本当に成長し続けなければいけないの? シスターが教える、“あきらめ”を受け入れる生き方

暮らし

更新日:2013/11/13

 仕事では成長し続けることを求められ、プライベートでは通り一遍の幸せを手に入れることを求められ……。でも、これって本当に幸せなことなの? 幸せを追い求める日々が逆に自分を追いつめて、何をしても楽しめない。不安に駆られて、いてもたってもいられない……。そう実感している人も少なくないはず。

 一方で、つらい毎日を幸せな日々に変えていく名人がいる。スタンフォード大学で教べんをとったこともあり、世界各国から講演のオファーが絶えないという聖心会のシスター・鈴木秀子さんだ。彼女がつづった『あなたは、あなたのままでいてください。』(アスコム)には、1日1日を幸せに、満ち足りた気持ちで過ごすための31の思考法が紹介されている。

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 本書の中で繰り返し語られるのが、“聖なるあきらめ”という考え方。単なる“あきらめ”とは違い、“自分の身の丈を知る”ということを指すという。一例として、鈴木さんは物理学者・寺田寅彦が残した「どうでもええ」という有名なフレーズを挙げる。

 「これは決して投げやりな言葉ではありません。どうあってもいい。こうあってもいいという意味の言葉です。与えられた現状を受け入れることこそ、問題解決につながるのです」と鈴木さん。長年子どもの不登校と暴力に悩み、“聖なるあきらめ”を実践した母親は、本書の中でこう話している。

「私は今まで息子に“みなと同じように学校に行かなきゃだめ、働かなければだめ”と言い聞かせてきました。しかし、学校に行かなくても、健康でいてくれるなら、それだけでよいではないか。そう思うようになってから、うまくいくようになりました。今では“どうでもええ”という言葉に心から共感することができます」

 この話には、息子が鈴木さんのもとを訪れたときの後日談もある。偶然でも奇跡でもなく、母親が肩の力を抜いた結果、プラスの影響が息子にも伝わっていたことを教えてくれるエピソードだ。

 ほかにも、

「人は誰しも、生まれてくる前に自分で“人生設計”を立てているそうです。“○歳の時の不幸をバネに奮起して、○歳の時の不幸でさらに心を磨き、○歳で人生を卒業していこう”という青写真を、生まれる前にもっているのです」

「リスが冬眠に備えて木の実を巣に蓄えるように、人も心の中に“思い出すだけで和むこと”を豊かに蓄える。そして、それをいつでも思い出せる訓練をすることは、幸せになるもっとも簡単な方法の一つです」

 など、つらく、厳しく、思い通りにいかない日々も軽やかに暮らしていくための実例やアイデアが盛りだくさん。読後には、心をワシワシ洗われたかのようなサッパリ感と、明日が待ち遠しいような充実感が残る。心の澱をためない秘訣を本書で学んでみては。

文=矢口あやは