「結婚10年で念願の出産! でも離婚…」 “産後クライシス”が起こる理由とその予防法

社会

公開日:2013/12/4

 ベビーカー問題や待機児童問題など、子育て中の女性を悩ます問題が山積し、「子育てしにくい国」とも言われる日本。そんな状況で、新たな問題が注目されていることをご存じだろうか? それは「産後クライシス」。これは出産後に夫婦仲が急速に冷え込む現象を指す。

 2012年9月にNHKの朝の情報番組「あさイチ」で特集され、出産間もない女性からの共感の声のみならず、出産から何十年もたっているのに、いまだに当時の夫の言動が許せないという声も大きく、産後クライシスが女性の心に大きな傷跡を残す深刻な状況が明らかになった。

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 では実際に産後クライシスとはどういったものなのか。「あさイチ」で特集を担当した、NHK記者・内田明香氏とディレクターの坪井健人氏の『産後クライシス』(ポプラ社)を参考に、この問題を考えてみたい。

 そもそも、なぜ産後クライシスが起こるのか。それは男女によって、出産後の変化に差があるからだという。女性は産後、授乳や夜泣きといった「身体的危機」、育児への不安や世間からのプレッシャーに気を病む「精神的危機」、社会からの孤立や仕事への復帰に焦る「社会的危機」と大きな変化が一気に押し寄せる。しかし、男性は妻が出産しても変わらず会社へ行き、むろん体の変化もなく、なんなら妻にかまってもらえない分、趣味に没頭したり、遅くまで飲んでほろ酔いで帰ってきたり。妻の危機に気付かず、家事・育児への参加意識も希薄で、働いて給料を得ることだけを家族への愛情表現だと思っている夫に、妻の心は離れていくだけなのだ。

 実際に、結婚10年目で子どもを授かり、妊娠中は健診に付き添うなど献身的だった夫に、産後の辛い時期に「今日は早く帰ってきて」とすがるようにお願いしたら、「そんなことできるわけないだろ。わかってるだろう」と突き離され、愛情や家族の在り方に疑問を持って離婚に至ったという夫婦も。ここでも危機感の認識の差が夫婦を引き裂いていることがわかるだろう。

 では、産後クライシスを回避するにはどうすればいいのか。

 妻側の回避法は、どれだけ辛い状況かを言葉して小まめに伝え、夫の家事・育児に最初から完璧を求めないことが大切だという。またどうしても伝わらない場合は、「プチ家出」という手段も。実際に夫と子どもを2人きりにする状況を作り、育児を軽視しがちな夫に苦労を体験してもらうことで、子育ての苦労を共有できるようになるという。

 一方、夫側の回避法は「手伝おうか?」を禁句にすること。子育ては妻側だけの問題でなく、夫婦の共同作業。にもかかわらず、当事者意識が欠けていると思われやすいワードはNG。「○○やっておくね」という主体性のある言葉だと、妻は安心して物事を託すことができるそう。

 また、妻の負担を減らすために、「お掃除ロボット、食洗機、全自動洗濯乾燥機」の“新三種の神器”の購入や、妻の実家に同居・近居という選択も視野に入れることも効果的。妻の負担を軽減することが、最大の回避術になるようだ。

 核家族化が進み、夫婦2人だけで子育てすることが多い現代の子育て世代。介入してくれる人がいないだけに、産後クライシスが悪化すると、離婚という選択肢も見えてくる。互いが同じぐらいの当事者意識を持つことが必要なだけに、子育て中の男性はもちろん、いずれ子どもがほしいと思っている男性も「産後クライシス」の深刻さを知っておいた方がよさそうだ。