部活で家族をやるってどういうこと!? またまた“意味のわからない部活”ラノベが登場!

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更新日:2013/12/4

  奉仕部、隣人部、GJ部、帰宅しない部、極東魔術昼寝結社の夏……。ラノベにもさまざまな謎の部活がたくさん登場してきたが、ついに真打ち候補が登場した。なんと部活で「家族」をやってしまうというのだ。

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 「家族をやる」ってどういうこと?と疑問だらけだが、そんな“家庭化部”が登場するのは、10月25日に発売された『ゴスロリ・ファーザー カノジョは家族を募集する↓』(子安 秀明:著、しゅがすく:イラスト/集英社)。父と母、祖父と祖母、兄に姉に弟と妹もいて、おまけに犬と猫も飼っているという高校2年生の黒田藤は、家族のすべての役割をマスターしている“家族の達人”として、家庭化部に無理やり入部させられてしまう。「みんなで家庭をつくっちゃおう! 家族になっちゃおう!」とうたう家庭化部にはどんな家族がいて、どんな活動をしているのだろうか?

 まずすごいのが、部室となる「昭和の空気をかもし出している2階建ての家」が学校の敷地内に建てられているのだ。そして、居間には障子に畳の床、丸いちゃぶ台、ブラウン管のテレビが。しかも、その家に入るときには「ただいま」と言わされるし、それぞれの部屋も着替えも勝手に用意されている。放課後になると、家庭化部員である“家族”たちがここに集まり、一緒にお風呂に入ったり、食事をしたりして、本当の“家”のようにくつろいで過ごすのだ。

 そんな家庭化部の創部者で、自らを「とーさん」と名乗っているのが、黒いゴスロリドレスにツインテールの小学生女子みたいな見た目をした赤間乙子・高校1年生。初対面の藤やほかの部員たちを見つけては、何の説明もなしに「行くぞ」と手を引いて部室に連れ帰る。それだけでなく、「おまえの父親だ!」などと言って説教を始めたりもするのだ。だけど、彼女が父親を名乗るようになったのには、自分も含め、家族に憧れを持つ人たちの夢を叶えるためだった。

 そして、お姉ちゃんだと言って現れるのが、乙子と同じ高校1年生で大富豪の令嬢である黄島依於里。学年で1、2を争う美少女とも言われる彼女には常に護衛が付き従っており、下手に近づくと消されるという噂がたつほど。でも、彼女は甘やかされることはできても、誰かを甘やかすことができないことに悩んでいた。そんな彼女が、この部活の中でだけは「これから、わたしのことは“お姉ちゃん”と呼んでくださいね」と言って手を広げてきたり、座布団の代わりに自分の膝の上を「肉布団」と言って差し出してくるのだ。

 また、藤を「お兄ちゃん」と呼ぶ生徒会長の桃園深貴は、短めの髪に長身で引き締まった見た目の眼鏡女子。強さと賢さを兼ね備えたような彼女はみんなから頼りにされており、親衛隊まで作られている。でも、彼女の大変さをわかってあげられる人はあまりいない。だからこそ、彼女は家庭化部で甘えられる妹になるのだ。部室では、普段頼りになるはずの先輩が藤に対して「お兄ちゃんなら、妹のことをかわいがるべきだ!」と泣きながら主張してくる。

 そのうえ、日本人形のように整った顔立ちをしているが、普段は黄島のボディーガードをしながら同級生として学校にも通っている青山静馬まで母親として入部してしまう。彼は偉い人たちをたくさん護ってきた家庭で育ち、実際ボディーガードにふさわしいだけの能力を兼ね備えているのだが、黄島のボディーガードを始めてすぐ、自分が「暴力や争いごとが大嫌い」ということに気づいてしまったのだ。そこで、同じ“護る”でも暴力で周りを排除するのではなく、すべてを包み込んで護る母親になる。

 一見、不可思議な関係に見える彼らだが、それぞれ叶えられない願いをこの家庭化部で実現させているのだ。みなさんの中にも、「甘やかしてくれるお兄ちゃんが欲しかった」とか「かわいい妹が欲しかった」と思ったことがある人はたくさんいるはず。そんな願いを叶えることができる“家庭化部”が広まれば、もしかしたらどの家庭も円満になれるかもしれない。

文=小里樹