ほんとにほんとにライオンなのか? 気弱すぎるライオンがかわいい!

マンガ

公開日:2013/11/10

 ライオンといえば、百獣の王。立派なタテガミに凛々しい姿。獲物を噛む力は400kgを超えるし、その貫禄たるや、まさに王の名にふさわしいものがある。しかし、10月30日に発売されたマンガ『ほんとにほんとにほんとにほんとにライオン田』(石神しし/小学館)には、ライオンなのに草食系で小心者。生まれも育ちも足立区の団地で、口癖は「すみません」というおよそライオンらしからぬサラリーマンのライオン田優が登場するのだ。彼は、ほんとにほんとにほんとにほんとにライオンなのだろうか?

 まず、とにかく気が弱くて配属先の女性イレブン編集部に行っても「忙しそうで声がかけられない……!!!」とついたての裏で縮こまる優。本来なら、ヘリコプターの音にも匹敵する115デシベルもの大きな声を出せるのに、勇気を出して発した声は木の葉のふれあう音と同じぐらいの20デシベル。案の定社員には気づいてもらえず、挙げ句の果てには着ぐるみやコート掛けに間違われる始末。自己紹介のときに編集長から「ジャングルの掟を教えてやれ」と言われると「えっと……元々ジャングルにアフリカライオンはいなくて…」と説明をはじめ「……ごめんなさい…っ! ライオンのくせにジャングルのこと語れなくて……!!」と申し訳なさそうに泣きながらぺこぺこ頭を下げるのだ。ライオンのこんな姿を見てしまったら、もう“百獣の王”とは言えなくなりそう。

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 また、気弱なだけでなくかなりの気遣い屋でもある優。個別包装じゃないから配りづらいということに気づかず、お土産に芋けんぴを買ってきてしまったときには、わざわざ配るときのシミュレーションをする。そのうえ、他のスタッフがバターサンドのお土産を配っていて「オレだめなんだよ、乳製品アレルギーで。」と断られているのを見ると「ダメだ……!! その場合を忘れてた……」。もらった人が捨てるに捨てられず「負担をおかけしてしまう……!!!」と焦り、「行程の中に、“「芋けんぴは食べられますか」ってたずねる”を加えないと」とそれもメモするのだ。さらに、お土産を渡すときはみやげ話ができなければならない…といろいろ考えた結果、結局おみやげを配れずに自宅に持ち帰って自分で食べてしまう。これほどまでに気遣いする彼が、無事に生き抜いてこれたことにもビックリだ。

 ライオンのイメージとはかなり違う優だが、ライオンらしい部分も少なからず残っている。「仕事中、口さみしくて…」とかつお節を口に含んでいるのだが、編集長に叱られるとそれをバリバリ噛み砕く。かつお節は世界一硬い食べ物としてギネスにも登録されているのだが、それを難なく噛み砕く力は、さすがライオンといったところだろう。そして、先輩に叱られるとダンボールでバリバリ爪を研ぐし、頭の上からタテガミを触ろうとしてきた相手には反射的に威嚇。でも、こぼしたお酒をペロペロ舐め取ったり、弟たちにイタズラされてタテガミについた魚の骨を取るため、毛繕いの要領でゴシゴシこする姿や暑い日に日陰を選んで歩いたりするところなんかは、大型の猫にしか見えないかも。

 ただ、やはりライオンにもいろんなライオンがいる。なかには、彼みたいに気弱で優しいライオンがいてもいいのかも。いずれにせよ、みなさんも読み終わったあとにはあの有名なCMの歌詞と同じように、「かわいくってどうしよう」となることだけは間違いない。

文=小里樹