「“楯”になりたい」 右傾化する女子たちのホンネ

政治

2013/11/27

 自分に国を慕う気持ちがないかというとそうではない。なのに「愛国」という言葉を耳にすると、どこか不穏な印象を受けてしまう。なぜだろう。

 新刊『女子と愛国』(佐波優子/祥伝社)は、靖国参拝や予備自衛官補志願、デモ行進など、愛国活動に勤しむ“右傾化”する女性たちを取材したルポタージュだ。右傾化とは、政治上の思想信条が右翼的な方に傾くことを指す。そこに登場するのは、学生やOL、主婦といったいわゆる“普通の女子”たち。彼女たちはネットで愛国的な発言をし、デモや集会に参加する。これまでの愛国活動といえば、日の丸を掲げ、軍歌を流しながら戦闘服姿で街宣車を運転する体格のよい男性という印象が強かった。それが近年、活動はリアルからネットへ、街宣車からデモへと移りつつあり、中でも女性の増加は著しい。戦争を知らない10代から30代の女性たちが声を上げはじめたきっかけは一体なんだったのか。

 「他国を攻める“矛”ではなく日本を護る“楯”になりたい」と本書の中で戦後問題ジャーナリストの佐波優子氏はその真意を綴っている。家族や恋人など身近な大切な人を守りたい。自分たちを守るために戦死した兵士を弔いたい。そういった「楯」の思いから活動を始める女性は多い。反面、どんな活動にも過激派と穏健派が存在するように、「殺せ」「排除」などと書いたプラカードを持って行進する人々の姿は、どう見ても「矛」のように思える。その現象を彼女はどう捉えているのだろう。佐波氏本人に直接聞いてみた。

 「国を思う気持ちはさまざまなので、いろいろな表現方法が出てくるのかと思っています。うっぷん晴らしなどで激しい言葉を吐いているのではなく、その人なりの危機感や現状を変えたい気持ちがあってのことなのかな、という印象を受けました」

 右傾化する女性たちの中には、「男性の草食化」などと取りざたされる現代において、亡くなった兵士たちの影に“強い男性像”への憧れを抱いている人もいるのではないか。そう問うと「憧れとはまた違う気持ちでは」と佐波氏は説明する。

 「実際に遺骨収集の現場などで、元兵士の男性によく当時の話をお聞きします。ほとんどが実際の戦場での話ですが、私自身が感じた思いは、実際の兵士像は“強さ”というよりも“優しさ”を強く感じました」と佐波氏。 「もちろん、肉体的な強靭さがなければ戦場では適応できませんから、体力や腕力はあったかもしれません。しかし心の根底に流れていたものは、家族を守りたいという大きな優しさだったのではないかと思っています」

 戦争は誰だって参加したくない。死ぬこともあるし、手足を失うこともある。それでも当時の男性は戦争に行って戦わなければならなかった。誰もが行きたくないと思う戦争に出向き、亡くなったからこそ、せめて何か自分自身にできることはないかと思い、現代の女性たちは愛国活動をしているのではないかと分析する。

 「具体的には、兵士が祀られている神社にお参りしたり、自分が事実と違うと思える戦争に対する歴史観が流布しているのなら、それを糺すような活動です。家にいて今まで通りの生活ができたらどんなにいいかと思いながら兵士たちは戦場で亡くなっていきました。日本人だけではなく、どの国の兵士もそうだと思います」

 本来の愛国の意義は、自分が生まれ育った場所を好きだと思うことや、家族や先祖を慕い大切にし、それを子孫に受け継ぐこと。佐波氏は、女性特有の“感情移入”について、次のように述べている。

 「今回、本に書ききれなかった人たちも含めて、インタビューをした女性は“子供が産まれたから、急に子供の将来を考えたら活動をしたいと思った”など、結婚や出産を機に活動される人も多くいらっしゃいました。それも家族への感情移入なのかもしれません」

 佐波氏自身もそんなひとり。ロシアの冷たい泥の中で一人ポツンと埋まっている兵士の遺骨を泥水の中から掬い上げたとき、「一柱でも多くの方のご遺体を日本にお連れしたい」という猛烈な感情がわいてきたのだそう。

 「どんな活動にも共通することかもしれませんが、誰かのために何かのために、自分で動きたいという感情に基づいて、人は活動をするのかなと思います」

文=山葵夕子