。「同じ年齢の兄弟がいたら、常に対等だから、どんなにいいだろうかと、ちっちゃいときから思っていたんです」と語っています。確かに、子どもの頃、双子への憧れってありましたよね。

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 当時、まだ大学生だった妹の山脇百合子さんは、中川さんの『いやいやえん』で初めて挿絵を担当。『ぐりとぐら』を描く時には、ノネズミを描いたことがなくて困って、国立科学博物館の今泉吉典先生の研究室を訪ねました。ねずみの標本を見せてもらい、その中のオレンジ色の小さなねずみがモデルになったそうです。

 この『ぐりとぐら』という名前ですが、由来はフランスの絵本。『プッフ・エ・ノワロ』という絵本の中に「ぐりっぐるぐら、ぐりっぐるぐら」という歌のフレーズが出てきます。中川さんがこのフレーズを読むと、保育園の子どもたちも一緒になって「ぐりっぐるぐら、ぐりっぐるぐら」と言ったことから、『ぐりとぐら』という名前が生まれました。

 ところで、ぐりとぐらは、どちらが「ぐり」でどちらが「ぐら」かわかりますか? 2人(2匹?)は、いつも青と赤のつなぎと帽子を身につけていますが、青いほうがぐりで赤いほうがぐらです。実はつなぎ以外にも、『ぐりとぐらのおきゃくさま』では、雪の日に青と赤のマントと毛糸の帽子を、『ぐりとぐらのかいすいよく』ではしましまの水着を身につけるなど、ファッションも季節によって変わるんです。

 そんなぐりとぐらの愉快な世界を、お出かけ先にも手軽に持って行けるセット『ぐりとぐらといっしょにおでかけ絵本』(福音館書店)が、50周年を記念して発売されています。1から10までの数え歌になっている『ぐりとぐらの1・2・3』や「あ」から「ん」までのひらがなで始まる言葉が順番に出てくる『ぐりとぐらのあいうえお』、『ぐりとぐらのしりとりうた』、『ぐりとぐらのおまじない』といった、言葉で遊べる4冊。それに加えて、同じく中川さんと山脇さんによる『なぞなぞえほん』3冊と、本が収まるサイズの小さなトートバッグ付き。ソフトカバーで軽くて持ち歩きやすく、また、言葉遊びやなぞなぞは、物語と違って、パッと開いて読みたいページだけ読んでも楽しめるのが、外出にはぴったり。

 現在発売されている7冊の物語と合わせて楽しめば、ぐりとぐらの世界がもっと広がること間違いなしです!

文=相馬由子