「エア書法」で汚文字返上!? 劇的にうまい美文字に見せるコツとは?

生活

公開日:2013/11/29

なにげなく入ったコンビニで、領収書をもらおうと、宛名の見本をささっと書いた。するとレジの人(外国の方ではない)から「あのう、なんて読むのでしょうか…」と遠慮がちに質問されて、ガクゼン。急いでいたのでなぐり書きしてしまったのだが、さすがにショック。人が読めない汚文字=大人失格! 的な気分になった瞬間だった。

 おりしも、もうすぐ12月。年賀状準備のシーズンの到来である。

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この季節は、手書き文字に自信のある方以外は、PC中心の日常生活で忘れていた、自分の「汚文字」と直面せざるを得ない時期ともいえるだろう。宛名は印刷、裏面は絵柄を刷るのだがやはり、ひとこと、一筆必要になる。思いきって、書く。しかし1年前と同様、やっぱり汚文字…。

そんな悩める人々のため、TVでもすっかりおなじみ、美人書道家の中塚翠涛(すいとう)先生の『美文字のすすめ』(中塚翠涛/幻冬舎)が発売された。こちらは、昨年出版された同書の文庫バージョン。文庫化にあたり、要望が多かった「練習ページ」が新たに付け加えられたとのこと。

 では、さっそく「美文字」を書くコツを学んでいこう。

●美文字にはお手本がない?

 意気込んでページをめくると、まずこの章に少々めんくらう。翠涛先生いわく「丸文字だけどほんわかした字、線がピシッとしていて几帳面に感じる字など、私たちが“いいな”と感じる字には、お手本があるともないともいえます」とのこと。うーん、それでも先生のような美しい文字が書きたいのです。しかし、はやる気持ちの前に、文字に対する気持ちから入るべし、とのことなのだろう。

・メールではなく、たまには手書きで伝えてみる
・自分の分身を生み出す気持ちで文字を綴る
・相手を想う気持ちを、文字に込めて発信する

 これらをふまえて「美文字レッスン練習帳」の記入例「今夜はちょっと帰りが遅くなります。冷蔵庫に~」を、先生の美文字を横に、気持ちを込めて、書いてみた。なるほど、申し訳ない気持ちがあふれた、殊勝な文字に見えるかもしれない。

●劇的にうまく書ける美文字のコツ

「美文字」とは、自分らしさを大切にしながら、相手に想いを伝える文字。そこには読み手への配慮が必要不可欠。読みやすいよう、線や形、バランスを意識してしたためるのは、マナーである。そして文字を構成する線と点、バランス、余白、筆圧などをほんの少し変えるだけでも、文字は劇的に変化するのだという。果たしてそんな「美文字」は、いかにすれば書けるのだろう。8つのコツが紹介されている中から、いくつかピックアップしてみた。

・筆記具をチェンジしてみる(文字の印象は色や濃淡、筆圧で変わる。ボールペンから、万年筆に変えるなど)
・一画一画を意識する(丁寧に書き始め、書き終わりもしっかり止める)
・余白を意識する(文字の、左右の中心より右半分を大きめに書くと、文字のバランスがよく見える)
・一発逆転ワザ、最後の一画に気を配る(最後の一画を丁寧に止めたり、払うだけで、グッと好印象な文字に)

 これらの諸注意をふまえて「美文字レッスン練習帳」で、自分の字を自己分析するお題にトライする。字には今の自分や想い、願望が映し出されるので、客観的に分析しようというのがここでの狙い。

 記入例「今後ともよろしくお願いいたします」を書いたあと、自分の字を客観的に分析して、文字からイメージされる人物像、それに対する実際の自分の性格、そこから今後どのような印象の字を書きたいか、自分に問うワークを行った。「なるほど、まじめそうな字だけど、止めるとこをぴょんとハネたりして、勢いあまった印象もある。確かに、近いことが自分自身にもいえそうだ。それでは、今後は年相応の落ち着きある美文字を目指そう」。ふむふむ。これで何かが変わってくることを期待して次の章へ!

●書く人も読む人も、あたたかな気持ちになる文字を目指す

 その後も、先生のエッセイ→「練習帳」にトライする要領で、好きな言葉を書いたり、感謝の言葉「ありがとう」を、まずは、伝えたい相手の顔を思い浮かべながら心の中で唱え、次に実際に書いてみて、最後に読み返すワーク(ちなみに、いちばんうまく書けた)などを行って、最終章。

 ここでは、書いた人も読んだ人も、じわ~っとあたたかな気持ちにしてくれる文字を目指す。最後にきて、いきなりハードルが高くなった。しかし先生はそんな文字に近づくため、先生の生徒さんが実行して効果があった「エア書法」をあげている。書く前にイメージしてから手を動かすというもので、「空書」といって、実際に書の世界で用いられている手法だという。スポーツにおけるイメトレに近い雰囲気か。この行程があるかないかで、文字に大きな差が出るという、そのステップは以下のとおり。

・どんな雰囲気の字を書きたいか、想像する(文字の形、大きさや文字同士の距離など、理想をイメージ)
・筆をもった気分で、空を切りながら理想のイメージをなぞってから、実際に書く

 さっそくトライしたが、残念ながらこのワークはうまくできなかった。まず「きれいな理想の字」が思い描けず、いつもの字をエアで書いて紙に落としたところで、想像以上の美文字にはならなかった。おそらく、上級者編なのだろう。まさに美文字は一朝一夕にしてならず。美しい理想の文字のイメージをもつためにも、前の章に戻って「劇的にうまく書ける美文字のコツ」を地道に体得するほか、なさそうだ。年末の年賀状本番まで、せっせと練習を積まなければ、という結論に至った。

 文字は、その人自身を表す分身。日ごろから文字のバランスを意識して書く、読む相手を想い、自分なりに精いっぱいの気持ちを込めて書くという積み重ねで、自分らしい美文字が実現するようになるのだろう。汚文字を返上したい方は、まずはこの本で、美文字に近づくエッセンスを知ることから、始めてみよう。

文=タニハタマユミ