コミュ障の人にこそオススメ! 「リーガルハイ」に学ぶ会話術

人間関係

公開日:2013/11/15

 昨年放送されたパート1が評判を呼び、現在パート2を放送している堺雅人主演のドラマ『リーガルハイ』。13日に放送された第6話の平均視聴率が17.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)をマークし、快進撃を続けている。個性的なキャラクターやハイテンションの応酬が続く法廷シーン、豪華なゲスト陣など、視聴者が夢中になる要因は多いが、その中でも“計算し尽くして考えられたセリフ”はこの作品の最大の魅力。

 物語の主人公は、偏屈で毒舌、裁判で勝つためには手段を選ばないという剛腕ぶりで反感を買いやすい弁護士・古美門(堺)と、彼に「朝ドラのヒロイン」と揶揄されるほど“クソ真面目”で友だちすらいない黛(新垣結衣)という人付き合いがおおよそ上手とは言えない2人。だが、互いに憎まれ口をたたき合いながらも自分の意志を伝え、コミュニケーションをとっている姿は、人間関係に悩む視聴者にも参考になる。今回は、『リーガルハイ』パート1をまとめた『an・an PLUS×リーガルハイ 伝え上手になる話し方』(マガジンハウス)から、“自分の意見を相手に伝える会話術”のポイントをひも解いてみよう。

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 まずは、正義と自分を信じる黛と現実主義者の古美門が、離婚調停を引き受けることになった際の会話。

黛 「私と一緒にやって下さい。せめて、憎しみ合うことなく円満にお別れできるようにして差し上げたいんです」
古美門 「相変わらずの朝ドラ全開だな。離婚紛争は汚物だと言ったはずだ、円満な別れなどない。常に泥沼になる」
黛 「一度は愛し合ったお二人です、分かり合えるはずです!」
古美門 「限界知らずの馬鹿だな」

 これは物語のベースとなる、互いの価値観をぶつけ合うシーン。実社会で、同僚相手にここまで言い合っていいものかと疑問に思うが、心理学者の伊東明さんによると「表面的な会話より、自己開示をし合うほうが、コミュニケーションは深まります」とのこと。だたし注意したいのは、「自己開示を浅い領域から始めること」。やはり、いきなり相手の信条や生き方に意見するのは控えた方がよさそうだ。

 また、黛が引き受けた仕事を古美門が嫌がり、脱走を図ろうとするシーンでの会話は意表を突く。

黛 「投げ出さないでください」
古美門 「そもそも私はこの仕事を引き受けてはいない。いとこは君に依頼し、君が引きうけた。君の案件だ」
黛 「手伝うつもりで来て下さったんでしょう?」
古美門 「違う、君が負けようが知ったことではない」
黛 「そうだ、温泉入りませんか?」
古美門 「温泉?」

 会話の流れを無視して、突然温泉に誘うという突飛な行動。これはヘッジングというテクニックで、「突然、論点を変えられた相手は肩すかしをくらい、それ以上反論できない」という効果があるそう。折り合いがつかず、会話が煮詰まったときに実践してみると、思わぬ解決法が生まれるかも。

 パート1の最終話では、古美門は自分のもとから独立した黛を裁判で対決することになり、勝訴する。黛が打ちひしがれているところに放った、古美門のセリフは……。

「旅人のコートを脱がせたくらいで、勝てると思うな、太陽をやるなら、灼熱地獄でパンツ一枚剥ぎとれ。それくらいでなければ、理想で現実を変えることなどできやしない。もっともっと強く、賢くなれ、朝ドラ」

 一見すると強い言葉で相手を責めているように感じるが、古美門なりのエールが含まれている。いつも嫌味で毒舌な古美門が言うことで、いい人に見えるという意外性が生まれる。そのコントラストこそが、相手の心を掴むのに役に立つという。「逆に、普段やさしい人が厳しいことを言うのも、人を動かす効果があります。緩急つけることで、人間関係に奥行きが増す」のだとか。

 このように、2人の丁々発止のやりとりには、実はマネできるような会話術が見え隠れする。『リーガルハイ』のストーリーはさることながら、セリフに注目すると、一層このドラマの魅力が増すかも!